ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

おとぎ話

俺は小さい頃、いろんな魔物をおとぎ話で聞いたことがある。

怖いなぁって思ったとしても所詮おとぎ話。

現実ではない。

現実に存在する訳がない。

ただ、魔女だってそうだった…

いないと思っていたものがいる。

俺の育ってきたこのカシュパラゴという世界は、俺が知らないだけで、もしかしたら多くのことが隠されているのかもしれない。

そしてこれはあるおとぎ話の一つだ。

少女が山で遊んでいて、山で出会った【それ】と仲良く遊んでいると少女から、

『続きは家で遊ぼうよ!』

と言われて少女のお家に遊びに行った【それ】を両親はとても怖がり少女から引き離した後、近くにあった農具で【それ】の形が変わるまで叩き続けた。

そうして【それ】のことはすぐに町中に知れ渡り、町の人たちも加わわって【それ】を痛ぶり続けたという。

そして森へと捨てられた。

少し時間がたった後、そこへ先程の少女が心配そうな面持ちでやってきて、

『大丈夫…今手当てしてあげるからね。ごめんね、ごめんね。』

少女な謝りながら【それ】の手当てをしていた。

少女は【それ】が元気になるまで1週間付きっきりで看病をし、【それ】はすっかり元気を取り戻した。

『よかったぁ!本当によかったわ!』

【それ】と少女が喜んでいると、そこへ町の大人達がやってきた。

『◯◯!(少女の名前)お前まさか、その化け物の看病していた訳じゃないよな!?』

『◯◯違うわよね!そうよね!?』

『お父さん、お母さん、町のみんなも待って!この子はとても優しくて良い子なの!本当よ!だからいじめるのはやめてあげて!』

【それ】も少女の手を取り頼み込んだ。

しかし町の者達は聞く耳を持たずに、少女に向けて矢を打ち込んだ。

『◯◯もきっとおかしくなってしまったんだ。今殺しておかないと、きっといつか俺らが殺される。』

『そうよね。きっとそうなってしまうわ。だから仕方ないわよね◯◯さん?』

『はい、しかたない。殺しましょう。』

『そうねあなた。◯◯が悪いのよね。』

少女は胸を打たれ、途切れそうな声で、

『お父さん、お母さん…どうして…ひどいよ…あなたは逃げて…あなただけは生き延びて…』

【それ】は嫌だと首を横に振る。

するとそこへ、

『どけ!後で痛ぶってやるからな化け物!』

【それ】は町の男に蹴飛ばされ、少女の周りを大人達が囲み、手持ちの農具で少女が叫ぶことが出来なくなるまで殴り続けた。

【それ】はただその光景を見てることしかできなかった。

あの子を助けたい。でもあの子を助けるにはどうすればいいのか。

ただ、いつしか【それ】は悟ってしまった。

《そうか、アイツらみんな殺しちゃえばいいのか》

《理性を持つからいけないんだ…可哀想とか痛いだろうなとか、思う必要はないんだ…僕は…化け物なんだ…》

そう思った【それ】は、一歩、また一歩と町の大人達に近づいていく。

【それ】は大人の肩をポンと叩き、

《ねぇ、殺していい?》

『あ!?後でしっかりお前を殺してやるから少し待ってろ!』

大人が【それ】蹴飛ばそうとすると、その足は反対側へ飛んでいった。

『あ…あぁぁぁぁぁ!!俺の足がぁぁぁ!』

それに気づいた大人達は、急いで少女から【それ】に矛先を向けた。

大人達が【それ】に襲い掛かろうとした時。

【それ】は、ニヤリと笑ったのだ。

ギィィィゴォォォン!



【それ】の周りは、血の海になっていた。

少女はまだ息があった。

少女が【それ】に気づき、最後の力を振り絞り手を差し伸べた。

少女に気づいた【それ】は、少女に近づいていき、

そして…

少女の差し出した腕から足先までも、バラバラに切り刻んだ。

ギィィィゴォォォン!

【それ】は人々に裏切られ、大切な友達も失い、何も悪くないのに酷く痛ぶられ、殺されかけたことをきっかけに、

理性を持つ必要のない、本物の化け物になったのだった。


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