甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第97話

魔女っ子の撮影も一段落し(色々暴れたり宴会をやって気が晴れたカミーラお婆様達が落ち着いた)ちょっと記憶が曖昧だけど何故か大のお気に入りになったどら焼きを今までお世話なった方々に配って回っていたら、行った先々で 。
「ニコニコ笑顔の蜜ちゃんを見れて良かった良かった」と言われて何でかな〜?と思っているけれども皆んな嬉しそうにどら焼きを受け取ってくれるので『まぁ良いかな〜』と思っている。

中東のお得意さんの住んでる街にいるお使い中にお友達になった母子の所にもどら焼きを届けたら街中の人がニコニコしながら出迎えてくれて何故か新築の家になっていた母子の所へ案内され抱きつかれて泣かれて大変だったわ。
どら焼きがそんなに嬉しかったのかしら?

後、アメリカのタロットさんと言うアメリカで一番偉い人の所にどら焼きを届けたらタロットさんたらどら焼きを見て。
「オー!ドラヤキ!世界を破滅に導く物デース!白い家の地下にシマイマース!」
と言ってプルプル震えてたわ糖分の取り過ぎを気にしてるのかしら?悪い事をしたみたいね。

今日は中東繋がりで知り合ったドバイに住んでる髭のおじ様から頼まれてヨッ○モックの詰め合わせと抹茶のキット○ットとサービスでどら焼きを持って高級住宅地にやって来た。
黒い甲斐犬の姿は暑いしあまりイスラム圏では犬があまり飼われていないので人間の姿でアバヤと言う女性用の黒い頭まで覆う衣装を着て髭のおじ様のお家の呼び鈴を鳴らす。
メイドさんが出て来てくれて「いらっしゃいませ」とお出迎えしてくれる。
「こんにちは」とピョコンと頭を下げた買い物籠を持った私を笑顔で家の中に招いてくれる。

お客様用の部屋へ通され美味しいコーヒーを頂いていると髭のおじ様と奥様×二人と小さな子供数人とスラッとした髭を生やし始めたばかりらしいイケメンが部屋へ入って来た。
私は立ち上がって「アサラーム・アライクン」と挨拶をすると「ワライコム・サラーム」と返してくれました。

皆が椅子に座ると髭のおじ様。
「蜜ちゃんとってもアバヤが似合っているし挨拶も上手だからうちの長男のお嫁さんにならない?」とイケメン君を指差してニコニコしながら言われた。

「えー!ダメですよっ!私は人妻です」と左手薬指の指輪を見せた。
それを見てガックリする髭のおじ様とイケメン君。

頼まれていた品々を買い物籠からテーブルに出すこと小さな子供達が喜ぶ前に髭のおじ様とイケメン君が大はしゃぎお酒を飲まないアラブのぁ男性は甘いものに目が無いそうだ。
どら焼きをモグモグ食べる髭のおじ様とイケメン君。
イケメン君が「蜜ちゃんみたいな奥さんが欲しいな・・・誰か紹介してくれない?蜜ちゃん。僕は金融関係の仕事をしていてちゃんとお給料も貰っていて家もあるんだ。後は奥さんだけなんだよ・・・同じ民族の娘さんも良いけれどもこれから別の国に住む事もあるだろうし蜜ちゃんみたいな可愛い東洋の人が奥さんに欲しいんだ」

ちょっとショボンとしているイケメン君を見て私はある事を考えた。
「私の妹のシナモンなら紹介出来るかも・・・髪の色が違うだけで私とそっくりな」

どら焼きを食べ終わってヨック○ックを咥えながらパッと笑顔になるイケメン君と髭のおじ様。
早速紹介してと言われて餡子さんの仕事場に電話をかける。
ドバイとの時差は5時間こちらが15時だから日本は10時位だからきっと今頃お茶を飲んでる頃だわね。

電話をかけると餡子さんが出たのでシナモンを紹介したい男性がいるから連れて行って良いか?と聞いたらバーバ・ヤーガもシナモンも大丈夫と言っているから今連れていらっしゃいと言われたので髭のおじ様とイケメン君の手を握り電気スタンドの根元の暗闇から餡子さんの仕事場へ。

