オレの幼馴染が嫁候補!?

古民家

連休は休みたいんですが…

4月も終盤になり、もう少しで億劫な時がやってくる。

オレが大学生活に失望し始めたGW(ゴールデンウィーク)だ。

明日が休み前の最後の講義。
周りは遊ぶ計画を練る事に夢中になっているようで、講義中も何度も教授が注意していた。

まあ、気持ちはわからんでもないけど、オレとしてはゆっくりと過ごす事を願っている。

午前の講義が終わり、珍しく高部が昼飯に誘ってきたので、食堂に行く事にした。

「なあ、小鳥遊〜。お前最近モテ期なんか?」

「は?誰がモテ期やねん。」

「噂やと、一年の後輩ちゃんと仲良えらしいやん?」

「ああ、みさ…葛籠屋のことか?あいつオレの幼馴染やねん。」

「かは!幼馴染やなんて、オレには縁のない言葉やわ〜。」

胸に手を当てて、ダメージを喰らったかのような仕草をする高部。

「ところで噂ってそんだけか高部?」

「ん〜、俺が聞いたんは、後輩ちゃんのことと、水沢と良い仲になっとるとかやな。」

「誰がそんな事広めとるんや!?」

「誰てそんなん…」
「高部くん、あんまし噂立てると、後で怖いで。」

いきなり後ろから女性の声がし、振り向くとそこに腕組みをしながらの水沢が立っていた。 

「ほ、ほなオレ、用事あるし先行くわ。」

そう言うと高部は、昼飯の残りをかっ込むとそそくさと食堂を出て行った。

噂の根元はあいつか……

高部が座っていたところに水沢が座り直す。

「高部くんの事は後で私が言い聞かせとくわ。」

どうするつもりだ、なんて聞くのは地雷を踏むみたいで気が引ける。

水沢はこちらをジッと見続けながら腕組みをしたままだ。

「あの〜、水沢?」

「なに?」

「そんなジッと見られてると食べ辛いんやけど…」

「お構いなく…」

オレは過去数日のことを振り返るが、あの歓迎会以降のことで、水沢を怒らせるような事は特に身に覚えがない。

無言の水沢の前で、ランチの残りを食べるが味覚が鈍く、食事を楽しめないのはとても辛い。

「な、なあ水沢。なにを怒ってんのか教えてくれん?このままやと食事が続かんねん。」

「なんで連絡くれへんの?」

「は?連絡?オレなんかお前と約束してたか?」

「はあ……。連絡先交換したんやからメールの1つでもくれたらええのに。」

「い、いやそれは、水沢がオレにさせたい事が決まったら連絡してくる言うたんやん?」

「そ、それはそうやけど……」

「それで決まったんか?オレ、あんまし派手な事は叶えられへんで。」

「派手な事?」

「高級イタリアンに連れてけとか、ブランドバッグが欲しいとか…」

「わ、私ってそんな高飛車な印象なん?」

「そう言うわけやないけど、限度があるゆうことを知っといて欲しい思て。」

さっきまでお怒りモードだったくせに、自分の印象について言われると、やけにしおらしく見える。

腕組みはそのままに、水沢はうんうんと悩んでいる仕草をした。

その間にオレは昼食の残りを平らげる。

「あ、そうや。」

閃いたかのように、水沢がパッと笑顔を見せる。

「な、なんよ急に…」

「小鳥遊くんにお願いすること閃いた!」

「お、お手柔らかに……」


そして翌日


その日最後の講義が終わるとすぐに、オレは校門のところへ急いだ。

校門に着くと見慣れた顔の、見慣れた格好の水沢がスマホをイジイジしていた。

(そう言えば、美咲のやつここで絡まれとったな。)

美咲のことを考えると、オレの部屋での事を思い出した。

(ちゃんと…考えんとな…)

