甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第33話

私は、頭に金魚鉢みたいな物を被った重力兎を追いかけ月面の静かの海を疾走している。
甲斐犬は、猟犬で猪猟等で活躍し数匹の甲斐犬だけで猪を仕留めたりも出来る。
牙をニョキっと伸ばした私は野生を剥き出しで重力兎を仕留めにかかった。
疾る兎の首を後ろがらパクっと噛んで近くの岩陰に飛び込む、かぐや姫の住む月の宮殿地下の空いている倉庫の荷物の間の暗闇から飛び出すと咥えていた重力兎を首を振り倉庫の中に放り投げる。
そして荷物の間の暗闇に飛び込み静かの海の岩陰から飛び出し金魚鉢を被った重力兎を狩るを繰り返す。

二時間程狩をしたら30匹程の重力兎を倉庫に集める事が出来た。

月面にいた最後の重力兎を倉庫に放り込んだ後に倉庫の兎達に私は聞いた。
「これで全員?月面のクレーターに残っている兎は居ない?これから見つけた兎は、私の牙で首を引きちぎるるよ!!」
空気のある倉庫で頭の金魚鉢を取っていた年嵩の重力兎が。
「これで全員です。黒い悪魔様。どうかその牙を収めて下さいませ。何故私達は黒い悪魔様に狩られたのでしょう?」
「先見の魔女の予言書に月の兎が跳ねると地球に悪い事が起きるとあったので私は、貴方達を狩ったの。予言書には、明日の満月に兎が跳ねるとあったわ。明日の満月の晩に何か特別な事を考えていたの?」
「明日の満月の晩は、かぐや姫に対して労働条件改善の決起集会をやろうと計画していました」
「労働条件改善?かぐや姫が言うにはペットの重力兎がずいぶん昔に逃げ出し静かの海で増え過ぎて困っていたと聞いたけど?」
「やはり我々の事をまだペットと考えていましたか、かぐや姫は・・・ペットだったらこんな金魚鉢みたいな物を被って月面に出たりしませんよ。我々重力兎は金魚鉢型の宇宙服を着て月面の地震を重力兎の能力で封じていたのですが数百年かぐや姫から何の音沙汰も報酬も無いので明日の満月の晩に兎のダンスを踊り抗議の決起集会をする予定でした・・・」
「かぐや姫はペットだったしか言って無かったわよ?」
「おかしいですね?もしかして先代のかぐや姫からの記憶の引き継ぎが不十分だったのかも?我々重力兎が地震を封じる任務を始めたのが先代と今のかぐや姫が交代する直前だったと・・・今代のかぐや姫と直接話しを出来ないでしょうか?」

私はかぐや姫のいる地球の見えるドームの部屋に重力兎を連れて移動した。

私達を見たかぐや姫はキョトンとしている。
「どうしたの?重力兎は皆んな捕まえたの?」
私は、チャイナドレスの人の姿に変化して言った。
「かぐや姫様、どうも聞いていた話しと違うのですが・・・」
人の姿に変化した私に驚きながら脇に金魚鉢型宇宙服を抱えた重力兎がかぐや姫に問いただす。
「かぐや姫、我々重力兎は元はペットでしたが、重力を操作する能力を使い月面の地震を治める仕事を先代のかぐや姫から仰せつかり真面目に仕事をしていたのですが何の音沙汰も報酬も無いので明日の満月の晩にかぐや姫に抗議の決起集会をしようと計画していた所に黒い悪魔様が我々を捕まえて地下の倉庫へ」
「何それ?私は聞いて無いわよ?先代からの記憶の引き継ぎマシンにそんな情報入って無かったわよ?」
「やはりそうでしたか。抗議をしようとこちらの宮殿に来ても我々の認証コードが弾かれるのでおかしいと思っていましたが」
何だか双方に連絡上の齟齬があるみたいね。
かぐや姫、近くに浮かんでいる丸い玉に重力兎の事を尋ねる。
「ねえ、月詠つくよみ?重力兎が地震を治めているとデータにあったかしら?」
「いえ、ペットの重力兎が静かの海にいるしか記載が有りません。只今の話しを聞いていましたが先代からの記憶の引き継ぎが不十分だったかと思われます。先代は、体調不良の為に急遽地上に帰られたのでそれが原因かと」
コンピュータ端末月詠の報告を聞いたそこにいた全員はゲンナリした顔。
「倉庫にいる他の重力兎をここに呼んで来て」
かぐや姫は力無い声で言った。

