初心者スキル【言語理解】の横に“極致”と載ってるんだが
33話
「ぅ……ぐ、ぁ……?」
──筋肉痛だろうか。全身が痛い。
ズキズキと痛む体を起こし、辺りを見回す。
……夜だ。地面に突き刺さっている松明の明かりだけが、ぼんやり辺りを照らしている。
ふと隣を見ると、『黒森精族』の少女が少し離れた所で本を読んでいた。
「ミリア……?」
「あ、ソータ様! 目が覚めたんですね!」
心底嬉しそうに笑い、ミリアが聡太の隣に寄って来る。
「……ここは……?」
「『ビフルズ大森林』の中ですよ。ソータ様、パルハーラを討伐した後に倒れたんです」
ミリアが言うには、こういう事らしい。
パルハーラの首を斬り飛ばし、勝利の雄叫びを上げた聡太は──だが警戒を解く事なく、パルハーラの死体を見つめていた。
やがて『付属獄炎』の黒炎がパルハーラの体を焼き消し、それを見届けた後──聡太が倒れたらしい。
張り詰めていた心が一気に緩んだからか、もしくは別の原因か……その理由はわからない。
ちなみに『獣人族』たちは、『十二魔獣』の脅威が去った事を喜んで宴を開いているとか。
「そうか……」
「『獣人族』の皆さん、私の姿を見ても嫌な顔一つしないで、宴の食べ物を分けてくれたんです」
「まあ『獣人族』にとっては、お前はモンスターから命を守ってくれた恩人だろうしな」
『黒森精族』なのに嫌な顔をされなかった──その事が嬉しいのか、ミリアの表情がいつもより明るい。
「……それで、もう動いても大丈夫なんですか?」
「筋肉痛が酷いけど……まあ、動けないわけじゃない」
のっそりと立ち上がり、近くに置いてあった白色のローブを羽織って、二本の刀を身に付ける。
身の回りの物をもう一度だけ確認し……満足したのか、聡太たちはガヤガヤと騒がしい方へと進んだ。
少し開けた所に着き──焚き火を囲む『獣人族』を見つけた。
「あ、英雄様! 目が覚めたんですね!」
「おいお前ら、英雄様のご飯を用意しろ!」
『獣人族』が一気に騒がしくなり、狼耳の男が飯を持ってくるように命令し──
「おい、ちょっと待て。英雄様って……まさか、俺の事か?」
「あなた以外に、誰がいると言うんですか? さあ、遠慮なく食べてください」
焼かれた肉や果物を差し出され、聡太が不愉快そうに顔を歪める。
「英雄様……! いいですね、ソータ様にピッタリです!」
「チッ……お前らの飯はお前らで食え。俺らにはちゃんと食料がある」
「し、しかし……あの『十二魔獣』から守ってもらったお礼は──」
「勘違いするなよ」
聡太の放った低い声に、狼耳の男が顔を強張らせる。
「俺は俺の目的のために『十二魔獣』を殺した。別にお前らを助けるために戦ったわけじゃない。結果的にお前らを助ける事になっただけだ。わかるな?」
「……ですが、助けてもらったのは事実です。我々に協力できる事があれば、何でも言ってください」
何ともまあ、真面目な奴だ。
何かをしないと気が済まない、と鼻息を荒くする狼耳の男を見て、聡太が心底めんどくさそうにため息を吐く。
「……じゃあ、いくつか質問をするから、それに答えてくれ。お前らを助けた礼は、それでいいだろ」
「本当にそれだけで良いんですか?」
「いい。だから、質問には答えてくれよ」
わかりましたと頷く男に、聡太は──真っ先に、疑問に思っていた事を問い掛けた。
「あの……ハルピュイア、だったか? なんでアイツだけ……何て言うか……種族が違うんだ?」
そう──ここにいる『獣人族』の群れ。
今、聡太が話している男も、周りにいる女性も、食べ物を持ってきた幼い男の子も。
──全員。その頭部から、狼のような耳が生えているのだ。
「……『獣人族』には、いくつかの種族があるんです。ハピィの種族は、鳥の翼と足を持つハーピー種。我々の種族はワーウルフ種。一括りに『獣人族』と言っても、厳密に分ければ様々な種族がいるんです」
ワーウルフ種、ハーピー種、フォクシー種、ライガー種──他にも多くの種族がいるらしく、ハルピュイアたちハーピー種は、ワーウルフ種とは別の部隊として逃げたらしい。
何故ハルピュイアはこの部隊にいるのか。
その理由は……ハルピュイアは『獣国』から人がいなくなるまでパルハーラと戦って、ハーピー種と一緒に逃げる機会を失ったのだとか。
とりあえず、一番最後に避難したワーウルフ種の部隊と共に、パルハーラから逃げていた……と。
「素晴らしいですね……自分が危険な目に遭っても、他の方々を逃がすために戦うなんて……」
