冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~

青篝

企画を聞いた俺は

始終賑やかな五人での食事を終えると、
リビングの雰囲気は落ち着いた。
そんな雰囲気とは反対に、
昴はキッチンで食器を洗いながら、
また愚痴を吐いていた。

「野郎共が…少しくらい手伝いやがれ…」

誰にも届かぬ独り言を
ブツブツと繰り返し、
やっと昴は食器を洗い終えた。
そんな昴の苦労も知らず、
それぞれが勝手にしていた。

「やっぱ昴の飯は最高だな。
次もよろしく頼むぜ」

「お前に次はねぇ」

リビングの床に寝転び、
顔とグーサインだけを向ける南関を、
昴は容赦なく切り捨てる。
だが、南関とは変わって、
西難は寝不足なのか、
座ったままうたた寝をしていた。
そして、ぐぬぬと唸る南関を尻目に、
やや緊張気味の東真は昴に話し掛けた。

「あのー昴さん。
そろそろあの話をしたいんですけど…」

あの話、と聞いて昴は思い出す。
そういえば今日東真が
昴の家に来たのは、
その話をする為だったなと。

「そうだな。俺はまだ具体的な事を
何も聞いてないからな。
いや、聞いてはいるはずだが
俺が覚えてないだけか。
…という訳で、二人共、帰れ」

二人、というのは
言うまでもなく南関と西難のことだ。
葉月はというと、朝が早かったからと
ご飯を食べ終えるなり
ソファで昼寝をしている。
その葉月に可愛いピンク色の
水玉タオルケットを掛けたのは、
他の誰でもない昴である。
ただでさえ可愛い葉月に、
可愛い水玉のタオルケット。
更に寝言のように口を
グニュグニュさせている。
…本当に可愛い以外見つからない。

「いえ、一応愛花さんと和斗さんにも
聞いて頂きたいんです」

こいついつの間に二人を
下の名前で呼ぶようになったんだ?
と悔し気に思う昴。
東真のその言葉を聞いた瞬間、
南関は勝ち誇ったような笑顔を
鬱陶しいほど昴に向けた。
東真が聞いてほしいと言うなら、
無理に追い返す事ができないからだ。

「ちっ、分かったよ。
でも西難は今話しても
聞いちゃいねぇだろうから、
南関、お前が後で聞かせてやれ」

南関の満面の笑顔が、
昴の反撃によって、
面倒臭ぇーという顔に変わった。
その後、東真が語った
四人での企画の全容は、
とても単純で分かりやすかった。

「じゃあ、簡単にお話ししますね。
…コホン、今回の企画は、
昴さんに作詞、和斗さんに作曲、
愛花さんに背景及びサムネイルの絵、
そして私がその曲を歌う…以上です」

動画の編集も和斗さんに
お願いすることになってますので。
と、最後にそれだけ付け加えてから、
東真は昴と南関を交互に見た。
何かご不満はありますかと、
言わんとするような目で。
しかし二人は東真が話をする前から、
そんなことだろうと予想していた。
なので特に不満などは無い。
二人は東真の話に同意し、
早速明日から曲を創ることにした。
そして丁度三人でどんな曲にするか
話し合っていた時、
西難が目を覚ましたので
南関が東真から聞いた話をすると、
久しぶりにやる気出る~、とか
言って上機嫌になっていた。
東真も話が前向きに進んで
満足しているようだし、
南関も既にスマホで作業を始めている。
だが昴だけは若干不機嫌だった。

「俺はいつになったら小説が書けるんだ…」

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