甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第73話

「ムーブ!ムーブ!ムーブ!」
フォース・リーコン【アメリカ海兵隊武装偵察部隊】の隊員達が士官に急がされながら飛行機から落下傘で降下して行く。
全員が飛び出した後に真っ黒な夜間用の装備と落下傘を背負った私も敬礼をして空に飛び出した。

シリア国境近くの空に飛び出した私は何でこうなった?としきりに考えていた。

数時間前、ノースカロライナ州であるアメリカ海軍中将の開いたパーティー会場に銀座の老舗寿司屋の寿司を届けそのままパーティーに誘われ参加していた。
そのパーティーは海軍関係者だけでなく殆どの軍関係者がいた。
中将がアメリカテキサス州にあるミリタリースクールの卒業生で集まっていたのはその学校の卒業生ばかり。
その学校の卒業生がNavy SEALs【アメリカ海軍特殊戦コマンド】の訓練より学校の訓練の方が大変だったと言う。
教授にモサド【イスラエルの諜報機関】の元長官がいたり校長先生が元アメリカの国務長官だったりする本気でこの学校の卒業生だけで戦争出来る危ない学校だ。

パーティーの途中で海軍中将に一本の電話が入った事からパーティー会場が慌しくなった。
電話を握り締めて項垂れる海軍中将に私は尋ねた。
「何か悪い事でも起きたのですか?」
「蜜ちゃん・・・私の息子がシリア国境近くの上空で偵察飛行中にゲリラの携帯式対空ミサイルで撃ち落とされ緊急脱出して救助を求めているんだ。それにどうも怪我をさしていて時間的に救助を向かわせても間に合うかどうか・・・」
それを聞いた鍛え上げられた身体をした三十歳中場位の男性が中将に近寄り。
「中将殿の息子のマイクは学校の後輩で私の元部下であります。フォース・リーコンにも学校の卒業生が多数在籍しております。面倒な手続きは飛ばして後輩を助けに行けと一言、頂ければすぐさま救助隊が発進致します」
「中佐、それでも間に合うかどうか・・・」

「買い物籠のデータにシリア国境近くが入っていないから助けに行くのは無理だけど私を息子さんの所に連れて行ってくれたら帰りは怪我をした息子さんを病院に直接連れて帰れるんだけどな・・・」
そんなやり取りを聞いて私はまたしても余計な事を呟いてしまったのだった。

私の肩を中将と中佐がガッシリと握り二人が黒い笑顔で。
「「蜜ちゃん。無料で飛行機に乗ってみないかい?」」

それからパーティー会場近くにヘリコプターが舞い降りて来てヘリコプターに乗せられフォース・リーコン部隊の本部のあるキャンプ・ルジューン空軍基地に運ばれた。
真っ黒な夜間用装備を着せられ大型輸送機でフォース・リーコンの方々とシリア国境近くに運ばれた。
輸送機の中で落下傘の操作方法を教わりぶっけ本番で落下傘降下をするはめに・・・。

