ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

実在する魔物

カスティス『あれっておとぎ話じゃなかったのかよ…』

この鳴き声、聞いたことがある。

子供の頃聞いた話に出てくる化け物の鳴き声。

ユイカ『それじゃあ、アイツは…あのおとぎ話のルーズってことなの…』

ァァァァ…ァァァァ…ギィィィゴォォォン!

ルーズが存在するなんて思っても見なかった。

話でしか聞いたことがないが、あの鳴き声。

ルーズの特徴的な鳴き声だ。

あれは、子供達のしつけのための嘘かと思っていた。

そのルーズが存在するということは、あの話は作り物ではなく、本当にそういう過去があったということになる。

なんて酷いことを…

ユイカ『あの子は可哀想な魔物なのね…』

カスティス『許せねぇ…それを隠そうとしようとした奴ら…』

ァァァァ…ギィィィゴォォォン!

カスティス『来るぞ!ユイカ!』

キーン!

ギィィィゴォォォン!

ユイカ『なんて早いの!?剣で防いでなかったら一撃であの世だった。』

ギィィィゴォォォン!

キンッ!キンッ!キーン!

なんて早さだ。

前回戦ったミラールーもなかなかな早さだったが、これはそれ以上だ。

そして力が半端じゃない。

無造作に鋭い爪を立て、俺めがけて引っ掻き回してくる。

一撃でも喰らったら完全にアウトだ。

カスティス『ユイカ!俺がこいつの攻撃を防ぐ!お前はその間に攻撃を加えろ!』

ユイカ『わかったわ!死なないでねカスティス!』

俺はうなずき、ルーズの攻撃をなんとか防ぎ続けることにした。

おとぎ話が本当なら、この化け物は可愛そうな奴だ。

なんとかしてやりたいところだが、このスピードとパワー。

手加減していたら俺がやられる。

いや、手加減どころか本気で戦ったとしても勝算は低いかもしれない。

この攻撃…いつまで防ぎきれるだろうか…

ただ、俺はチャンスだとも思っていた。

それは、もう一度この剣と対話できる。

そう思ったからだ。

俺は心の中で語りかけた。

【おい剣!こないだみたいに光を放ってくれ!あの技を出させてくれ!頼む!】

しかし俺の問いかけも虚しく、剣はうんともすんとも言わない。

やっぱりそう簡単なものではないようだ。

ギィィィゴォォォン!ギィィィゴォォォン!

キンッ!キンッ!

カスティス『こいつ早すぎて隙が全くない!くっそ!』

キンッ!キンッ!カーン!

カスティス『な!やばい!』

俺の防いでいた剣がルーズの攻撃によって弾かれた。

ギィィィゴォォォン!

そしてルーズは、大きく振りかぶり俺めがけて爪を突き刺してきた。

これは完全に殺される…俺…死ぬのか…

と、その時だった。

【諦めるのか?】

『お前!…出てくるのが遅いんだよ…』

【それじゃあここで死ぬってことだな?】

『こればかりは、諦めたくなくても、避けきれないし、お前の力を借りても俺自身が死んでからじゃ意味ないしな…』

【お前は諦めるんだな?この状況も、聡のことも。】

『諦めたくねーよ!…諦めたくないけど!…どうしようもねーだろ…』

【生きる意志もなく、誰かを守り抜く覚悟もない奴に俺の力を貸してやる義理はないな。カスティス、お前はここでゲームオーバーだ】

『…待て!待ってくれ!』

【なんだ?生きる意志のない奴に要はない】

『俺はこいつに勝てるのか?』

【さーな】

『教えてくれ…頼む…』

【知らない。まぁ、一つ言えるのはお前次第なんだよ。お前の命だ。お前の意志一つだな。】

『俺の意志一つ…』

俺は心の中で剣に土下座をした。

『俺…生きてぇ…生きてみんなのもとに帰りたい…聡…聡を救いたい…どうか力を貸してください、お願いします…』

俺は涙ながらに頼み込んだ。

【んー、じゃあ約束しろ。】

剣は俺に何かを求めてきた。

【聡を必ず救い出せ!それまでは何があっても諦めない!たとえ命が奪われようとも!聡を救い出す!お前の命に代えてもだカスティス!…それが約束できるなら力を貸してやってもいい。】

俺はその約束、いや、契約に笑顔が溢れる。

『…そんな約束でいいのか?…あぁ、やってやるともよ!というより最初っからそのつもりだっての!…俺は、この命を捧げて聡を救い出す!この身が滅びようとも、その思いは変わらねー!』

【なるほどな、約束だぞカスティス…】

そして俺の剣が光出す。

その光によってルーズは眩しがり、心臓めがけて爪を向けてきたが、その方向が変わり俺の肩に刺さった。

カスティス『あ…うわぁぁぁぁぁ!!!!!』

ギィィィゴォォォン!

ルーズは痛がっている俺を見て雄叫びをあげた。

ものすごい痛みに俺は叫ばずにはいられなかった。

生き地獄だ。死ぬかもしれないぐらいの痛みだ。

だかその時、奴に隙ができていた。

俺は気を失いそうなくらいの痛みに対し唇を強く噛みしめて、なんとか踏ん張り、剣を奴めがけて振りかざした。

カスティス『ライトニングブレイド!!!】

俺の振りかざした剣撃はルーズに当たった。

ギィィィゴォォォン!ギィィィゴォォォン!

俺の光の剣撃によってルーズの片腕が切り落とされた。

ギィィィゴォォォン!

奴もこの攻撃で相当なダメージを喰らった。

これならいける!

そこに畳み掛けるようにユイカが剣を振りかざす。

ユイカ『カスティス!チャンスをありがとう!!』

バサッ、バサッバサッ…

ユイカの剣捌きは、芸術そのものだ。

ルーズはユイカによってあっという間に細切れとなってしまった。

バタッ!…

俺は地面に倒れ込む。

ユイカ『カスティス!あんたすごい怪我!!』

カスティス『めちゃくちゃいてぇ。でも急所は外れてるからなんとか大丈夫だ。』

ユイカ『あんたってほんと無茶苦茶よカスティス。』

カスティス『お前のチャンスを作るためにやったんだぞ!感謝しろよまったく!』

ユイカ『わかってるわよ…ありがとう…』

カスティス『あぁ…俺たちの町に帰るか…』

ユイカ『そうね…』

そしてユイカの肩を借り、俺たちは部屋を出ようとした。

ガチャ、ガチャガチャガチャ!

ユイカ『え?なんで開かないの?』

カスティス『どうした?ドアが開かないのか?』

ユイカ『おかしいわね。この扉は部屋の者を倒したら開くはずなのに…』

カスティス『もう一回ちゃんとやってみろよ。イテテテテ。』

しかし扉は一向に開かない。

どうしてだと思っていると…

ァァァァ…ァァァァ…ァァァァ…

ギィィィィ…ギィィィィ…

俺らの背後から嫌な呻き声が聞こえてきた。

まさか…そんなはずは…

俺らが後ろを振り向くと…そこには…

カスティス『う…嘘だろ…』

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