この声が届くまで、いつまでも叫び続けたい

@tsushi

32.スカイハイ

手紙なんてものを書いたのは、初めてだった。


きちんとした作法なんて知らない。
ただ、昔読んだ本に手紙風の文章があったので、その記憶を頼りにみようみまねで書いてみただけだ。


何度も書き直した。
最初こそ感情に任せて書き殴っていただけだったが、次第に俺はどのような表現が一番適切なのか、どのような言葉を彼女が必要としているのか考えるようになった。
それでも何かが足りない気がして、一日中コトバを探し続けた。






ずっとずっと、気付かなくてごめんね。


ずっとずっと、俺を呼び続けてくれていたんだね。


だけどもう大丈夫だよ。


君の声は、俺に届いた。








今度は俺が届ける番だ。








あの日からまた、一週間という時が経とうとしていた。


キャンパスの景色も、友達との会話も、何一つ変わらずに時間はいつも通り過ぎていく。
だけど俺の中の「何か」は、確実に変わりつつあった。


冬の匂いがした。
もしかしたらもう、秋がその役目を終えようとしているのかもしれない。
あんなにも赤くそびえ立った木々もなりを潜め、見る影も失くして縮こまりながら震えている。
いつもと同じ季節の変わり目を、俺は生まれて初めて見たような不思議な感覚で眺めていた。


どうして気付かなかったのだろう。
















空はこんなにも、高かったんだ。

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