甲斐犬黒蜜のお使い〜もう一つの物語

牛耳

第10話

井の頭公園近くのお店に焼き鳥を買いに行く途中の小道。
「あっ!私の大好きなチ○ルチョコ きな粉餅が道の真ん中に落ちてる!誰か落としたのかしら?ダメよねーこんな美味しい物を」
私は買い物籠を置きチ○ルチョコを咥えて買い物籠の中にコロっと入れる。
買い物籠を咥え直し歩こうとすると咥えた買い物籠から『スキャンの結果、毒性無し食べても大丈夫』と声が聞こえる。
良かった、この頃危ない事する人がいるからおちおち拾い食いも出来ないわ全く。
しばらく歩くとまたチ○ルチョコのきな粉餅が!
私は、ホクホク笑顔で拾って買い物籠にポロリと入れる。
そして小道を進むとまたチロ○チョコが、そうこうするうちにだんだん目的地から離れて狭い場所へ・・・

「あっ!チ○ルチョコのきな粉餅がこんもりと何個も小山みたいに盛ってある!」
『あっ!蜜ちゃん気を付けて!』
と咥えた買い物籠から声が聞こえたけれども私は、一目散にチ○ルチョコの小山に駆け寄る。
次の瞬間
【バサバサバサ!!】
と言う音がして私は暗闇に包まれた。

暗闇の外から声が聞こえる。
「チ○ルチョコに釣られた使い魔が見事に罠に引っかかったぞ、早くご主人の元に連れて行って魔法を掛けて貰おう。今度こそ、今度こそ、あの子の・・・」

えっ?私、罠に引っかかったの?どうしよう買い物籠さん?
咥えた買い物籠に問いかけると以外な答えが
『多分、大丈夫よ。それに蜜ちゃんなら暗闇が有れば移動出来るんだから心配無いわよ。それにこのまま連れて行かれたら別の種類のチ○ルチョコも貰えるかもよ?』
言われて見ればそうよねー、このまま連れて行かれてみようかしら。

しばらく暗闇の中でジッとしていたら突然明るい光が
「ふふふ、どんな使い魔が捕まったのかしら?楽しみねぇ〜。ん?こ、この買い物籠と首輪の古銭は!!く、黒蜜おばばの使い魔〜〜!!何て物を捕まえて来たんだいお前は〜!!」
光に慣れて声のする方を見てみると黒髪ロングに真っ黒なゴスロリ服の可愛い女の子が黒猫の使い魔さんの首を絞めながら叫んでる。

私は何をやってるのかなぁ?って首を傾げながら見てるとゴスロリの女の子が黒猫さんの使い魔を放り投げて
「ま、まま、真っ黒な使い魔さん、貴女は黒蜜おばばの新しい使い魔ね?それと買い物籠さんもお久しぶり元気そうでなによりね」
ん?この女の子、黒蜜おばばの知り合いみたいね。
私は女の子に『こんにちは、私は蜜』と声を飛ばしてからチョコンとお辞儀をする。
私の声を受け取った女の子は引きつりながら笑って
「み、み、みっ、蜜ちゃんと言うのね貴女、私は毒草の魔女。黒蜜おばばの弟子だったのよその昔。よ、宜しくね」

『まだ諦められないで馬鹿な事をやってるのね。鈴蘭すずらんちゃんたら・・・蜜ちゃん私を毒草の魔女、鈴蘭ちゃんに渡して』
買い物籠さんが目の前の毒草の魔女に自分を渡してと伝えて来たので私は買い物籠をクイっと突き出した。
「あ、はははは、か買い物籠さん。わ、私は、何も悪いことして無いわよ?ただ適合する使い魔かの確認を・・・いや、黒蜜おばばに言わないでね?お願いだから」
オドオドしながら買い物籠を受け取り耳に当てる毒草の魔女さん。

「えっ?蜜ちゃんには、罠に引っかかったけれども別の種類のチ○ルチョコが貰えるかもしれないから逃げ出さないでいましょうと言ってあるから珍しいチ○ルチョコをくれたら黒蜜おばばには黙っててくれる?わ、分かったわ!珍しいチ○ルチョコあげるから黒蜜おばばには黙ってて〜蜜ちゃん、買い物籠さん!」

それから鈴蘭さんに数種類の珍しい味のチ○ルチョコを買い物籠に入れて貰って井の頭公園近くの焼き鳥屋さんで焼き鳥を買って黒蜜おばばの家に帰った私と買い物籠さん。

買い物籠から焼き鳥を取り出した黒蜜おばば買い物籠の中を覗き込み数秒黙り込む。
しかし直ぐに笑顔になって
「焼き鳥美味しそうだねぇ〜蜜、焼き鳥丼にして食べようか」
焼き鳥丼を食べた後に私は買い物籠からお汁粉味のチ○ルチョコ出して黒蜜おばばの前にチョコンと置いた。
それを見た黒蜜おばば。
「あの可哀想な鈴蘭は、まだ不毛な実験を続けているんだね・・・死んだ者はもう還って来ないのにねぇ・・・」

お汁粉味のチ○ルチョコを見つめながらホロリと涙を流した黒蜜おばば。

私は大丈夫?と首を傾げながら黒蜜おばばの顔を覗き込む。

「買い物籠にお前の大好きなきな粉餅のチ○ルチョコが沢山と珍しい味のチ○ルチョコが入っていたね。毒草の魔女、鈴蘭の罠に引っかかったね、蜜?あの子はね幼くして亡くなった妹の魂を呼び起こして憑代に最適な使い魔に定着させて黄泉返らせ《よみがえ》ようとしてるんだよ。チ○ルチョコが大好きだった妹に似た波長の使い魔を探すのにチ○ルチョコを餌に使って・・・鈴蘭は死んだ妹に一言謝りたくてやってるんだろうけれどもね。鈴蘭が作った毒の容器が大地震で割れてそれを吸って死んでしまった妹に。崩れた家の瓦礫の下から出て来た妹さんは、柱に押し潰されて即死の状態で助けも来ずに苦しむ所だったらしいんだよでもね、鈴蘭の毒で痛みを感じずに眠る様に死ねて良かったんだけど鈴蘭は妹の死を自分のせいだと悔やんでね」

可哀想な話しね・・・

その夜、黒蜜おばばが眠ったのを確認した私はコッソリと鈴蘭さんのベッドの下の暗闇に移動し、サイドテーブルにメモ用紙を置いて直ぐにベッド下の暗闇に紛れて自分の寝床へ戻った。

数日後、吉祥寺商店街で買い物をしていた所で鈴蘭さんの黒猫の使い魔さんに出会った。

「蜜ちゃん、すまなかったねこの前は罠に引っかけて連れて行ったりして。それとあのメモ、本当にありがとう。鈴蘭さんも何だか憑き物が落ちたみたいに優しい顔になって・・・感謝しても仕切れないよ」
涙を溜めて喋る黒猫さん。
「私は、何も知らない」と言うと。
「そうだよね。蜜ちゃんは何も知らないだよね。でもありがとう」
と笑って立ち去る黒猫さん。

私がやったのはあの夜、メモ用紙に口に咥えたクレヨンを使い下手な字で
『おねえちゃん もうなかないで ありがとう』
と書いたメモを置いて来た、ただそれだけ。



          

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