「……次の質問だ。他の『十二魔獣』の情報は持ってないのか?」
「すみません……他の『十二魔獣』の事は……」
「そうか……質問は以上だ。もういいぞ」
「なっ──これだけで終わりですか?!」
何が不満なのか、大声を出しながら聡太の肩を掴んで前後に揺さぶる。
「……はぁ……じゃあ、もう一つだけ」
聡太の言葉に、男が肩から手を離して無言で見つめてくる。
何をそんなに期待してるのか──そんな事を思いながら、聡太は男にふと思い付いた望みを口にした──
────────────────────
「──おー! ソータ、起きたんだー!」
「……ハルピュイアか……どこに行ってたんだ?」
「狩りー! 食べられるモンスターを狩ってきたのー!」
片方の足でモンスターを掴み、もう片方の足で器用にケンケンしながら近づいてくる。
「……ハルピュイア」
「んー? なにー?」
「お前の事、あのワーウルフの種族長から聞いたんだ」
「……? ハピィの事ー?」
不思議そうに首を傾げるハルピュイアに、聡太は先ほどワーウルフ種の男から聞いた事を話した。
「お前、他の奴等を逃がすために、最後の最後まで『獣国』に残ってパルハーラと戦てたんだよな?」
「んー……難しいのは苦手ー。ハピィは他の人たちよりも強いから、あの牛さんと戦ってたのー」
「……ん? だから、逃がすために戦ってたんだろ?」
「そうなのかなー? よくわかんないけど、戦わないといけないって思ったからー」
コイツは、本能で動いているのだろうか。
「……お前、父さんとか母さんに会いたいって思わないのか?」
「んー。でも、しょうがないよー。家族には会いたいけど、どこにいるかわかんないし……」
「……なら、これからもワーウルフ種と一緒に行動するって事か?」
「うん」
表情を変えずに返事をする少女。
だが……その瞳は、家族の安否を知りたがっているように見える。
「……お前は、どうしたいんだ?」
「さあー? でも、ハピィがいないとみんな困るし──」
「おい」
早口に続けようとして──聡太の短い言葉が、その先を遮った。
「俺は、お前がどうしたいのかを聞いてんだよ。ワーウルフの奴らがどうとか、誰かが困るとか聞いてねぇ。お前の気持ちを教えろ」
スッと目を細くし、低い声で問い掛ける。
──グラッと、ハルピュイアの濃い青色の瞳が揺れた。
ぱくぱくと口を開閉させ、言うかどうか迷うような仕草を見せ……意を決したように、本音を話し始めた。
「…………ハピィ、家族が……心配……」
「そうか……お前は、どうしたいんだ?」
「家族を探したい……けど──」
「お前が望むなら、俺の旅に連れて行ってもいい。その途中で、お前の家族を見つけられるかもな」
聡太の言葉に、ハルピュイアがバッと顔を上げた。
「で、でもっ、ワーウルフのみんなが──」
「許可は取った。お前を連れて行っていいってな」
あのワーウルフ種のリーダーは、どうしても聡太に礼がしたかったらしい。
だから──ハルピュイアの力が欲しいと言った。ハルピュイアを連れて行きたいと言った。
ハルピュイアは、ワーウルフ種にとって命を守るナイトと同じだ。
そいつを欲しいと言えば、さすがに拒否するだろうと思っていた。
……だが、あのワーウルフ種のリーダーは、連れて行って良いと言いやがった。
リーダーだけでなく、他のワーウルフ種の奴らもだ。
「付いて来たいなら、付いて来い。俺としても、お前の力は……戦力として、欲しい」
ガリガリと頭を掻き──ハルピュイアに手を差し出した。
「最後に聞くぞ──お前は、どうしたい?」
聡太の顔と、差し出された手を交互に見て──小さな手で、聡太の手を握った。
「ハピィ、ソータに付いてくー! それで、パパとママ、お姉ちゃんを見つけるのー!」
モコモコとした羽毛にくすぐったさを感じながら、ハルピュイアの手を強く握り返す。
すると、ハルピュイアは嬉しそうに笑みを深めて、握った手をぶんぶんと上下に振った。
「えへへー!」
「何笑ってんだよ……」
「──ソータ様、言われた通り取ってきました」
──と、森の奥から、バックパック背負ったミリアが戻ってきた。
ハルピュイアの本音を聞き出すには、二人きりの方が良いだろう──そう判断し、ミリアには高く売れそうな草花を採集しに行ってもらっていたのだ。
「お、サンキューミリア」
「ソータ様。その……どうなりました?」
