オレの幼馴染が嫁候補!?

古民家

オレが許嫁になりまして

「結婚ッッッ!?」

「あら〜克さん、それ気ぃ早いんちゃいます?」

お袋が親父の言動をニコニコしながら静止するが、順序よく話しなさいという怖い気配に親父もビクついている。

「あ、ああ、そうやな。年甲斐も無く舞い上がっとるなワシ。」

親父の話はこうだった。

親父と美咲の親父さんは、元々仕事の関係で家族ぐるみで交流があった。

以前、お互いの父親同士で許嫁の話が持ち上がっていたらしい。

ただ、美咲の親父さんが早くに亡くなってしまい、その遺言の一つとして美咲の許嫁としてオレの名前が上がった。

ただ、これは世間体のこともあるため、2人が大学へ入学、または就職に着いた時まで知らせないことになっていたらしいのだ。

美咲の実家は家具職人の老舗で、京都の中では割と有名どころだ。

その昔、美咲の家に遊びに行った時、美咲の親父さんに家具作りを体験させてもらったことがあった。

その時、筋が良いと褒めてもらえた事が嬉しくて、何度も遊びに行っては美咲を放っておいて親父さんの仕事を見ていた。

だが、オレが中学に上がる頃、親父さんは交通事故で帰らぬ人となった。

葬式にはオレも参列したからよく覚えている。

あの時は、美咲がかなり落ち込んで、しばらく小学校を休んでいたらしい。

だけど、その頃から美咲とは疎遠になり、高校に入学すると親父さんの三回忌を気にパタリと交流がなくなっていた。

「美咲ちゃんには夏帆さんから伝えてもうたんよ。その次に、ウチらに連絡があってん。」

相変わらずお袋はニコニコ顔で話している。
お袋の言う夏帆さんとは美咲のお袋さんのことで、オレの記憶の中では、綺麗でいつも優しくて、正に京美人というのがぴったりな人だ。

「そやけど、オレらの気持ちはどないするんや?」

「なんやお前、美咲ちゃんのこと好きやないんか?」

「い、いや、そうやなくて、好きとか嫌いとかやなくてやな……み、美咲も何か言うてや。」

答えようとすればする程、頭がパニックになっていく。

とっさに美咲の方に助けを求めるように見ると、彼女は顔を俯かせて赤くなっていた。

「ほら〜、美咲ちゃんは了解してんやし、あんたが腹括ったらええねんて。」

お袋がまたニコニコしながら了承を促してくる。

「み、美咲はそれでええんか?オレらまだ成人式も終えてないんやで。」

「う、ウチは……おとうはんの遺言やし、それにおかあはんも喜んでくれてはるし…そやし…そやし…」

ああ、美咲は昔からこうだ。
周りが望むこと、喜ばれる事が一番だと思い込んでいる節がある。

「はあ………、オトン、オカン。少しの間美咲と2人にしてくれん?」

「おお、もう夫婦気取りかいな。」
「いややわ悠人、まだ結婚もしとらんのに。」

「いいからはよ出ぇ!!」

強引に両親を部屋から追い出すと、部屋にはオレと美咲の2人だけになる。

美咲は相変わらず俯いたままだ。

オレは、美咲の座っているテーブルの向かい側に座り直すと、とりあえず目の前のお茶をグイと飲んだ。

「あ…」

「な、なんや?」

「そ、それウチの飲み掛け……」

ゴホゴホと咳き込むオレ。

「は、はよ言えや阿呆!」

「そ、そんなんウチのせいやないやん。悠ちゃんが勝手にした事やんか。」

顔を真っ赤にしながら抗議する美咲の顔を見て、むかし玩具の取り合いをして壊した時のことを思い出した。

あの時は、お互いが強く引っ張り過ぎて、壊したのはどっちかなどを言い合いをしていた時の顔だった。

しばしの沈黙。

「美咲、お前本当はどう思ってんのや?」

「え?」

「親父さんの遺言とか、お袋さんの希望というのもわかるけど、一番大事なんはお前の気持ちやろ?」

「そ、そんな事わかってる。」

「なら、なんでオレと結婚する事を受け入れてんねん。何とも思てへん奴と結婚なんて良いわけないやろ。」

「………へんわけやない。」

「は?」

「何とも思てへん訳やない!!!」

バンと机に両手をつき、美咲は部屋中に響くほどの声で言い放った。

だが、言い終わってからさらに顔を赤くして俯いてしまった。

「あ、あの美咲さん。それってどういう…」

オレは美咲の勢いに気圧され、少し驚いていた。

もじもじと体をくねらせながら、美咲は小さな、けれど聞き取れるほどの声でいった。

「ウ、ウチは悠ちゃんの事……す、好きやねん。」

しばらく呆然とするオレ。

(え?美咲は俺のことが好き?確かに昔は仲良かったけど、俺からしたら妹みたいな存在なのに)

オレはどう言ったらいいのか、わからなくなり、ただ時間だけが過ぎていく。

「悠ちゃん?」

「あ、ああ、すまん。」

美咲の声に我にかえる。

「そ、それで…ゆ、悠ちゃんはどうなん?」

「は?」

「だ、だから…ウ、ウチのことはどうなん?」

「妹やな。」

キッパリと断言するオレ。

「へ?い、妹?」

「いきなり許嫁やら、オレのこと好きやて言われてもやな。だいたい、今日オレが帰ってきたんもそのことやないし。」

「へ?へ!?ウ、ウチはおとうはんの遺言の話でここに…」

「ああ、勝手にオレのバカ親2人が舞い上がってただけやな。あの2人、昔からオレの話は真面目に聞かんし。」

「で、でも…そんならウチ…」

美咲はもう顔から火が出そうなほどだ。

それはそうだ、なんせ美咲にしてみれば人生の中で決意を持って臨んだことで、まさか相手が今回の話を聞いてないなんて予想出来るはずがない。

「もう…死にたい……」

美咲は絞り出すような言葉を発する。

「そ、その〜…」

何か言おうとオレがした時だった。

いきなり扉がバンと開き、親父とお袋が乱入してきた。

「悠人!お前まだ腹括らんのか!!」
「あんたがそんな冷たい子やったなんて、お母さん悲しいわ。」

親父は見下すような、お袋は鳴き真似でオレを追い詰めてくる。

この2人…戸の向こうで聞いていたな。

「な、なんで2人が出てくんねん!?」

「やかまし!お前、いま付き合うとる女でもおるんか!?」

親父がすごい剣幕で迫る。

「お、おらんて…」

「なら、美咲ちゃんのことは嫌いなんやな!?」

「き、嫌いやないて…」

「なら、結婚しても良いと思てんやな!?」

「ま、まあそれは…あっ!」

しまった……

それを聞いて両親とも鬼の形相から、一気にニコニコとしだした。

「そうか〜結婚しても良いと思っとんのやな。それは良かった良かった。」

「よかったな〜、美咲ちゃん。悠人も美咲ちゃんとのこと了承したで〜。」

半ば強引に持っていかれた感がある。
悪魔どもめ…

この後直ぐに美咲は家に戻って行き、オレは結局大学の自主退学の話を両親には出来なかった。

こうしてオレは、なんやかんやで、半ば強引に、幼馴染の美咲と、許嫁の間柄になったのだった。

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