頼られた俺は

学校からの帰りに
途中でスーパーに寄り、
夕食の買い物をする。
我が家の食卓は
俺が受け持っており、
そのため、お金のやり繰りは
俺が管理している。

｢今日は豚肉が安いな｣

肉コーナーで
豚肉のバラ売りが
安くなっていたので、
今日は豚肉を使った
料理にするかと
俺は豚肉を手に取る。

｢あっ！昴じゃん！｣

お店の中でも構わずに
大きな声を弾ませて
俺の名を呼んだのは、
俺のよく知った顔だった。

｢買い物？｣

そう言って傍に来て
笑顔を見せたのは西難せいなん愛花あいか。
こいつと付き合いを
持つようになって
かれこれ2年になるか。
っていうか、
よく俺に気づいたな。
少なくとも30㍍は
離れていたはずなのに。

｢ああ、今日の晩飯をな｣

俺は買い物カゴと
豚肉を少し掲げて見せる。
西難は見た目から
物凄く特徴的で、
遠くからでも彼女か
どうか分かってしまう程だ。

｢そっか、昴んとこは
片親だもんね｣

髪の毛先のみ緑色で
その他の全体は黄色。
右側のサイドテールの
お下げを顎辺りまで
伸ばしており、
歩く度に揺れている。
髪色はカラフルだが、
顔自体の化粧っ気はなく、
天然の可愛さが
そこにあった。
服装も学校の制服ではなく、
私服を着ていて、
今日は黄緑色を基とした
女の子らしいデザインの
Tシャツに、丈の短い
真っ白なスカート。
しっかりと自分の色に
染まっている西難に
俺は質問をぶつける。

｢西難は何しに？｣

スーパーに来る理由など
買い物以外に何があるのか、
と普通なら思うところだが
買い物カゴを持っている
俺はまだしも、
カゴも持っていなければ
エコバックもない。
まさに手ぶらの西難は
何をしに来たのだろうか。

｢あっそうだった！えぇっと、
今日はうちの親いないから、
昴ん家でご馳走になろうって
思って、それで来る途中に
気配を感じてお店に入ったら
昴がいたんだ｣

うん。ツッコミ所があるな。
まず、俺ん家で
ご馳走になるって？
何言ってんだ？
ちなみに俺は
母親から妹の分も頼むと、
そうとしか聞いてないので
俺と妹の分しか
作る気がなかった。
次に、気配を感じて
店に入ってきただと？
気配って、お前は武士か。

｢飯を食いに来たって、
そんな話知らねぇぞ？｣

俺がそう言うと、
西難は驚いた顔になった。

｢えっ？お母さんから
連絡なかったの？｣

俺は知っていたのを
当然かと思っているらしい。
が、俺は知らない。
その前に、なぜ西難が
母から俺に連絡が
来たのを知っているのか、
そう疑問に思ったが
今はスルーしよう。

｢連絡は来たが、
俺と妹の2人分の飯を
頼むって内容だったぞ？｣

俺が受け取ったメールは
『2人分よろしくね』と
そういう文面だった。
俺と妹、合わせて2人分。
.......ん？2人分？
もしかして.......

｢その2人分って私と
葉月ちゃんの2人分、
ってことでしょ？
昴の分は自分で
どうにかしなさいって
そう言われないと
分からない？｣

2人分って俺以外の
2人分ってことかよ。
くそっ、ただでさえ
文章下手なんだから
そういうのはちゃんと
教えてくれないと、
俺と西難がここで
会わずに家に帰ってから
よろしくったって
すぐにどうにもできねぇよ。
っていうかなんでこいつは
上から目線なんだ。
飯をご馳走になるってのに。

｢はぁ、分かったよ。
じゃあ先に帰ってろよ。
今は家に葉月しか
いないから、話し相手にでも
なってやってくれ｣

急な話だが、仕方なく
引き受けることにした。
手で虫を払うような
仕草をして、西難を
先に家に帰っておくように促す。

｢はーい｣

西難もそれを了解し、
こちらに手を振りながら
笑顔で去っていった。
まるで嵐が過ぎたように
静かなった店内に残り、
俺は買い物を再開。
次は豚肉と一緒に炒める
野菜を調達しに
野菜コーナーに向かった。

｢これでいいか｣

一通りの買い物を終え、
レジへと足を運んだ。

｢合計で1853円になります｣

豚肉と野菜とその他の
葉月が好きなお菓子を
買ったので少し買いすぎたな
と思ったが、これくらいの
金額など俺にとっては
安すぎるほどであった。

｢カードで｣

財布からカードを出す。
約2000万円がこの
1枚のカードに詰まっている。
なぜ俺にこんなにも
金があるのかという理由は
また近いうちにするとして、
俺は少し後悔した。

｢ありがとうございました｣

レジを通し終わり、
台でレジ袋に品物を詰める。
しかし、西難の分くらいは
自分で買わせればよかった。
という後悔をしている。
実際のところ、西難は
かなり儲けている。
言っておくが、俺と同じ
高校2年生であり、
決していかがわしいお店で
働いている訳ではない。
が、月収は平均で約300万円を
維持しているという、
その西難の職業は高校生兼、



―プロのイラストレーターだ。



━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき


どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。


次回、私の好きな
妹キャラが登場します。
乞うご期待。



それでは、ｱﾃﾞｨｵｽ！