悲喜交々
死んだら君に
君はひといちばい笑う人だった。
そして、、、ひといちばい体が弱かった。
俺の名前は安元涼太。
どこにでもいる平凡な高校生だ。
自慢じゃないが俺には彼女がいる。
優しくて可愛い最高の彼女が…。
『ピンポーン』
「あら安元くんじゃない、入って入って」
「ああ、どうも」
ドアを開けてくれたのは彼女のお母さんだ。
幸いなことにおばさんは、俺と彼女の仲を認めていてくれていて、とても応援してくれている。
「えっと今お茶持ってくるからね」
「大丈夫ですよ、俺すぐ帰るんで」
「そうなの、ゆっくりしていけばいいのに」
そう言とおばさんは、あの子ならいつもの部屋で待ってるからと優しく言ってくれた。
「あ、はい」
俺は階段を上る。
そして扉をゆっくりと開けた。
「あ、いらっしゃい」
ベッドから体を起こし、その子は言った。
彼女の名前は山本 菜々美。
おれと同じ歳でおなじ高校に通っている。
「課題のプリント持ってきた」
「うぇー、こんなにあるのぉ」
君は眉に皺を寄せ、プリントを拒んだ。
「まぁ分かんなかったらおれが教えてやっから」
「私より点数低いくせによくそんなこと言える
ね」
痛いところをつかれたおれは顔を赤くする。
「うるせぇよ、やっぱり教えないからいいよ」
「なになに〜?もしかしてちょっと怒っちゃった?」
「はぁ?怒ってねぇし!」
俺の反応を見て菜々美はケラケラと笑う。
少しの沈黙。
「ねぇねぇ」
君が静かに呟いた。
「死神って信じる?」
「え?」
突拍子のない質問に困惑するおれに対して、君は優しく笑った。
その時の顔は、どこか寂しそで悲しそう。
君の初めて見る顔におれは更に困惑する。
「私死ぬみたいなの」
それは突然君が発した言葉だった。
「は?」
「さっきね、死神が来たの」
全く理解できない。
「黒い服の男の子がね、、その子が伝えに来てくれた」
それでも君は話をすすめる。
「ちょ、ちょっと待って」
俺は話を中断させた。
「死ぬってなんだよ、死神?男の子?全然意味わかんないって」
「そうだよね、いきなりそんな事言われても
困っちゃうよね」
「死神がほんとに来たの?」
「うん」
「なにで死ぬって?」
「それはわからない」
再び訪れた沈黙の後、
「だからね、私が死んだら私たち別れよ」
君は優しく呟いた。
「は?」
「でも死ぬまでは付き合っててほしいかなぁ、これは私の最後の願いってことで、りょうくんに拒否権なんかないからね」
君はニコニコといつもと同じように話している。
「いや、勝手に話進めんなよ…全然意味わかんないって」
何も理解できない俺を置いて、君は『パン』と手を叩く。
「ってことで!この話は終わりね!」
「は?」
「明日って土曜授業の日だっけ?1時限目は確か数学だよね」
ちがう。
「てか2時間連続で数学じゃん!しんどくなりそうだねぇ、りょうくん居眠りしちゃだめだよ?また怒られちゃうから、、」
そんな話はどうでもいいだろ。
「あ!そうだ、りょうくんに言っときたいことがもう1つあったんだ、私が死んでも……」
「だから!!」
俺は怒鳴った。
君はビクリと肩をはね上げて、上がった肩を下げず、ゆっくり下を向いた。
「1人で話進めんなよ!もうすぐ死ぬとか死神とか、訳わかんねぇって!」
「うん」
「俺は信じないからな!絶対!」
「うん」
ただ頷くだけで、君はなにも言ってくれない。
「本当になにも言ってくれないんだな」
「うん…」
「もういい、帰る」
君の視線を背中で感じながら、おれは部屋を飛び出した。
それから数日後、君は本当に死んだ。
死因は心不全による瞬間死だった。
君とはあの日以降話さなかった。
俺は最低だ。
最後の最後まで君の側にいなかった。
俺は知ってたんだ、君が本当は弱いことも、無理して笑うことも、俺がついていないとだめな事も、、、
俺が大きな声を出した時、涙を溜めたいた事も…。
それから俺はバイトを辞めて、学校に行かなくなった。
君に見せないノートを書いても意味がない。
あの日、君は俺になんて言おうとしていたんだろう。
そのことばっかり考えてしまう。
そして、君が死んでから1年後
俺は自分が住んでいるマンションの屋上に立っていた。
こんなに高いのに不思議と怖くない。
ああ、もうすぐ君に会える。
あいつは俺が付いてないとすぐ泣くんだ。
俺が面倒みてやらないと、、
あいつに会ったらなに話そうかな、、、
そして俺はコンクリートの上で汚く散った。
ここはどこだ?
