冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~

青篝

勘づいた俺は

「春爛漫の季節を迎え、
今年もこうして入学式を
挙行できますことは、
新入生の───」

四月八日、ここ峰城中学校で
入学式が行われた。
校長先生の有難い話の後、
生徒会長の挨拶と
新入生代表の言葉を
ウトウトしながら聞く。
春の陽射しが降り注ぎ、
とても暖かいので
誰でも寝てしまいそうだ。

「あと一年後には、
僕らは卒業かぁー」

なんとか寝ずに
入学式を乗り越え、
となりで朱空がしみじみと呟く。
まだ先の話なのに
今からそんな話をするなと
昴は思ったが、今はスルーした。

「まぁ、あと一年あるんだし、
中学生のうちに
中学生を存分に謳歌おうかしようぜ」

昴と朱空は今年は
別々のクラスとなった。
昴が一組、朱空が三組である。
ちなみにここ峰城中学では、
入学式の次の日に
始業式が行われる。
といっても、入学式には
在校生も出席するので
気分的にはもう学校は始まっている。

「そうだね。先の話なんて
しない方がいいよね。
じゃあ昴、また後で」

お前は人の心が読めるのか?
と聞く間もなく、
朱空は自分のクラスに戻って行った。
そんな朱空を見送り、
昴も自分のクラスに戻った。

そして、その日の放課後。
授業は明後日からということで
昼前に学校は終わった。
昴は校門の外で
朱空を待っていた。

遅いな…
帰りのHRホームルームが長引いているのか?
自慢ではないが、
俺と朱空にはお互い以外の
友達は西難と南関位しかいない。
が、もしかすると新しい友達が
クラスに出来たのかもしれない。
それならいいのだが、
連絡の一つくらい
寄越してもいいと思うのだが。

昴が朱空を待ち初めてから
約20分、周囲の生徒も
ほとんどいなくなった頃、
朱空が小走りにこちらに来た。
その光景は昴に、
初めて朱空と語り合った日を
鮮明に彷彿させた。

「ごめんっ昴。
クラスの人と話しててさっ。
待たせちゃったよね?」

申し訳なさそうに
とはいかないものの、
謝罪はされたので
昴は無下にはしなかった。

「そんなことはない。
待ったのはほんの五分程度だ。
俺もクラスの連中と
話をしていてな」

そっかー、良かったと
胸を撫で下ろしている朱空。
昴の嘘など微塵も
気づいていないようだ。
しかし、人間観察歴イコール年齢の
昴は見逃さなかった。
朱空の目元の僅かな腫れ、
制服の袖の濡れた痕跡。
何かあったなと昴は勘づき、
その後の会話で朱空にそれとなく
探りをいれてみたが、
朱空は口を滑らせなかった。



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あとがき


どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。



勘のいい方はもう察しが
ついているかもしれませんが、
この後、山です。。。




それでは、アディオス!

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