ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

美乃梨の中の僕

看護師『お大事になさってくださいね』

僕は数日入院し、退院した。

今入院してた病院は、美乃梨のいる病院とは違っていた。

まだ身体は痛むが、美乃梨の無事がとにかく気がかりだ。

【聡、痛むか?】

聡『あぁ、でもそんなことよりも…』

無我夢中で僕は美乃梨のもとへ向かった。

【まだ無茶はダメよ聡!身体がボロボロなんだから!】

心配する2人の声を無視して僕は走り出す。

そして病院に到着し、受付に確認した。

聡『西崎美乃梨さんはどこの病室ですか!?』

受付嬢『西崎様ですね、少々お待ちくださいね。えーっと…あれ?西崎様なら昨日退院されてますね。』

聡『え!?』

僕はその言葉を聞き、直様屋敷へ向かった。
受付嬢が僕に何か言っていたが聞く耳を持たなかった。

聡『美乃梨の意識が戻ったんだ!早く、早く会いたい!この腕で抱きしめたい!美乃梨!』

【さ、聡!落ち着け!今の聴いたろ!まだ嬢ちゃんに会わない方がいい!お前のためだ!】

【そうよ聡!落ち着いて!】

聡『うるさい!黙ってろ!美乃梨がいきてるんだ!生きてる…夢じゃない…』

屋敷に着き美乃梨の部屋へ飛び込んだ。

聡『美乃梨!』

僕はその光景に涙が溢れた。

そこにいたのは紛れもない、美乃梨。

美乃梨がいる、本当に生きている。

美乃梨は窓枠に腰をかけて、外から吹き込む風を感じながら庭を眺めていた。

僕の足は自然と歩き出して、美乃梨を抱きしめた。

聡『美乃梨…本当に生きていてくれて良かったよ…』

しかし、心配する僕に美乃梨は戸惑っていた。

美乃梨『ちょ、ちょっと!離してください!やめて!』

美乃梨は僕を突き飛ばした。

え?なんだ?この違和感は?

何かがおかしい。

聡『美乃梨?どうしたんだよ?僕だよ!聡だよ!?』

美乃梨『聡さん?…どちら様ですか?』

聡『え?…な、なんの冗談だよ美乃梨?』

そこへ美乃梨のお父様とお母様がやってきた。

西崎 父『聡君、実は美乃梨なんだが…事故の衝撃で記憶をほとんど失ってしまったようだ…奇跡的に私たちのことは全て覚えているのだが、他の記憶はぽっかりなくなってしまっている…』

西崎 母『聡君…ごめんなさいね…』

僕は現実を受け止めることができなかった。

【聡…】

【だから言ったのによぉ…】

僕の生きる理由となっていた美乃梨の中に僕は存在していない。

赤の他人…

そんなの受け止められるわけがない。

美乃梨…なんでこんなことに…

聡『み、美乃梨!覚えてないか?僕に付き合って欲しいって言ってくれたこと!美乃梨から言ってくれたんだぞ!覚えてるよな!?』

美乃梨『…ごめんなさい。記憶にないわ。』

聡『そ、そんな…』

本当に何も覚えていない美乃梨の様子を見ていて僕は胸が張り裂けそうだった。

美乃梨のことを見ているとどうにかなってしまいそうだった僕は、屋敷を飛び出して、

どこでもいい…

何もかも忘れられるような場所を目指して駆けだしていった。

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