真っ暗で何も見えない。
すると暗闇の奥から足音が聞こえてくる。
足音俺の方に向かって大きくなってゆく。
奥から現れたのは、燕尾服を着た少年だった。
「突然ですが、あなたは死にました。」
少年は俺の顔を見ると、笑顔で言った。
「お前は、死神か?」
「え!?なぜ分かったんです?」
少年のような死神は目を丸くさせ、ジタバタと手を忙しなく動かした。
「お前、おれの彼女にあってるだろ」
「あなたの彼女さん?ん〜今まで数え切れないほどの女性に会ってきましたからねぇ、ちょっと覚えてないかな???」
死神は人差し指を下唇に置き眉間にシワを寄せて、左右に揺れている。
「そんなことより彼女はどこなんだ」
「まぁまぁそんなに早まらないでくだいな、とりあえず案内しますね」
死神とひたすら暗い道を歩き続ける。
「おい、いつまで歩くんだ?」
「あともう少しです」
「それ、8回くらい聞いたんだけど」
「まぁまぁ」
すると周りが徐々に明るくなってきた。
気づけば地面は芝生になっていて、なんとも心地の良い空間になっていた。
その空間には、白い霧が薄らとかかっており、ひたすら平らな芝生に沢山の人が真っ白な空を眺めていたり、芝生に寝そべっていたり、男女で楽しそうに話していたりと、各々好きなことをしている。
みんな幸せそうな顔だ。
「ここは天国か?」
「あっははは、そんな訳ないじゃないですかぁ」
死神は笑った。
「じゃあ、地獄なのか?」
「だーかーらー、そういうのないんですって」
「え?」
「天国とか地獄ってのは人間が勝手に作り出した妄想世界であって、実際はいい事をした人も、悪いことをした人もみーんな一緒になるんですよ」
「それじゃあ、神様もいないのか」
「まぁ神様っていうか、この世界を作った創造主様は居ますけどね」
「それはどんな…」
「いやーそれがね、僕も見たことないんですよぉ」
死神は楽しそうに下唇に人差し指を置いて左右に揺れている。
「これからあなたはここで今まで通り、生きてもらいます。」
死神は急に真面目な顔で話す。
「生きる?俺は死んだんじゃないのか?」
「それは''あっち''の世界の寿命であって、''こっち''の世界の寿命はまだ尽きてないですからね」
死神は自慢げに話した。
「そーれーにー、あなたは自殺しちゃってるから、あっちとこっちの2つの寿命を足されてるわけでー、、、なんかややこしいっすね」
「ただ、ここで生きればいいのか?」
「そーです!」
「それだけ?」
「はい!」
ここで俺は1番聞きたかった質問をした。
「彼女はどこにいるんだ?」
「えーっとぉ、その前になぜ彼女にこだわるのか伺ってもいいですか?」
「謝りたい、そしてあの日なんて言おうとしてたのかを聞きたい。」
「あの…言い忘れてたんですけど、ここって、、、」
「どうでもいい」
「うーん、まぁいいですけど、、、おすすめはしませんよ?」
 
「いいから会わせろ」
「はぁ…名前は?」
死神はしょうがなさそうに言った。
「山本 菜々美だ」
「ヤマモト、やまもと、山本……あ!」
その後死神は「ついてきて」と俺の袖を引いた。
俺の胸は高鳴った。
やっと会える。
やっと君に謝れる。
俺がいないとすぐあいつは泣くんだ。
きっと君は寂しんでるだろう。
死神に引かれ歩いてゆく。
「多分ここにいますね」
しばらく歩いた後死神が言った。
相変わらず景色は変わっていない。
少し当たりを見渡すと、体に強い衝撃が走り、手先が痺れた。
いた。
君の後ろ姿が見える。
じんわりと汗ばんできているのを感じる。
高鳴る心臓、、、
やっとだ、やっと君に会えた、、、
彼女に駆け寄ろうとしたその時、死神が俺の手首を掴んだ。