「ごめんなさい。連絡ミスで重力兎さん達に仕事を押し付けたままで」
地下の倉庫から上がって来た重力兎に頭を下げているかぐや姫。
倉庫から上がって来る間に呼びに行ったコンピュータ端末の月詠から話しを聞いた約30匹の重力兎が疲れた顔でかぐや姫をみていた。
「先程エレベーターの中で先代との記憶の引き継ぎミスを聞きました。仕方ない事です。我々は数百年分の報酬として美味しいお菓子を要求します」
一番歳を取った重力兎がかぐや姫に要求した。
美味しいお菓子と聞いて私とかぐや姫は、テーブルに置いてある○の月と仙台駄菓子の箱を見る。
「また直ぐに買って来てあげるから今回は・・・」
かぐや姫の肩に手を置き私は言った。
「美味しいお菓子は、今こちらに用意が有ります。どうぞ召し上がり下さいな」
引き攣った笑顔のかぐや姫。
お茶の用意をしに飛んで行く端末の月詠。

展望ドームの広いソファーに腰掛けた重力兎の前に○の月と小皿に乗せた仙台駄菓子を置いて行く私とかぐや姫。

○の月と仙台駄菓子は丁度重力兎達の分で無くなり悲しそうなかぐや姫。
あんたさっき牛タン弁当二つ食べたでしょう?

お茶の乗ったワゴンを引き連れ月詠が帰ってきた。
お茶を配り兎さん達にどうぞ召し上がれと促す。
○の月と仙台駄菓子を食べる重力兎。
「この黄色いフワフワのお菓子は中のクリームとの相性が絶妙ですな」
「いやいや、この仙台駄菓子ですか?素朴な感じがとても良いですね」
気に入って貰えたみたいで良かったわ。
お菓子を食べ終えお茶を飲んだ重力兎さん達。
「こんなに美味しいお菓子ならば報酬として十分です。でもまた食べたくなりますな一度美味しい物を知ってしまうと。数百年前に食べたお菓子とは比べ物に成らないですよ。今頂いたお菓子は」
私はそれならばと先程かぐや姫に言った様に月に一度美味しい物をお届けしましょうか?と提案した所。
「何と!月に一度、世界の美味しい物を届けてくれると!皆の者、これから我々重力兎は黒い悪魔様にお仕えするぞ!皆の者黒い悪魔様に忠誠の礼を!」
30匹の重力兎さんが立ち上がり私に礼をする。

ポカンとして見ているとかぐや姫。
「わ、私も蜜さんに御礼をしなきゃ。月詠!地下の倉庫から月の雫を持って来て」
端末の月詠がエレベーターに飛んで行く。

テーブルに置かれた月の雫は雫の型をした透明な宝石で滅多に取れない物だそう。
月の魔力を蓄えていて魔法薬を作る触媒に最適だとか黒蜜おばばが喜びそう。

月に一度美味しい物を届けるに当たり連絡はどうしようか?と聞くとやはり地獄と同じ魔鏡で伝えるとの事。

最後に重力兎さんニヤリと笑いながら。
「もし、何か有りましたら魔鏡で連絡して下さい。地球のご指定の場所に月から隕石を落とし攻撃致します」
中々物騒な話しになって来たわね。

近日中に○の月と仙台駄菓子を買ってまた来るとかぐや姫に告げて買い物籠を持って私はソファーセットの下にある暗闇に紛れ込んだ。

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