仕事場の大きなテーブルでお茶をしていた餡子さん達。

アラブ系の髭のおじ様とイケメン君を見てキャア〜!とか騒いでいる。

先ずはイケメン君に妹のシナモンを紹介した。
「この娘がシナモン。私の妹よ」
ツカツカツカとシナモンに一直線に近寄るイケメン君。
シナモンの手を取り。
「僕はラシード(賢明)です是非とも僕と結婚して下さい」
いきなりプロポーズしてるけど大丈夫かしら?私の周りの人って結構こんな感じで結婚しているから「またか」位にしか感じない私がおかしくなって来てるのかしら?
するとお目々を潤ませたシナモンも
「ハイ!喜んで!」
なんて何処かの居酒屋さんみたいに気軽に答えてるし!?
そんな二人の間に割って入って行く様にバーバ・ヤーガが体を滑り込ませる。
「うちの使い魔を嫁に貰うなら主人の私に一言聞いてからにしておくれよ!」
スラブ系の中学生みたいな可愛い外見のバーバ・ヤーガを見たラシード君。
目をパチクリさせて。
「貴女がシナモンさんのご主人でしたか、失礼しました。所で貴女も独身ですか?」
「そうよ独身よ!生まれてこの方ずーっと!悪い?」
バーバ・ヤーガの小さな手を握ったラシード君。
「シナモンさんと貴女も一緒に僕のお嫁さんになって下さい」
突然申し込まれたプロポーズにビックリしてるバーバ・ヤーガ。
どうなる?と思って見ていると。
お目々を潤ませたバーバ・ヤーガさん「ハイ!喜んで!」
周りで見ていた面々は「お前もか!」と思いながら盛大にズッコケタ・・・。
しかしこの後もっと凄い事が!!

お客様用に魔道具のサクマ君から餡子を出していた餡子さん。
目の前のプロポーズを見てボウルから餡子が溢れても気がついて居ない状況。
そんな餡子さんにツカツカツカと近づいた髭のおじ様、餡子さんの手を取り。
「私はバドゥル(満月)私と結婚して下さい」

皆があまりの事に『えっえええぇ?』と声を上げていたら餡子さんもお目々を潤ませ。
「ハイ!喜んで!」

『アンタもか〜!』と皆で声を上げた。

「亡くなった前の旦那も髭のおじ様だったわ・・・私、暑苦しい髭の中年のおじ様に弱いんだわきっと・・・」
知りたくなかった情報を呟く餡子さん。

ガックリと肩を落としてブツブツ呟く"たると"ちゃん「薫子さんに先を越されただけでなくバーバ・ヤーガにシナモン。おまけに餡子叔母さんにまで・・・私ってどんだけ男に縁が無いの・・・」

ブツブツ呟きながら無意識のうちに錬金の魔女の魔法を発動させてテーブルと湯呑みを融合させようとするのを止めて気付用の高級チョコを食べさせて何とか落ち着かせる。
これでダメなら黒蜜おばばの所にある鎮魂の指輪を借りて来なければならないわね。

万が一の時のことを考えて鎮魂の指輪を黒蜜おばばに嵌めて貰い状況を説明せずに急いで黒蜜おばばを餡子さんの仕事場に連れて来た。

アラブ系の髭の中年おじ様にデレデレの餡子さんやイケメン君に抱きついているシナモンとバーバ・ヤーガとテーブルを爪でガリガリ引っ掻いている"たると"ちゃんを見てからノホホンとしている孫の瑪瑙ちゃんに話しを聞いている黒蜜おばば。

話しを聞き終わって"たると"ちゃんに近づくと鎮魂の指輪をはめた掌を"たると"ちゃんの頭に乗せて「鎮まれ」と唱える。
スーっと落ち着いた表情の"たると"ちゃんを見た後に。
自分の頭に鎮魂の指輪をはめた掌を置き。
「何で私には男が寄って来ないんだ?『鎮まれ』」
と唱えた。

魂を落ち着かせた黒蜜おばばがお花畑状態の結婚する三人の代わりに相手側の色々な話しを聞きこちらの事情も詳しく話した後に結婚するにしても行き来が大変だから地獄や天界で使っているゲートをこの仕事場とドバイ設置出来ないか?と魔道具作りの魔女、餡子さんに提案した。

餡子さん少し考えてから仕事場にある納戸の扉に魔方陣を書きドアノブに紅い宝石を嵌めた。
「蜜、ドアノブを握りドバイのお家の扉を思い描いて開けておくれ」
言われたままに扉を開けると先程行った御屋敷の玄関ホールが現れた。
青い宝石を御屋敷側のドアノブに嵌めた餡子さん。

「これで大丈夫。何も考えないで開ければ普通の扉だけどこちらからはドバイへ向うからは日本へと念じながら開くと移動出来る様に固定したから。蜜や時々ドアノブを握り魔力を補充しておくれ宝石の色が薄くなり始めたらでいいからね」
コクンと頷いた私を見て餡子さん。
「先程、姉さんの聞いた話にあった第1、第2夫人兼、シナモンとバーバ・ヤーガの旦那さんのお母様達に会って来るか」
と笑顔で言ったのだった。

"たると"ちゃんは能面みたいな顔をしてボーっとしていたが使い魔の水玉君に
「たるとちゃんまだ向うにイケメンがいるかも知れないぜ?」
と言われニコニコしながら立ち上がって餡子さんの後に続いた。

餡子さんの使い魔、勝俣さんがフワフワ浮きながらそれを見て「やれやれ」と首を振るのだった。

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