甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第16話

これは少し後の短いお話。

冬の京都。

左京区の高級料亭近くにある老舗豆腐店へ続く狭い路地。

朝露に濡れた石畳の上。

タッタッタと大人の犬二匹の足音の後に続き。
テッテッテと仔犬の足音が二匹続く。

時折買い物籠を咥えた真っ黒な甲斐犬が立ち止まり後ろを振り向く。
もう一匹の大人の犬は白毛に薄墨を流した様な柄で見る人が見れば解る絶滅した筈の日本狼。

二匹の仔犬の内女の子が母親に似て真っ黒で甲斐犬に良く似ている。
もう一匹の男の子の方は墨色がもっと濃く日本狼に良く似ている。

老舗豆腐店の軒先に着いた四匹が買い物籠を咥えた甲斐犬を先頭に一列になってチョコンと座る。

豆腐店のご主人がニコニコしながらその光景を見ていた。

「いつもの出来立ての温かい豆乳かい?仔犬の成長に持ってこいだからな。もう少し大きくなったらチビ達だけで”初めてのお使い”が出来そうだね蜜ちゃん」

老舗豆腐店のご主人が蜜の口から買い物籠を優しく外しながら言った。

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