「あ、小鳥遊くん!」

オレを見つけると水沢が手を振る。
オレはそれに応じるように手を振り、水沢の所まで急いだ。

「すまん、待たせてしもて。」

「ううん。私も最後まで講義やったから、そんなに待ってないで。」

「それで昨日言うてた事やけど……ほんまにそれで良えんか?」

「うん。私、あんまし京都行った事ないし、知ってる人が連れてってくれる方がたのしいし。」

「そやけど、京都なんて寺とか神社ばっかりやで、良えんか?」

「しつこいな小鳥遊くん。私、これでも美術部やし、文化財や芸術品とかには興味あんねん!ああ、京都五山とか行く機会とか中々無いし楽しみやわ!」

水沢は既に京都の寺に魅了されている。

「そしたら、どこから回るかこの後、スタバにでも行って決めよか。」

「はいはい〜。」

ルンルン気分の水沢は少し幼く見えたが、それも水沢の可愛い一面なのだろ。

学科内外問わず、人気が出るのもうなづける。

オレたちは最寄りのスタバに入り、スマホを手に京都の寺のどこから回るかを、ああだこうだと言い合いながら、時間を過ごした。

「でも良えん小鳥遊くん?」

「ん?何が?」

「いやほら、私が行きたい言うた手前やけど、GWの1日目とか約束とか無いん?」

家にジッとしておきたいという気持ちはあるが、そうすると昨年のような想いに悩まされるのも嫌だと、オレは思った。

「今んとこは特に約束も無いし、ついでに実家にも帰ろう思てるし、水沢が気にする事無いで。」

「へー、小鳥遊くんの実家て、どのあたりなん?」

「オレの実家の最寄駅は出町柳の方や。」

「ほな、京阪で行けるやん。」

「行けるやんって、オレの実家に来るんかいな?」

「え!?あ、いやそうやないけど……ほ、ほら、東福寺さんは京阪やん?」

「やん?って、まあ良えわ。そしたら、先ずは東福寺さんからやな。待ち合わせは、東福寺駅の改札前で良え?」

「ラジャ!」

水沢は敬礼しながら、ニコリと笑った。

そして京都の寺を巡るルートが決まると、店を出て、オレたちは各々の帰るところへ向かった。

自分のアパートに戻り、オレが自分のスマホを見ると着信とメールが一件ずつ入っていた。

メールを開くと短い分でこう書いてあった。

『悠ちゃんへ、実家には戻るん?もし、戻るんなら一緒に帰らん?』

メールが送られて来たのは、20分ほど前で、丁度水島と別れたころだ。

オレはマナーモードにしていたことに気付くと、すぐに美咲に電話を掛けた。

呼び出し音が数回なる…

「は、はい、葛籠屋です。」

美咲の少し高めの声がスマホ越しに聴こえてくる。

「電話くらいでそんなに緊張すんなや美咲。」

「あ、ゆ、悠ちゃん。ごめんな、まだ慣れてなくて……メール見てくれたん?」

「ああ、実家やろ。オレは明日帰るで。」

「そ、そうなんや。そしたら、ウチも明日帰ろかな……悠ちゃん、一緒に帰らん?」

水沢との約束を先にしている。
そちらを優先することになるが、美術部での一件もあり、オレは水沢の名前は出さないことにした。

「すまんな美咲。実は、その日に約束があってな。オレ、朝早くに帰るんや。」

「そうなんや…」

明らかに声のトーンが下がり、残念がる美咲が目に浮かぶ。

オレはほんの少しズキりと胸の奥が痛むのを感じたが、気付かない振りでやり過ごした。

「ほな、明後日は?」

「え!?明後日?明後日やったら、特に用事はないけど…」
「そしたら、明後日!明後日、どっか行こ!?」

珍しく積極的に誘ってくる美咲に、電話越しでもオレは少し気圧された。

「お、おう…」

「やった!約束な悠ちゃん!」

「わ、わかった。」

そしたら、と美咲が電話を切ると、オレはスマホを見ながら電話越しの美咲について
、落ち込んだと思ったら、急に機嫌が良くなったり、忙しいヤツだと思った。

勢いとは言え、連休初日と2日目と忙しい日が続く事を覚悟しながら、オレは遅めの荷造りを始めていた。

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