甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第17話

飛んで来た薬瓶を余裕で受け止めた人郎じんろう
「横浜の魔女、浮かれてた。ゴメン。今まで苦労を掛けたね。いつも辛そうに毒を処方する貴女を見ててなんでこんな身体に産まれたんだろうと、薬を処方する優しい貴女に辛い思いをさせて仕舞って済まないと思いながらも何も言えなかった」
「私こそ、力が足りずちゃんとした薬を飲ませてやれず辛そうにしている人郎を見ていて済まないと思っていた。今まで済まなかったね」

「ありがとう。産まれた時から僕を見守ってくれている。もう一人お母さん」
人郎が横浜の魔女を抱き締めながら言った。

「お母様・ならば・失礼・御挨拶・します」
蜜が横浜の魔女に頭を下げると。
「私なんかより先に本当のご両親と人郎君の曽祖父の長老さんや一族の方々に挨拶を先にしなさい」

蜜の身体を年配の夫婦にむけさせる。

背筋を伸ばしお辞儀をしながら。
「黒曜の蜜・です・よろしく・お願い・します」

人郎の母親が蜜の手を取り。
「こちらこそよろしくお願いね。蜜さん、諦めていた後継をやっと見れるわ。時に人間の年に換算するとお幾つになるのかしら?」

「この前・成犬・人間・16歳・地獄・使者・このまま・死ねない」

人郎の母親に横浜の魔女が蜜の手や顔を触りながら。
「永遠の16歳!この肌艶ハリ!あの言い方ですとケガしても自動的に修復どころか欠損しても再生されますよ!奥様?」
「何それ!何があってもこの可愛い状態に戻るの?
羨ましい〜。そんな娘が嫁に来てくれたなんて人郎君。尻に敷かれるの確定〜!護衛の影鬼さんだけでも勝てそうに無いのに!あの鬼さんだけで国を滅ぼせるわよきっと」
「奥様、蜜さん浮気したら地獄の魔王達を引き連れて地上を地獄すると言ってましたが夫婦喧嘩だけできっと日本が滅びますよきっと」
人郎の母親と横浜の魔女の会話を聞いて人狼一族は人郎君に決して蜜ちゃんと喧嘩はするなと言い含めようと誓うのだった。

「僕が蜜ちゃんと夫婦喧嘩?する訳無いよ。先に袂に居る角達に言われたけれど僕は永遠に蜜ちゃんの愛の下僕さ!」
とキメ顔で言う人郎、それを見て蜜は嬉しそう。

まあ大丈夫かと思う皆。

そこで買い物籠が震える。
震える籠を横浜の魔女が手に取り耳に当て会話を始めた。
何度か頷き眼を剥き。
「そんな事が可能かも?魔法薬の開発を手伝って欲しいと黒蜜おばばが・・・」
籠をテーブルに置いて人郎に向かって。
「そこにある”特人化促進薬”を飲み続け蜜の近くにいて腕輪の魔力を浴びて居る限り人郎君もほぼ今の姿を保ち続けるだろうと黒蜜おばばが言ってるみたいだね。蜜ちゃんに薬を持たせる時に籠の持ち手を持った黒蜜おばばと会話したそうだ。それとある薬を私と共同研究したいらしい」
手を顎に持って行き何か思案すると。

「今の蜜ちゃんなら人を連れて黒蜜おばば所へ移動する事が出来ないかい?今回の事も話したいし。もしくは黒蜜おばばをここに連れて来るか・・・」

パッと笑顔になった蜜。
「黒蜜おばば・連れて・くる・試し・ます」
言うが早いか買い物籠を手に取りカーテンの裏に消え去った。

それを見た人狼一族の長で人郎の父親や一族の皆が。
「何とも嵐の様な娘さんだな。だが人郎、改めておめでとう」
「人郎君、おめでとう」
「浴衣の日本美人羨ましい」
「リア充爆発しろ!」
など言葉を受けていた。

そんな中、人郎の曽祖父で長老のいわおが今までの沈黙を破り発言する。
「ワシは、純血の日本狼以外、断じて認めん!そもそも甲斐犬の雌何ぞと何たる事か!!」
その場にいた全員が老人を睨む。

「しかしじゃ!あの蜜ちゃんの可愛いさたるやこの世の者とは思えん!そしてあの黒い魔力、下僕の影鬼達!浮気したらこの世を地獄するとサラリと言う度胸!あんな娘さんが嫁だなんて羨ましいぞ〜人郎!ワシと代わってくれ!」

それを聞いた他の者達、黒蜜おばばと蜜を迎え入れる準備を始めに長老を引きずりながら部屋を出て行く。

「この薬を改良して若い姿になれる”若返り人化促進薬”を共同で開発ましょうだなんて黒蜜おばば凄い事を思いつく物だねぇ〜ヒッヒッヒ」
やはり真っ黒い笑顔の横浜の魔女が薬瓶を手に持ち部屋で独り笑っていた。

          

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く