甲斐犬黒蜜のお使い〜もう一つの物語

牛耳

第14話

「そこの買い物籠を咥えたお嬢さん、一緒に高○フルーツバーの食べ放題に行かないかい?勿論奢るよ。女性同伴じゃあ無きゃ男性は一人じゃ入れないんだ。一緒に行ってくれる筈の人が急用で来れなくなってね。予約の時間がもうすぐなんだよ」
新宿駅西口近くの紀伊○屋書店で黒蜜おばばに頼まれたダイエット本を買った後にアルタ前を歩いていると、見知らぬ男の人に声を掛けられた。
高○フルーツバーの食べ放題と言う言葉に釣られて『ピタ』っと立ち止まってしまう私。
声のした方を振り向くとフリースにジーンズ、スニーカーとラフな格好の眼鏡と立派なお髭のニコニコ笑顔をした中年のおじさん。
「おっ、お嬢さん。一緒に行ってくれるかね?フルーツだけで無くパスタやオムレツにケーキやピラフとこれでもか!と言うほど色々あるよ。フルーツサンドなんか絶品だ!マスクメロンは普通では中々食べれない最高級のがあるんだよ」
私は、おじさんの言葉を聞いていてヨダレがダバダバ出そうになって何度も喉をゴックンと鳴らせた。
そんな私の様子見て口に咥えた買い物籠さんから
『も〜、仕方ないわね。本来なら知らない男の人にホイホイ付いていっちゃダメだけど、【この】おじさんなら私が知ってる人だから良いわよ蜜ちゃん。それに、このままじゃヨダレ止まらないものね』
買い物籠さんの許しを得た私は、ブンブンと首を縦に振った。
予約してあると開店15分前に入店出来るそうなので私達は、急いでビル5階にある高○フルーツバーに入った。
冷蔵ケースに色とりどりのフルーツが所狭しと並んでる。
うわぁ〜、これ全部食べ放題なの?
予約した人のみに許される殆ど人が居ない店内でお皿にフルーツを盛り込んだ。
テーブルでシャクシャクとマスクメロンを食べていると髭と眼鏡のおじさんが出来立てのオムレツとフルーツサンドを持って物凄く嬉しそうな笑顔でやって来た。
ケチャップとデミソースのオムレツ、『旨んま〜い!』出来立てフワフワトロトロ〜!
フルーツサンドも甘さ控え目で良いわ〜。
私、こんなに幸せで良いのかしら?
テーブルのお向かいに座ってるおじさんもニッコニッコの笑顔で言葉を発する時間を惜しんで食べているわ。
それから私達は、苺にミカン、キウイ、etc様々なフルーツを食べ、季節のスープにサーモンのピラフ、トマトとバジルのパスタをモリモリ食べ、チキンの香草焼きを堪能しショートケーキとモンブランを食べてまたフルーツを食べてクラブハウスサンドをパクパク食べてジェラートにマスクメロンと怒涛の勢いで食べまくる!
あっ!おじさんったら又、オムレツを作って貰ってる!
嬉しそうなお顔してるわねぇ、まったく。
オムレツ食べて、紅茶を飲んで一息付いたら時間は、後30分。
おじさんと私は、アイコンタクトして頷き合う。
さあ、もう一周食べまくるわよ!
時間ギリギリ、最後にマスクメロンをパクリと食べて終了。
ふう〜、食べたわ〜。
向かいに座ってるおじさんも少し惚けた顔で天井を見上げてる。
その後、会計を済ませたおじさん。
「ちょっとお土産を買うから地下一階に付き合って」
私達は、地下一階にあるフルーツギフトコーナーへ。

マスクメロンを2個買ったおじさん。
出会ったのと同じアルタ前に来ると
「一個は、【向こう】の蜜子に一個は【コチラ】の蜜子に」
とマスクメロンを1個買い物籠に入れてくれた。
ビックリして買い物籠の中のマスクメロンを見た後に顔を上げおじさんを探すが見つからない。
煙の様に消えてしまった!
しばらく探したけれども見つからない。
仕方無く私は、黒蜜おばばの家に帰った。

私が咥えた買い物籠の中のマスクメロンを見た黒蜜おばば、何かを思い出したらしい。
「遠い昔、私はこれと同じ包装紙に包まれたマスクメロンを食べた事がある・・・あのクソ親父、時間旅行を可能にする魔道具の開発に成功していたのか!!」

『ねっ?知ってる人だから蜜ちゃんがフルーツ食べ放題に付いて行くのを許したのよ』
と買い物籠さんが私に言った。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品