「なにをされるおつもりですか?」
「なにって、会いに行くだよ」
しかし、死神は俺の手首を強く握って離さない。
「そんことしても悲しくなるだけですよ?」
「は?何言ってるんだ、いいから離せ!!」
俺は死神の手を振り払って彼女に駆け寄った。
後ろから死神が俺の名前を呼んでいるが、俺は無視した。
「菜々美!」
彼女は振り返って俺を見た。
「え…?」
「えっと…ひ、久しぶり。来ちゃった、、、」
「なんで…?」
「俺…お前に謝りたくて!あの時1番辛かったのはお前なのに、おれ、最低だよな……。」
「ちょっと、、」
「あの日俺に言おうとした事あったろ?それを教えてほしいんだ!身勝手な願いなのはわかってる!あれからずっと後悔してる、なんで最後まで聞いてやれなかったんだろうって…」
「まって、、、」
「でも聞きたいんだ!どうしても…!だから頼む!!教えてくれ……!」
「ちょ、ちょっと待って!!」
終始困惑していた彼女は、大きな声でその場を静止した。
「ご、ごめん。」
それもそうか、いきなりこんな所に来て急に謝られて…
おれは最後の最後まで自分勝手だな……。
そして次に放つ彼女の言葉に耳を疑った。
「あの…人違いじゃないですか?」
「え?」
「いや、すみませんけど…」
「何言ってんだよ、俺だよ?涼太だよ??」
彼女の言葉を理解できない俺は、必死に問いかけた。
「は、はぁ…」
ダメだ、まったくピンと来てない。
「でも俺が声掛けた時''なんで?''って聞いてきたじゃないか!」
「だって…だって私の名前知ってたから……。」
「知ってるに決まってるだろ?だって俺はお前の、、、、」
「菜々美になにか用ですか?」
急に割り込んできたのは、優しい顔をした知らない男だった。
「お前は、、、」
「菜々美さんの彼氏さんですよ」
次に割り込んできたのは、あきれた顔の死神だった。
「彼氏…!?」
「は、はい。そうですけど…」
優しい顔の男は少し恥ずかしそうにしている。
「そんな、、そんなわけない!だって俺が、、、」
「安元さん」
その後死神は、
「もうよろしいのでは」
と恐ろしい目で俺を睨みつけた。
先程までの少年の面影は無くなっており、俺を睨めつけるその表情は死神そのものだった。
「すみませんね!いきまり」
そして死神は彼女と彼女の彼氏に軽く謝罪し始めた。
その時にはもう死神は少年に戻っていた。
俺は何もわからずただ呆然と座り込んだ。
「安元さん、とりあえずここを離れましょうか」
ニッコリと微笑む死神に連られ、彼女の元をあとにした。
「まったくもう!だからおすすめしなかったんですよ!」
死神は腰に手を当て両頬を膨らませている。
「おい、あれは一体どういうことなんだ?」
「いいですか?ここの世界はあなたがいた世界よりも時の流れがとっても速いんですよ」
「どのくらい速い?」
「えっとぉ、、ここの1日があっちで1年くらいですかね」
「1年!?」
 
彼女が死んだのはちょうど1年前…ってことは
「365年…」
彼女は365年間もの間を過ごしていたんだ。
「そうです、やっとわかりました?」
そう言って死神は、やれやれと言ったように首を左右に揺らした。
「このこと言おうと思っている途中に抜けってちゃうんだもん、びっくりしましたよ。まぁ死んだ後のことを死が近い人に言うのが俺の仕事なんすよ」
そして死神は「まぁ、あなたにお会いした時は既に死んでましたけどね」といって笑った。
人間が記憶できる記憶はせいぜい140年くらいだ。
365年前の記憶なんぞ覚えてるはずがない。
そうか、彼女は俺を忘れちまったんだ。
俺がこんなに悩んで苦しんできたこの時間はなんだったんだ?
