オレの幼馴染が嫁候補!?

古民家

同級生が天然なんですが…

美咲が同じ大学に入学したのは驚いたが、あれから美咲から電話は掛かってこない。

こちらから掛けようにも、美咲の番号がわからないのでは話にならない。

「まあ、同じ校内やし、その内会うやろな。」

「誰と会うん?」

いきなり後ろから声をかけられ、とっさに後ろを見るとそこに水沢が立っていた。

「み、水沢!?」

「何よ。そない驚くこと?そないなことより、この前は勝手に逃げよってからに、あの後ビラが汚れるわ、その張本人はトンズラするわで、私、先輩らに怒られたんやからね。」

「そ、それはすまん。」

「ホントに悪い思てるん、小鳥遊くん?」

「思てる思てる。」

人形のようにカクカクと首を縦に振ると、
それを見た水沢は、にんまりと悪女の笑みを浮かべた。

「ふーん…悪いと思てんなら、私の言うこと聞いてくれる?」

「…………金は無い…」
「お金ちゃう!!」

水沢がパシンと軽くオレの腕に突っ込みを入れてくると、コホンと大袈裟に咳払いをした。

「実は来週の土曜日、美術部の方で新入生の歓迎会をするんやけど、2年生は何か出し物せんとあかんねん。」

「出し物は?」

「そ、その…う、歌を歌うことになってんねん。」

水沢はやけにもじもじとしている。

「そんで?」

「わ、私、人前で歌うとか、したことなくて…」

「ウソやろ!?友達とカラオケとか行かんの?」

「………行ったことない…」

消え入りそうなほど小さな声で肯定する水沢は、普段の明るい感じとはまるで正反対だった。

「そ、そやし……しゅうに……って…」

「は?」

「一緒に練習してって言うたんや!!」

「なんでオレが怒られなあかんねん……。は?練習?」

この歳にもなって、カラオケに行ったことのないという正に珍獣を目の前にして、オレは少し呆けてしまった。

「そやし、小鳥遊くんが私に悪いと思てんやったら、罰としてカラオケに連れてって!」

確かに水沢には前回迷惑を掛けたが、まさかその罰としてカラオケに連れて行けとは、なかなか変わった償いだ。

しかし、それでこの間のことがチャラになるなら安い物だ。

「ええよ、ええよ。それでチャラになるやったら。」

「ほ、ホンマ!?やったー!ほな、明日の夕方5時に梅田の本屋の前でお願いな!」

嬉しそうに立ち去る水沢ん見て、昔から実家で飼っていた猫を思い出していた。

(あいつ前世は猫やったんちゃうかな。)

翌日、詰め詰めの講義量をこなし、ヘトヘトになりながら、水沢との待ち合わせの本屋へ向かう。

金曜日の夕方は人通りが多く、水沢との待ち合わせの本屋の前も、他の待ち合わせの人達で溢れていた。

時間は16:50を少し過ぎたところで、待ち合わせには十分余裕がある。

周りを見るが、水沢の姿はまだ見えない。

まだ時間あるので、オレはスマホの画面を開き、ネットサーフィンならぬSNSサーフィンをすることにした。

幾つか話題のアカウント欄を読み進めていると、ふと時刻表示を見る。
16:58の文字が目に入ったその時だった。

「小鳥遊くん。」

水沢の声がして顔を上げる。

「よう、水沢ギリギリ……」

「ギリギリ何?」

昨日まで大学で会う水沢は、Tシャツやネルシャツのトップスにジーンズやスラックスと、割と動きやすくボーイッシュなスタイルのファッションばかりだった。

しかし、いま目の前にいるのは誰だ?

