甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第100話

髭のおじ様に聞いた所。
ランプの精霊さんは砂漠の真ん中のオアシスの水の中にある宮殿で人に見つからない様に隠れているとの事。
どうも人に使役されるのが嫌になって引きこもっているらしい。
私は、ランプの精霊さんに黒蜜おばばと"たると"ちゃんみたいな可愛い女の子をお嫁さんにどうでしょうか?と勧めてみるつもり。
でなければ、昔から生きているランプの精霊さんに不死身のお知り合いを紹介して貰えたらな〜とか考えてたりする。
テーブルの脇に置いてある買い物籠を手に取り買い物籠に話し掛ける。
『買い物籠さん。今の情報でランプの精霊さんが隠れている宮殿の場所って解る?』
『今、アメリカのスパイ衛星から画像を読み込んで調べたら一つオアシスの水の中に石の建物が見つかったからコレだと思うわ。もし、間違えて宮殿の中が水でも蜜ちゃんなら何でも無いからまず行って見ましょうか」
真空の月でも大丈夫な私なので買い物籠さんも気軽な物だ。
客間に居る皆に
「ランプの精霊さんの所へ黒蜜おばばと"たると"ちゃんの二人をお嫁さんにどうですかって聞いてきますね。ランプの精霊さんがダメでも誰か不死身で大金持ちのイケメンを紹介してくださいってお願いして来ま〜す♡」
すると黒蜜おばばが
「色黒でポッチャリのランプの精霊さん!柔らかなお腹に包んで欲しいわ!包容力のある人、大好き!」
たるとちゃんは
「この際、年上のおじ様でも良いわ!お金持ちの遊び慣れたおじ様が私を手玉に取ってメロメロにして欲しい!」
二人とも愛に飢えているのね・・・

早速、買い物籠を持ってオアシスの中の宮殿へ。

宮殿の広間のタペストリーの影から現れた私は、周りをキョロキョロとする。
魔法の松明の炎が広間を明るく照らす。

広間の一段高くなった場所にある豪華な椅子に色黒でポッチャリの髭のおじ様がニッコリして私を眺めていた。

「こんにちは、私は蜜と言います。ランプの精霊さんですか?」
とピョコンとお辞儀をする。
「ウーム、儂はランプの精霊じゃ。蜜とやら普通の者は入れぬこの宮殿に一体何の用じゃ?儂はつい最近起きたトラブルの事後処理で少し疲れて休んでいた所じゃ」
「あっ!お疲れだったならこの甘いどら焼きをどうぞ。美味しいお菓子を食べたら疲れが取れますよ」
と買い物籠に入れてあったどら焼きを差し出す。
「どら焼きとな!最近あったトラブルの元になった物の名前がそんな名前だった様な・・・美味しいお菓子なら違うのかな?」

私からどら焼きを受け取りモグモグ食べるランプの精霊さん。
「うむ!美味い!気に入ったぞ、蜜とやら儂に何か用事があって来たのであろう?何か望みがあるのか?」
「ハイ、ランプの精霊さん。望みと言うか可愛い女の子を二人ランプの精霊さんのお嫁さんにどうかなぁっと思いまして・・・ランプの精霊さんで無くとも不死身のイケメンさんが居れば紹介して貰えたらと・・・」

咥えていたどら焼きをポロリと落としたランプの精霊さん。
「今まで、望みを叶えてくれと言う奴らばかりに嫌気がさしてこの宮殿に隠れていたが、蜜ちゃんの様に美味しいお土産をくれた上に可愛いお嫁さんを紹介したいなんて言うのは初めてだ!蜜ちゃん是非ともその可愛い女の子を紹介してくれ!」

ニコニコ笑顔の精霊さん。
私は精霊さんの気が変わらない内にと
「じゃあ、直ぐに連れて来ますね」
と近くの暗闇に飛び込んだ。

客間で今か今かと楽しみに待ち構えていた黒蜜おばばと"たると"ちゃんに
「精霊さんが是非会いたいって!付いて来て二人とも」
二人の手を取り近くの暗闇み紛れた。

宮殿の広間へ出た私は
「ランプの精霊さん。この二人がお嫁さん候補の蜜子さんに"たると"ちゃんですよ、可愛いでしょ?」
椅子から立ち上がって二人を繁々とみる精霊さん。
対してモジモジして俯く二人。

「そんな所に居らずにもっと近くでその可愛い顔を見せてくれないか?」
とランプの精霊さん。
「嫌だ〜可愛いなんて・・・精霊のおじ様ったら♡」
顔を赤らめ黒蜜おばば。
「脂ぎった中年の低い声・・・新たな分野の魅力を感じるわねぇ。今までの男はまだ若造だったから駄目だったのねきっと!これからは老け専ね」
ヤンデレを加速させる"たると"ちゃん。

二人はランプの精霊さんの間近に行きアイコンタクトをして頷き合うと精霊さんの左右に分かれて精霊さんの腕にしがみついた。
「"たると"逃げられ無い様にランプの精霊の体を椅子と融合させな!同時に私とアンタの体を精霊の腕と融合させるんだよ!!」
「もうやってる!逃げられ無いわよもう!それよりも蜜子叔母さん。例の魔香水隠し持ってるんでしょ?遠隔爆破式の容器に?精霊の体内に融合させるから貸して!」
「ヒャッハッハハッハ!流石、私の姪。隠せなかったかぁ〜『神殺しの魔香水』を全部使わずに持っていたのがバレてたんだね〜?」
ニヤリと笑う二人。

事態に付いて行けずにオロオロする私とランプの精霊さん。

口をVの字にして笑う黒蜜おばばと"たると"ちゃん。
黒蜜おばばから小さなカプセルを受け取り精霊さんの心臓部にカプセルを融合させて行く。
「「不死身の精霊だろうと『神殺しの魔香水』を体内に融合させたから私達二人を裏切ったり浮気したら遠隔操作で・・・解ってるわよねぇ?旦那様〜〜?ヒャッハッハハッハヒャッハッハハッハ!!もう逃がさないわよ〜〜」」

狂った様に笑う二人。

お目々をパチクリさせたランプの精霊さん。
「神殺しの魔香水ってこの前、このオアシスの近くで起きた核爆発並みの魔法反応を起こした元の?あの爆発の後始末で大変な苦労したんだけど?もう少しで儂も消滅しそうだったし」
「あー、あの爆発私がやったの。私ら二人の旦那様になるならあれくらいで消滅するなら駄目よ〜生き残っているなら合格〜!」
「そうよね〜あれくらいの事で消滅するならこの先やってられないわよ〜もっと融合しましょう旦那様」

涙目で私を見ているランプの精霊さんに私は「ご愁傷様、諦めてくださいね」とペコリと頭を下げた。

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