甲斐犬黒蜜のお使い〜もう一つの物語

牛耳

第15話

やって来ました埼玉県秩父の三峰神社、ここは狼さんが眷属の関東圏一番のパワースポットなのよ!

参拝するのが一番の目的だけれども私が楽しみにしてるのは、三ツ鳥居近くにある食堂の『わらじソースカツ丼』がお目当てなの。
鳥居の両脇には、狛犬さんや狐さんで無く狼さんがいるわね。
独特な形の三ツ鳥居を潜る前に買い物籠を置いて石の狼さん達に『こんにちわ』とお辞儀してっと。

お土産物屋さんも兼ねた食堂のレジでお金を先に払い食券をテーブルの上に置いて待つ形式。
数年前にテレビCMで女優さんが食べてた『わらじソースカツ丼』はこのお店の名物。
あら?コンニャクの味噌おでんも惹かれるわねー。
味噌おでんも食べちゃおうっと!
本当は、無理だけど特別に『わらじカツ丼』を2個と味噌おでん1個をお持ち帰りさせて貰うので味噌おでん2個と『わらじソースカツ丼』3個のお金を払って窓側席に座って小さなアルミのヤカンのお茶を飲みながら待つこと数分。
カツが丼からはみ出した『わらじソースカツ丼』と味噌おでんが私の目の前に運ばれて来た〜!
「はぁ〜、ソースが良い匂い〜。頂きま〜す!」
丼の蓋を取って二枚乗ってる薄めのカツを一枚蓋に乗っけてっと。
ハグハグハグとカツを食べご飯をガッガッと掻き込む。
「ん〜、濃い目のソースが染みてて良いわぁ」
「コリコリコリ」小鉢のタクワンとお新香もお手製で、中々良い味。
お味噌汁も美味しい。
おっと、味噌おでんを食べてっと。
歯応えのあるコンニャクと甘めの味噌が合うわ〜。
景色も最高に良いし幸せ。

一枚目のカツを食べ終わって丼の蓋に乗っけたカツをパクリ!
ふふふ二枚目のカツも味が染みてて美味しいわぁ。
ソースのお味、何となく和風な感じなのよねー。
真似の出来ない美味しさ的な。
全部を食べ終わってお口の周りをペロペロっと舐めてカツのソースの余韻を味わいお茶のお代わりを貰ってゆっくりしてたたらお持ち帰りの『わらじソースカツ丼』と味噌おでんを持って来てくれた。(実際は無いと思います)
それらを買い物籠に入れて参拝に行きますか。

参道のあちこちに苔生した石造りの狼さん達がいる。
私は、そんな狼さん達に出会うと買い物籠を置いて「こんにちは」とお辞儀していく。
参道をかなり上がった所に三峰神社の本殿がある場所を拝める開けた場所がある。
三っの峰が交わる場所なのかしら・・・
清々しい雰囲気・・・

暫し、呆然と眺めてしまう。

そして気がつくとすぐ近くに白っぽい毛並みの中型犬さんがいつの間にか座ってた。
「こんにちは、私は蜜です。お参りと『ソースカツ丼』を買うお使いに来ました。地元の方ですか?」
と問うと白っぽい毛並みの犬さん。
「蜜ちゃんと言うのか貴女は、儂は真っ黒な甲斐犬の使い魔が来ていると三ツ鳥居を見張る若い者から報告があってどんなものかと見に来た暇な年寄りじゃよ。その買い物籠の中のは『わらじソースカツ丼』か、良い匂いがするのぉ。神社が経営する店の物なら自由に儂も食えるが、参道にある店は個人の経営で別なんで勝手に食えんのじゃ。女優さんがCMで美味そうに食べてて気になってたんじゃ」
お鼻をクンクンさせたお爺さんをみていたら私は、自然にこんな言葉を言っていた。
「お爺さん、私はさっき食べたからお使いの『わらじソースカツ丼』1個食べて良いですよ。この匂い嗅いだら我慢出来ないですもんね」
すると白っぽいお爺さん。
「えっ?良いのかい?蜜ちゃんの分じゃろ?」
「大丈夫、コレ晩御飯でなくちょっと小腹が空いたから買って来てと言われたやつだから一つで充分なの」
私がそう言うとお爺さんニッコリ笑って
「じゃあ、頂こうかな。代わりに蜜ちゃんが参拝した後に社殿脇にある温泉に入って貰ってその後に甘味処で1日20個限定のコーヒーゼリーを食べさせてあげよう」

温泉にコーヒーゼリーと聞いて私は、ニコニコ笑顔でお爺さん犬の前に『わらじソースカツ丼』を出した。

蓋をパカッと開けたお爺さん犬。
「うーむ、美味そうじゃ。では、頂きます」
そう言うとカツに豪快にパクッと噛み付きモグモグモグ。
「ソースの味が良いのぉ」
そしてご飯とカツをパクパク。
「ご飯と一緒に食べるとまた格別に美味しい!」
とっても美味しそうに食べるので、味噌おでんも一本サービスしちゃう。
味噌おでんを見たお爺さんコレも良いの?とビックリしてる。