輸送機から飛び出した私は周囲に落下傘が無いのを確かめて落下傘を開いた。
真っ黒な夜間用落下傘が開き地面が近づく足が地面に着くとゴロゴロ転がり着地成功!。

教えられた通りに落下傘を丸め背中のリュックから小型シャベルを出しして穴を掘り落下傘を埋める。
耳に付けたインカムから集合せよとの声が聞こえた。
シャベルを仕舞い集合地点に向かう。
集合地点で点呼を取りGPSで位置を確認して救助に向かう。
一時間殆ど移動して救難信号の発信源に近づくと息も絶え絶えのパイロットが拳銃を片手に岩に寄りかかり虚ろな目で私達を見ていた。
フォース・リーコン部隊の隊長がパイロットのマイクさんに駆け寄りバイタルを確認してすぐに私を呼んだ。
「かなりバイタルが弱いマイクをキャンプ・ルージュンの病院に連れて行ってくれ蜜ちゃん」
「分かりました。行きますよマイクさん」
マイクさんの手を掴み近くの暗闇から移動しようとしたらマイクさんが眼を開き叫んだ。
「僕の乗っていた戦闘機には新型の爆弾が積まれているんだ。任務は偵察でなく新型爆弾の輸送だったんだ。戦闘機も新型爆弾を誘導する新型システムが搭載されている。戦闘機ごと跡形も無く破壊してくれ!」
その後、気を失ったマイクさんを急いで基地の病院に運びフォース・リーコン部隊の元に戻った私は隊長さんに近くに墜落している戦闘機と新型爆弾をどうするかを聞いた。
「あの戦闘機と爆弾を基地に移動させますか?」
「そうしたいのだけれども部下の報告では新型爆弾は自爆装置が始動していて動かすとすぐに爆発する様なんだ。このままにしておけば十分少々で爆発するのだけれども新型爆弾は禁止されているBC兵器【生物・化学兵器、細菌やウィルス・毒ガス】なので自爆する前に高熱を発生させる爆弾で一気に焼いてしまわなければこの地域が汚染されてしまう。蜜ちゃんに基地から高性能爆弾を持って来て貰っても後十分少々では間に合わない・・」
「分かったわ高性能の熱を発生させる爆弾ね何とかするわ戦闘機のある位置の詳しい座標を教えて。それとフォース・リーコン部隊の皆んなは私が基地に連れて帰れるから手を握って」
片手に一人づつ手を握って小隊を数回往復して基地に運び墜落現場からドイツアルプスの元国境警備隊隊長ハンスお爺さんに衛星電話で連絡を入れる。
「ハンスお爺さん。これから言う座標に第三帝国が開発してお爺さんが隠し持っているスーパーガン【大陸弾道砲・戦艦などの撃ち出す砲弾を遠くまで撃つ。小さな砲弾なので撃ち落とす事はほぼ不可能】を何発か打ち込んで欲しいのBC兵器を焼き尽くす為に」
「BC兵器を焼き尽くすのか。この座標だとシリア国境近くだな数分で届くよ。焼夷弾を使う隠し持っているスーパーガン全砲で十数発で撃つから蜜ちゃんはそこから避難していてくれ」
衛星電話を切り数分後、上空にキラリと光る物が複数見えたのを確認して私は近くの暗闇からノースカロライナ州にあるフォース・リーコン部隊本部がある基地に移動した。
病院に運んだマイクさんは無事手術が終わり一命を取り止めた。
マイクさんのお父さんの海軍中将に衛星で戦闘機の墜落現場を確認して貰うと戦闘機は跡形も無く吹き飛びBC兵器も焼き尽くされ被害は無いそう。
ドイツアルプスのスーパーガンが問題になりそうだったけど違法な兵器を秘密裏に開発していてそれによる被害を食い止め破壊して貰ったのでスーパーガンは無かった事になるそう。

マイクさんが元気になり退院した後にフォース・リーコン部隊の本部に呼び出された私は大勢の兵士の前で白い儀礼様の軍服を着せられチョーカーに髑髏に羽根の付いたフォース・リーコン部隊のバッジを付けて貰っている所。
「蜜ちゃんのお陰でパイロットの命が救われ。大惨事を防ぎ機密も守れた。救助に向かったフォース・リーコン部隊をBC兵器のある現場から基地に運び命を救ってくれた。この功績を讃えて蜜ちゃんを特務曹長待遇の名誉隊員とする」

エーデルワイスのバッジの反対側に付いた髑髏のバッジを光らせ敬礼をしている私をモニターで見ながらト○ンプ大統領は黒い笑いを浮かべながら。
「しめしめ、偶然からだが蜜ちゃんを我陣営に取り込む事が出来たぞ緊急の時には蜜ちゃんを作戦に組み込み働いて貰おうか。フフフフ。なんせアメリカ軍の正規の特務曹長として登録したからな・・・」

ドイツアルプスではそんな思惑を感じハンスお爺さんがスーパーガンの照準をホワイ○ハウスに向け。
「蜜ちゃんはうちの名誉隊員なんだからな!!やらないからな!」
と叫ぶ声がアルプスに木霊こだましていた。

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