あいつのためとか理由付けて、結局はあの子と一緒にいたかっただけなんだ。
ひといちばい優しくて、ひといちばい頭のいい君のことだ、こんな話をきいてしまったらきっとまた笑うに違いない。
君があの日言おうとしたこと、今さら気づいたよ。
そしてその言葉をちゃんと聞かなかった俺の罪は今こうやって下されたんだ。
「私死ぬみたいなの
さっきね、死神が来たの
黒い服の男の子がね、、その子が伝えに来てくれた
だからね、私が死んだら私たち別れよ
でも死ぬまで付き合っててほしいかなぁ、これは私の最後の願いってことで、りょうくんに拒否権なんかないからね。
あ!そうだ、りょうくんに言っときたいことがもう1つあったんだ、私が死んでも……
''絶対に来ないでね''
「ああ、死ななきゃよかったな」
俺は小さく呟いた。
そして、、、ひといちばい体が弱かった。
俺の名前は安元涼太。
どこにでもいる平凡な高校生だ。
自慢じゃないが俺には彼女がいる。
優しくて可愛い最高の彼女が…。
『ピンポーン』
「あら安元くんじゃない、入って入って」
「ああ、どうも」
ドアを開けてくれたのは彼女のお母さんだ。
幸いなことにおばさんは、俺と彼女の仲を認めていてくれていて、とても応援してくれている。
「えっと今お茶持ってくるからね」
「大丈夫ですよ、俺すぐ帰るんで」
「そうなの、ゆっくりしていけばいいのに」
そう言とおばさんは、あの子ならいつもの部屋で待ってるからと優しく言ってくれた。
「あ、はい」
俺は階段を上る。
そして扉をゆっくりと開けた。
「あ、いらっしゃい」
ベッドから体を起こし、その子は言った。
彼女の名前は山本 菜々美。
おれと同じ歳でおなじ高校に通っている。
「課題のプリント持ってきた」
「うぇー、こんなにあるのぉ」
君は眉に皺を寄せ、プリントを拒んだ。
「まぁ分かんなかったらおれが教えてやっから」
「私より点数低いくせによくそんなこと言える
ね」
痛いところをつかれたおれは顔を赤くする。
「うるせぇよ、やっぱり教えないからいいよ」
「なになに〜?もしかしてちょっと怒っちゃった?」
「はぁ?怒ってねぇし!」
俺の反応を見て菜々美はケラケラと笑う。
少しの沈黙。
「ねぇねぇ」
君が静かに呟いた。
「死神って信じる?」
「え?」
突拍子のない質問に困惑するおれに対して、君は優しく笑った。
その時の顔は、どこか寂しそで悲しそう。
君の初めて見る顔におれは更に困惑する。
「私死ぬみたいなの」
それは突然君が発した言葉だった。
「は?」
「さっきね、死神が来たの」
全く理解できない。
「黒い服の男の子がね、、その子が伝えに来てくれた」
それでも君は話をすすめる。
「ちょ、ちょっと待って」
俺は話を中断させた。
「死ぬってなんだよ、死神?男の子?全然意味わかんないって」
「そうだよね、いきなりそんな事言われても
困っちゃうよね」
「死神がほんとに来たの?」
「うん」
「なにで死ぬって?」
「それはわからない」
再び訪れた沈黙の後、
「だからね、私が死んだら私たち別れよ」
君は優しく呟いた。
「は?」
「でも死ぬまでは付き合っててほしいかなぁ、これは私の最後の願いってことで、りょうくんに拒否権なんかないからね」
君はニコニコといつもと同じように話している。
「いや、勝手に話進めんなよ…全然意味わかんないって」
何も理解できない俺を置いて、君は『パン』と手を叩く。
「ってことで!この話は終わりね!」
「は?」
「明日って土曜授業の日だっけ?1時限目は確か数学だよね」
ちがう。
「てか2時間連続で数学じゃん!しんどくなりそうだねぇ、りょうくん居眠りしちゃだめだよ?また怒られちゃうから、、」
そんな話はどうでもいいだろ。
「あ!そうだ、りょうくんに言っときたいことがもう1つあったんだ、私が死んでも……」
「だから!!」
俺は怒鳴った。
君はビクリと肩をはね上げて、上がった肩を下げず、ゆっくり下を向いた。
「1人で話進めんなよ!もうすぐ死ぬとか死神とか、訳わかんねぇって!」
「うん」
「俺は信じないからな!絶対!」
「うん」
ただ頷くだけで、君はなにも言ってくれない。
「本当になにも言ってくれないんだな」
「うん…」
「もういい、帰る」
君の視線を背中で感じながら、おれは部屋を飛び出した。
それから数日後、君は本当に死んだ。
死因は心不全による瞬間死だった。
君とはあの日以降話さなかった。
俺は最低だ。
最後の最後まで君の側にいなかった。
俺は知ってたんだ、君が本当は弱いことも、無理して笑うことも、俺がついていないとだめな事も、、、
俺が大きな声を出した時、涙を溜めたいた事も…。
それから俺はバイトを辞めて、学校に行かなくなった。
君に見せないノートを書いても意味がない。
あの日、君は俺になんて言おうとしていたんだろう。
そのことばっかり考えてしまう。
そして、君が死んでから1年後
俺は自分が住んでいるマンションの屋上に立っていた。
こんなに高いのに不思議と怖くない。
ああ、もうすぐ君に会える。
あいつは俺が付いてないとすぐ泣くんだ。
俺が面倒みてやらないと、、
あいつに会ったらなに話そうかな、、、
そして俺はコンクリートの上で汚く散った。
ここはどこだ?
