甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第83話

ハロウィンは大盛況だったわ。
月のかぐや姫と金魚鉢を被った重力ウサギまで来て大変だったのよねぇ。
魔女っ子の撮影と言うよりオバケやモンスターズに鬼や天使のパレードになってしまった。
魔女っ子三人は道行く人にお菓子を貰ったりして喜んでるし。
六本木を練り歩いた後にドイツ大使館の中庭でビールとワインにソーセージと肉料理、それにキャンピングカーの伊達男の創作イタリアンをたらふく食べてホールケーキとバームクーヘンをお土産に皆んなが扉に偽装した私の作ったゲートで帰って行く。
パレードに参加した悪魔っぽいコスチュームのカミーラお婆様もビールで酔っ払ってニコニコしてた。
ドイツ大使館の人だけでなく周りの各国大使館の人も来ていたけど最後までモンスターズや天使達がコスプレだと思ってたみたい。
でもコスプレの出来が余りにも良いので自分の所でやるパーティーに呼びたいと閻魔様やミカエルさんに連絡先を聞いてたけど「蜜ちゃんに連絡して」とヒラヒラ手を振りながら帰ってしままった。
モンスターズも地下倉庫にお土産を持ってニコニコしながら消ちゃうし!もー!。
残された私は沢山の人に囲まれて揉みくちゃに。

えーい!こうなたら奥の手だ。

人混みに紛れて真っ黒な甲斐犬に姿を変えてその場から逃げ出した。
後は、紅さんに全部任るわ。

そんな私をいち早く見つけた人郎さんが狼に変化してついて来る。

二匹でハロウィンの夜の東京をデートよ。

アスファルトの上をタッタタと軽快な足音を立てて二匹で縺れ合う糸の様に入れ替わり戯れながら風の様に疾る。

六本木のビル群、中々良いわね。
見上げると、とても綺麗。
フト立ち止まって人郎さんと見つめ合いその後、犬らしくクンクンと互いの匂いを嗅ぎ合ったりして。

この所、人の姿ばかりだったから真っ黒な甲斐犬の状態も新鮮な感じ。

ん?さっきから気になってたけどドイツ大使館から何か付いてきてるわね?

見回すと天使達が連れて来た西洋の白い雲見たいな幽霊十人とカボチャのランタンがフワフワ浮きながら私を見てる。
嫌ねぇ、さっきの人郎さんとクンクン匂いを嗅ぎあってたのとか見られてたのね。
幽霊とランタンがニヤニヤしながら口笛を吹く真似をしながら私達の周りをクルクル回る。

んー!恥ずかしいわね!全く!

二匹だけのデートだったけどあなた達も付いてらっしゃい。
でも全力で疾走する私と人郎さんに付いてこれるかしら?
人郎さんと頷き合うと街をものすごい勢いで走り始めた。
おー!幽霊さん達中々スピードが出るわね。
幽霊とカボチャランタンが猛スピードで私達に付いて来る。
地を這う私達二匹より二メートルくらいの高さを飛んでる幽霊とカボチャは目立つので街行く人が皆んな驚いているわね。

よーし!スピードアップよ!付いてこれるかしら?

私と人郎さんは道と言わず塀や低いビルの上を飛び歩いたけれども元々空を飛ぶ幽霊さん達は高度を上げて付いて来る。
アレ?幽霊の数が増えてるわね。

日本の幽霊があちこちから集まって私達の後に付いて来たわ。
普通だと恐ろしいけれども地獄の鬼や獄卒さんを見慣れている私には可愛い物にしか感じない。

日本の幽霊が私の横に飛んで来て言う。
「ハロウィンは西洋のお盆だと先程地獄に帰られた閻魔様から聞きまして、蜜ちゃんが西洋の幽霊とカボチャを従え街を駆け抜けていたので我々日本の幽霊もハロウィンに参加しようと思い馳せ参じました。我々も蜜ちゃんと西洋の幽霊とのパレードとやらに参加させてください」
んー!ただ恥ずかしい場面を見られたのでそれを紛らわせようと全力疾走してたのを勘違いされちゃったわね・・・。
「良いわ!もっともっと沢山幽霊さんを呼んでくださいな。皆で東京の街を駆け抜けましょう!」
その言葉を待ってましたと言う感じで数え切れない幽霊さん達が姿を現した。

「西洋のお盆はオバケが道を練り歩くと聞いていたが偉い速度じゃのう」
「普段、ひとところで佇んでばかりだからたまに動くのも良いね」

今しがた現れた日本の幽霊さんが笑いながら話してる。

私は玉ちゃんに自分の影を通じて話しかける。
『玉ちゃん?聞こえる?青山墓地に西洋と日本の幽霊さん達を沢山連れて行くからお酒とおつまみとケーキを用意して置いて』
『畏まりました。蜜様』

よーし!東京中を一回りして幽霊さん達を連れて青山墓地に行くわよ!。

一時間程、あちこちを走って大量の幽霊さんを連れて青山墓地に行くと用意を整えた玉ちゃんが待っている。

玉ちゃんの前に止まった私は後ろにいる幽霊さん達に向かって「皆さ〜ん!お酒とおつまみとケーキを用意したから食べて行って〜」

「西洋のお盆はパレードとやらの後に精進落としがあるのか!豪勢じゃの〜」
「蜜ちゃん最高!」

幽霊さん達が嬉しそうにお酒やおつまみに群がる。

あら?カボチャランタンさんがカボチャのプリンを食べてるけど共食いじゃ無いの?大丈夫かしら・・・。

それから夜明け近くまで青山墓地は西洋と日本の幽霊さん達のハロウィンパーティは続いた。

一番鶏が鳴く頃。

食べて飲んでお腹パンパンになってニコニコしてる幽霊さん達が揃って。
『蜜ちゃんありがとうございます。東京中を全力で駆け巡り恨みや心残りを吹き飛ばし、美味しいお酒とおつまみとケーキを食べてとても暖かな気持ちになれました。これで皆、あの世に旅立てます。』

朝日が昇り始めるのを合図に幽霊さん達が光の粒になってニコニコしながら消えて行く・・・。

私は横に居る人郎さんに。
「来年のハロウィンも一緒に街を駆け抜けましょう」と言った。

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