甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第43話

”forest story” f-s13

我が家は、女系が強く影の薄い僕は”隠遁いんとんの魔導師”と呼ばれている。
影が薄いのを利用して子供の頃から身を隠す術ばかりを身に付けた。
元々物陰に立っているだけで誰も僕を見つけられない。
祖母に寄ると僕みたいな闇に馴染む魔族がいるそうで酷い魔族になると家族からも存在を忘れられ居なくなっても誰も気が付かないレベルで影が薄い魔族がいるそうだけれども正に僕がそうだ。

母親でも僕の事を察知出来ずに朝からシチューを煮込んでいる脇で料理を見て居たのにシチューを食べる段になっても僕の座った椅子の前にシチューが置かれ無かった程だ。

蜜子姉さんが指摘してくれなければその夜僕は晩御飯にありつけ無かっただろう。

大人になった僕は、母親の師匠で僕達の祖先でもある徐福仙人の元で隠遁の術に磨きをかけ仙人でさえ察知出来ない程になり徐仙道家の裏側、情報組織を仕切る長になった。

この頃には純血魔族の祖母が僕の誕生日にケーキを焼きそのケーキにロウソクを立てて拝む位にしか家族からも存在を忘れられていた。

例外として蜜子姉さんの家に行き様子を見に行くと姉さんが僕のお茶や御飯を用意してくれたりした事だろう。

蜜子姉さんだけは僕を認識出来ているみたいで嬉しい。

この頃、蜜子姉さんの山小屋に真っ黒な甲斐犬の使い魔がやって来た。
この使い魔は、暗闇から暗闇に移動する能力があり姉の生活が向上している様で嬉しい。
何せ僕が姉の元にこの使い魔を届けたのだから。

この使い魔が来てから蜜子姉さんの身辺が慌しい。
先見の魔女である妹の予言書に関係した事が動き出したみたいだ。

しっかり姉の身辺を見護ることにしよう。

隠遁の術を極めた僕は影を飛ばし暗闇から相手をコッソリ監視する事が出来る。
そんな僕に気が付いた蜜子姉さんが僕の影が潜む暗闇に向かい。
蜜丸みつまる、そんな影で見てないで偶には家に遊びに来て姉さんとお茶でも飲みましょう」
と声をかけてくれた。

蜜子姉さんには敵わないな・・・。

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