「どうぞ、これも食べて」
と勧めるとニッコリしてパクッと味噌おでんを食べたお爺さん。
「美味いのぉ、味噌おでんまで食べれるとは思わなんだ。ありがとう、蜜ちゃん。帰りにお土産もあげようかの。楽しみにしておくれ」

『わらじソースカツ丼』を食べ終わったお爺さん犬も私と同じ様にお口の周りをペロペロ舐めて、ソースの余韻を楽しんでるわ(笑)やっちゃうわよねぇーペロペロ。

お爺さん犬がペロペロを終え落ち着くのを、ゆっくり待つ。

「ふぅ〜、蜜ちゃんごちそう様。じゃあお参りを済ませようか」

容器を買い物籠に仕舞った私は、お爺さん犬を先頭に参道を上がった。
社殿の少し手前の御神木に前脚でピョコンと触れて「こんにちは」と挨拶して社殿へ。
買い物籠の中から私のお小遣いが入っている可愛い缶から小銭を出して御賽銭箱へカランコロン。
お辞儀して、本来ならパンパンとやるのだけど肉球じゃ出来ないからまたお辞儀して。
あら?御賽銭箱の近くの敷石に『龍』さんが居るわね。
こちらにも「こんにちは」とお辞儀して。
少し離れた場所に居たお爺さん犬。
「こっちに温泉があるからね」
お爺さん犬に付いて行く途中で
「温泉から上がったらここに来て、コーヒーゼリー食べれるから」
と喫茶店を教えてくれる。

宿泊施設のカウンターでハンドタオルとバスタオルを貰って温泉へ。
(本来なら入浴600円)
ここの温泉は、ph8.4の弱アルカリ性で美肌効果ですって!
(その他、慢性消化器病、慢性婦人病、神経痛、疲労回復、アレルギー性呼吸器疾患、きりきず、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症、関節痛、筋肉痛、軽症高血圧、軽い高コレステロール血症、軽い喘息、自律神経不安定症、睡眠障害など)
嬉しいわ〜。
ちゃんと身体を洗ってと。
タオルを頭に乗せて温泉にチャポン。
「ううっ、芯から温まるう〜」
思わず声が出ちゃう。
はぁ〜、良いお湯。
充分浸かって脱衣場に出る前にプルプルと水気を飛ばすと美肌効果か水捌けがとても良いわ。
脱衣場でバスタオルを床に敷いてその上をゴロゴロ。
あー、身体が暖かいわ。

バスタオルは、返却してハンドタオルは持ち帰って良いですって名前入りのハンドタオルがお土産になって良かったわ。
(ハンドタオル100円、バスタオル200円)

さあ!次はコーヒーゼリーの番よ!張り切って行きましょう!

喫茶店に入って席に着くと生クリームが乗ったコーヒーゼリーがやってきた!
「頂きま〜す」
とお辞儀してゼリーをパクリ。
ほろ苦い感じで絶品のコーヒーゼリーと甘め控え目の生クリームの相性バッチリ!
シロップもあるけど私は、要らないかな?
お茶を飲んで、ゆっくりしてるとお爺さん犬がお店の外でニコニコしてる。
私はお店の人に「ごちそう様でした」とお辞儀してお爺さんの前に行く。

「お爺さん、温泉とっても良かったです。身体がまだポカポカ。それとコーヒーゼリーも美味しかった。ありがとうございます」
「いや、蜜ちゃんこそ優しい気持ちで『わらじソースカツ丼』や味噌おでんを食べさせてくれてありがとう。お土産をあげるからこちらに来て」
お土産が売っている建物に入ると狼さんの写真などが掛けてある。
その中で一際目を惹くのは、実物大のシベリアンハスキーの縫いぐるみ・・・私より一回り大きい・・・
「蜜ちゃん、日本にはもう本物の狼はいないから狼によく似たこの縫いぐるみをあげよう。儂達、日本狼の霊魂の代わりにこの縫いぐるみを見て、お家で儂らの事を思い出しておくれ」
お爺さん、犬じゃなくて狼さんだったのかぁ、ちょっと違うと思ってたのよね。
お爺さんが言ってた三ツ鳥居を見張ってる若いのって鳥居両脇に居た狼さんの石像のことね?
お爺さんは、この神社の眷属の狼さんの化身?
私、偉い狼さんに失礼しちゃった見たい。
「お爺さん、ごめんなさい。神社の偉い狼さんに生意気な口をきいたり失礼な態度を取って」
と頭を下げる。

「良いんじゃよそんなに畏まらなくても。それにこれは、美味しい『わらじソースカツ丼を惜しげもなく食べさせてくれたお礼じゃよ」
私は、自分より大きい縫いぐるみの横に座って鳥居脇の狼さんになったみたいだなぁと思って「ふふふ、石像の狛狼さんになったみたい」と言った後に狛狼がやっている阿吽ポーズを真似して、お口を閉じた縫いぐるみの対になる様にパカッと私はお口を開けニコリと笑った。

          

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