髪型や顔は水沢と同じだが、薄手のブラウスにストールを巻き、膝までのスカート、そしてパンプスを履いている。

正直、可愛らしい。

「水沢…さん?」

「何なん今更、さん付けなんて。いつもみたいに呼び捨てでええよ。きしょくいわ!」

「そやけど、いつもはもっとこう…」

「男っぽいて?」

「うん。」
「即答せんといて!小鳥遊くん、デリカシーって知っとる?」

「オレは別に水沢にパシリとかして欲しいなんて思てないで。」

「え?パシリ?」

「だから、デリバリー…」
「デリカシー!!ワザとしとるでしょ!?」

「スンマセン。」

「もう、女性には思てても言ったあかんことあるんよ。」

ああよかった、いつもの水沢だ。
これで喋り方も違ってたら、明日から熱が出るところだった。

「阿呆なこと言ってんと、早くカラオケ行こ?」

「ハイハイ。」

学科内でも人気のある水沢が、女性らしい、モトイ魅力的な格好をしていて、その場にオレしかいないというこの場に、オレは心の中で知らぬ誰かに感謝した。

カラオケBOXに入ると、受付カウンターに進む。

「いらっしゃいませ〜。コースはどういたしますか?」

「コース?あの、カラオケをしたいんですが…」

「へ?あ、いやあの歌われる時間のコースを選んで頂きたいのですが…」

本当に来たことがないんだなと、オレは水沢の勘違いに改めて驚いた。

「そ、そうなん?何があるんですか?」

「今ですと、2時間コースとフリータイムで、フリータイムですとドリンクが付いてきます。」

「へー、じゃあフリータイムを…」
「待て待て、水沢!」

「え?ダメなん?」

「今からのフリータイムは、朝までコースやで。お前、一晩中おるんか?」

「え!?一晩中!?無い無い!そんなん、ここってそんなとこなん?」

どんなところと勘違いしたのか、気になるが今はあえてスルーした。

天然要素が発掘された水沢の代わりに、2時間コースを選ぶ。

部屋に案内されると、ここでも水沢が驚く。

「へ、部屋狭ッ!しかも真っ暗やん!?ここで何すんの!?」

オレは無言で電気をつけ、カラオケの準備を進めた。

「あ、電気くんやね。あ、これがマイク……私てっきり…」

「てっきり?」

「なんも無い!!…それで、どうやってカラオケするん?」

「まあ、とりあえずオレがやってみせるわ。」

そう言ってオレがカラオケのやり方を実際にやってみせる。

高校の時は、よく友人と放課後や休日に行って、その当時流行のミュージックソングを歌い合い、ストレスの発散の一つにしていた。

オレの好きなアーティストの曲を歌い終わると、水沢から拍手が起こる。

なるほどとばかり、水沢も曲を入力する。
最初は、緊張した様子だったが、お気に入りの曲が鳴り出すと楽しくなってきたのか、ゆらゆら揺れながら歌い出す。

少し硬いが、楽しそうに歌う水沢は、活き活きとして、普段見せる水沢らしさが見えたことに安心した。

いろいろな曲を歌っていると、お互いに知っている曲もあり、デュエットもするなどオレと水沢はカラオケで意気投合した。

「ハァー…、スッキリしたー…」

「水沢、結構上手いやん。」

「おおきに…。やけど、小鳥遊くんも上手いやん。私、アスカの曲好きやねん。」

「良い練習になったみたいでよかったわ。」

「うん。これで一緒に出来るわ。」

「一緒に出来る?」

「そう、2年生は私だけやから不安やってん。小鳥遊くんが歌上手くて、ホンマ助かるわー。」

「はぁ!?聞いてへんでそんなこと!?」

いつの間にか美術部の新入生歓迎の会の見世物にされていることに、オレは素っ頓狂な声をあげてしまい、一瞬周りの人の視線を集めることになった。

「小鳥遊くん、声大きいわ。」

シーっ、と人差し指を口に当て、静かにのポーズをする水沢も割と可愛いと思いつつも、目下の事に集中する。

「お前の出し物の練習に付き合っただけで、なんでオレまでパンダにならなあかんねん。」

「私に悪いと思てんのやろ?」

急に悪魔のような笑顔を見せる水沢。

「そやけど、なんで一緒に出ないかんねん。」

一緒に練習して・・・・・・・って、言うたやん。そんで小鳥遊くん、了承したやん。まさか嘘なん?」

前言撤回、可愛いなんて思ったことをオレは心底後悔しそうになった。

「はあ、まさか水沢とのデートがこない難儀な事になるとは思わんかったわ…」

「で、デートやなんて、私そんなつもりは…」

こんな時に少し赤らめて、そっぽを向く水沢は卑怯だと思い、こうして半ばはめられた感を残しつつ彼女との初デートは終了した。

そして日は過ぎて、美術部の新入生歓迎の本番がやってきた。

 美術部の新入生歓迎会の会場は、美術室を使っており、オレが美術室にやってきた頃には、既に準備がほぼ完了していた。

新入生用のテーブル席をはじめ先輩方のテーブル席には、お菓子や飲み物が置かれ、壁や扉には飾り付けがされている。

4回生と3回生は席に着いており、お互いにお喋りを始めていた。

オレが部室に入ってくると、事情を知っている女性の先輩が寄ってきた。

「ごめんね。燈のわがままに付き合わせたみたいで。」

「燈?ああ、水沢のこと。」

「あの子、たった1人の2回生だし、責任感強いから。」

「いえ、先輩も大変っすね。」

「アハハ…良いって別に。でも、ふーん。そっか君が噂の小鳥遊くんかぁ…」

「噂?」

「梶先輩!!」

さっきまで歓迎会の進行の手順を確認していた水沢が、怖い声を上げてズンズンと近寄ってくる。

「小鳥遊くんに、何言うたんですか先輩!?」

「別に〜、私は不器用な燈の代わりに、小鳥遊くんにお礼を言ってるだけだよ〜。」

ピューと唇を尖らせて、とぼける仕草をする先輩はそそくさと席に戻っていった。

ジト目で先輩を睨む水沢を見ていると、ジロリと視線がこちらに向く。

「何?」

「い、いやなんでもないです。」

「じゃあ…後はわかってるわよよろしくね。」

冷たい笑みを向ける水沢に身震いしながら、オレは歓迎会が始まるのを待っていた。

まず初めに水沢が先輩方に短い挨拶をすると、感謝の言葉と一緒に新入生を会場に招き入れた。

新入生は全部で7、8人。
オレは新入生の中によく知る人物がいる事に驚いた。

一番最後に扉の外から姿を見せたのは、セミロングの縁無しメガネの女の子。

「美咲!?」
「ゆ、悠ちゃん!?」

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