真っ暗で何も見えない。
すると暗闇の奥から足音が聞こえてくる。
足音俺の方に向かって大きくなってゆく。
奥から現れたのは、燕尾服を着た少年だった。
「突然ですが、あなたは死にました。」
少年は俺の顔を見ると、笑顔で言った。
「お前は、死神か?」
「え!?なぜ分かったんです?」
少年のような死神は目を丸くさせ、ジタバタと手を忙しなく動かした。
「お前、おれの彼女にあってるだろ」
「あなたの彼女さん?ん〜今まで数え切れないほどの女性に会ってきましたからねぇ、ちょっと覚えてないかな???」
死神は人差し指を下唇に置き眉間にシワを寄せて、左右に揺れている。
「そんなことより彼女はどこなんだ」
「まぁまぁそんなに早まらないでくだいな、とりあえず案内しますね」
死神とひたすら暗い道を歩き続ける。
「おい、いつまで歩くんだ?」
「あともう少しです」
「それ、8回くらい聞いたんだけど」
「まぁまぁ」
すると周りが徐々に明るくなってきた。
気づけば地面は芝生になっていて、なんとも心地の良い空間になっていた。
その空間には、白い霧が薄らとかかっており、ひたすら平らな芝生に沢山の人が真っ白な空を眺めていたり、芝生に寝そべっていたり、男女で楽しそうに話していたりと、各々好きなことをしている。
みんな幸せそうな顔だ。
「ここは天国か?」
「あっははは、そんな訳ないじゃないですかぁ」
死神は笑った。
「じゃあ、地獄なのか?」
「だーかーらー、そういうのないんですって」
「え?」
「天国とか地獄ってのは人間が勝手に作り出した妄想世界であって、実際はいい事をした人も、悪いことをした人もみーんな一緒になるんですよ」
「それじゃあ、神様もいないのか」
「まぁ神様っていうか、この世界を作った創造主様は居ますけどね」
「それはどんな…」
「いやーそれがね、僕も見たことないんですよぉ」
死神は楽しそうに下唇に人差し指を置いて左右に揺れている。
「これからあなたはここで今まで通り、生きてもらいます。」
死神は急に真面目な顔で話す。
「生きる?俺は死んだんじゃないのか?」
「それは''あっち''の世界の寿命であって、''こっち''の世界の寿命はまだ尽きてないですからね」
死神は自慢げに話した。
「そーれーにー、あなたは自殺しちゃってるから、あっちとこっちの2つの寿命を足されてるわけでー、、、なんかややこしいっすね」
「ただ、ここで生きればいいのか?」
「そーです!」
「それだけ?」
「はい!」
ここで俺は1番聞きたかった質問をした。
「彼女はどこにいるんだ?」
「えーっとぉ、その前になぜ彼女にこだわるのか伺ってもいいですか?」
「謝りたい、そしてあの日なんて言おうとしてたのかを聞きたい。」
「あの…言い忘れてたんですけど、ここって、、、」
「どうでもいい」
「うーん、まぁいいですけど、、、おすすめはしませんよ?」
 
「いいから会わせろ」
「はぁ…名前は?」
死神はしょうがなさそうに言った。
「山本 菜々美だ」
「ヤマモト、やまもと、山本……あ!」
その後死神は「ついてきて」と俺の袖を引いた。
俺の胸は高鳴った。
やっと会える。
やっと君に謝れる。
俺がいないとすぐあいつは泣くんだ。
きっと君は寂しんでるだろう。
死神に引かれ歩いてゆく。
「多分ここにいますね」
しばらく歩いた後死神が言った。
相変わらず景色は変わっていない。
少し当たりを見渡すと、体に強い衝撃が走り、手先が痺れた。
いた。
君の後ろ姿が見える。
じんわりと汗ばんできているのを感じる。
高鳴る心臓、、、
やっとだ、やっと君に会えた、、、
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「なにをされるおつもりですか?」
「なにって、会いに行くだよ」
しかし、死神は俺の手首を強く握って離さない。
「そんことしても悲しくなるだけですよ?」
「は?何言ってるんだ、いいから離せ!!」
俺は死神の手を振り払って彼女に駆け寄った。
後ろから死神が俺の名前を呼んでいるが、俺は無視した。
「菜々美!」
彼女は振り返って俺を見た。
「え…?」
「えっと…ひ、久しぶり。来ちゃった、、、」
「なんで…?」
「俺…お前に謝りたくて!あの時1番辛かったのはお前なのに、おれ、最低だよな……。」
「ちょっと、、」
「あの日俺に言おうとした事あったろ?それを教えてほしいんだ!身勝手な願いなのはわかってる!あれからずっと後悔してる、なんで最後まで聞いてやれなかったんだろうって…」
「まって、、、」
「でも聞きたいんだ!どうしても…!だから頼む!!教えてくれ……!」
「ちょ、ちょっと待って!!」
終始困惑していた彼女は、大きな声でその場を静止した。
「ご、ごめん。」
それもそうか、いきなりこんな所に来て急に謝られて…
おれは最後の最後まで自分勝手だな……。
そして次に放つ彼女の言葉に耳を疑った。
「あの…人違いじゃないですか?」
「え?」
「いや、すみませんけど…」
「何言ってんだよ、俺だよ?涼太だよ??」
彼女の言葉を理解できない俺は、必死に問いかけた。
「は、はぁ…」
ダメだ、まったくピンと来てない。
「でも俺が声掛けた時''なんで?''って聞いてきたじゃないか!」
「だって…だって私の名前知ってたから……。」
「知ってるに決まってるだろ?だって俺はお前の、、、、」
「菜々美になにか用ですか?」
急に割り込んできたのは、優しい顔をした知らない男だった。
「お前は、、、」
「菜々美さんの彼氏さんですよ」
次に割り込んできたのは、あきれた顔の死神だった。
「彼氏…!?」
「は、はい。そうですけど…」
優しい顔の男は少し恥ずかしそうにしている。
「そんな、、そんなわけない!だって俺が、、、」
「安元さん」
その後死神は、
「もうよろしいのでは」
と恐ろしい目で俺を睨みつけた。
先程までの少年の面影は無くなっており、俺を睨めつけるその表情は死神そのものだった。
「すみませんね!いきまり」
そして死神は彼女と彼女の彼氏に軽く謝罪し始めた。
その時にはもう死神は少年に戻っていた。
俺は何もわからずただ呆然と座り込んだ。
「安元さん、とりあえずここを離れましょうか」
ニッコリと微笑む死神に連られ、彼女の元をあとにした。
「まったくもう!だからおすすめしなかったんですよ!」
死神は腰に手を当て両頬を膨らませている。
「おい、あれは一体どういうことなんだ?」
「いいですか?ここの世界はあなたがいた世界よりも時の流れがとっても速いんですよ」
「どのくらい速い?」
「えっとぉ、、ここの1日があっちで1年くらいですかね」
「1年!?」
 
彼女が死んだのはちょうど1年前…ってことは
「365年…」
彼女は365年間もの間を過ごしていたんだ。
「そうです、やっとわかりました?」
そう言って死神は、やれやれと言ったように首を左右に揺らした。
「このこと言おうと思っている途中に抜けってちゃうんだもん、びっくりしましたよ。まぁ死んだ後のことを死が近い人に言うのが俺の仕事なんすよ」
そして死神は「まぁ、あなたにお会いした時は既に死んでましたけどね」といって笑った。
人間が記憶できる記憶はせいぜい140年くらいだ。
365年前の記憶なんぞ覚えてるはずがない。
そうか、彼女は俺を忘れちまったんだ。
俺がこんなに悩んで苦しんできたこの時間はなんだったんだ?
あいつのためとか理由付けて、結局はあの子と一緒にいたかっただけなんだ。
ひといちばい優しくて、ひといちばい頭のいい君のことだ、こんな話をきいてしまったらきっとまた笑うに違いない。
君があの日言おうとしたこと、今さら気づいたよ。
そしてその言葉をちゃんと聞かなかった俺の罪は今こうやって下されたんだ。
「私死ぬみたいなの
さっきね、死神が来たの
黒い服の男の子がね、、その子が伝えに来てくれた
だからね、私が死んだら私たち別れよ
でも死ぬまで付き合っててほしいかなぁ、これは私の最後の願いってことで、りょうくんに拒否権なんかないからね。
あ!そうだ、りょうくんに言っときたいことがもう1つあったんだ、私が死んでも……
''絶対に来ないでね''
「ああ、死ななきゃよかったな」
俺は小さく呟いた。
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