「ああ。ハルピュイアも連れて行く。と言っても、コイツの家族を見つけるまで、だけどな」
「そうですか……では、これからよろしくお願いします、ハルピュイア」
聡太の言葉を聞き、ミリアがハルピュイアに近づいて手を差し出した。
だが──ムッと頬を膨らませ、ハルピュイアが握っていた聡太の手を離した。
「もー! ハルピュイアって呼ばないでー!」
どうやら、愛称の方で呼んで欲しいらしい。
ミリアと顔を見合わせ……苦笑し、もう一度ハルピュイアに手を差し出した。
「んじゃ……これからよろしく、ハピィ」
「よろしくお願いします、ハピィ」
「……! おー!」
聡太とミリアの手を握り──ハルピュイアが心底嬉しそうな笑みを見せた。
──筋肉痛だろうか。全身が痛い。
ズキズキと痛む体を起こし、辺りを見回す。
……夜だ。地面に突き刺さっている松明の明かりだけが、ぼんやり辺りを照らしている。
ふと隣を見ると、『黒森精族』の少女が少し離れた所で本を読んでいた。
「ミリア……?」
「あ、ソータ様! 目が覚めたんですね!」
心底嬉しそうに笑い、ミリアが聡太の隣に寄って来る。
「……ここは……?」
「『ビフルズ大森林』の中ですよ。ソータ様、パルハーラを討伐した後に倒れたんです」
ミリアが言うには、こういう事らしい。
パルハーラの首を斬り飛ばし、勝利の雄叫びを上げた聡太は──だが警戒を解く事なく、パルハーラの死体を見つめていた。
やがて『付属獄炎』の黒炎がパルハーラの体を焼き消し、それを見届けた後──聡太が倒れたらしい。
張り詰めていた心が一気に緩んだからか、もしくは別の原因か……その理由はわからない。
ちなみに『獣人族』たちは、『十二魔獣』の脅威が去った事を喜んで宴を開いているとか。
「そうか……」
「『獣人族』の皆さん、私の姿を見ても嫌な顔一つしないで、宴の食べ物を分けてくれたんです」
「まあ『獣人族』にとっては、お前はモンスターから命を守ってくれた恩人だろうしな」
『黒森精族』なのに嫌な顔をされなかった──その事が嬉しいのか、ミリアの表情がいつもより明るい。
「……それで、もう動いても大丈夫なんですか?」
「筋肉痛が酷いけど……まあ、動けないわけじゃない」
のっそりと立ち上がり、近くに置いてあった白色のローブを羽織って、二本の刀を身に付ける。
身の回りの物をもう一度だけ確認し……満足したのか、聡太たちはガヤガヤと騒がしい方へと進んだ。
少し開けた所に着き──焚き火を囲む『獣人族』を見つけた。
「あ、英雄様! 目が覚めたんですね!」
「おいお前ら、英雄様のご飯を用意しろ!」
『獣人族』が一気に騒がしくなり、狼耳の男が飯を持ってくるように命令し──
「おい、ちょっと待て。英雄様って……まさか、俺の事か?」
「あなた以外に、誰がいると言うんですか? さあ、遠慮なく食べてください」
焼かれた肉や果物を差し出され、聡太が不愉快そうに顔を歪める。
「英雄様……! いいですね、ソータ様にピッタリです!」
「チッ……お前らの飯はお前らで食え。俺らにはちゃんと食料がある」
「し、しかし……あの『十二魔獣』から守ってもらったお礼は──」
「勘違いするなよ」
聡太の放った低い声に、狼耳の男が顔を強張らせる。
「俺は俺の目的のために『十二魔獣』を殺した。別にお前らを助けるために戦ったわけじゃない。結果的にお前らを助ける事になっただけだ。わかるな?」
「……ですが、助けてもらったのは事実です。我々に協力できる事があれば、何でも言ってください」
何ともまあ、真面目な奴だ。
何かをしないと気が済まない、と鼻息を荒くする狼耳の男を見て、聡太が心底めんどくさそうにため息を吐く。
「……じゃあ、いくつか質問をするから、それに答えてくれ。お前らを助けた礼は、それでいいだろ」
「本当にそれだけで良いんですか?」
「いい。だから、質問には答えてくれよ」
わかりましたと頷く男に、聡太は──真っ先に、疑問に思っていた事を問い掛けた。
「あの……ハルピュイア、だったか? なんでアイツだけ……何て言うか……種族が違うんだ?」
そう──ここにいる『獣人族』の群れ。
今、聡太が話している男も、周りにいる女性も、食べ物を持ってきた幼い男の子も。
──全員。その頭部から、狼のような耳が生えているのだ。
「……『獣人族』には、いくつかの種族があるんです。ハピィの種族は、鳥の翼と足を持つハーピー種。我々の種族はワーウルフ種。一括りに『獣人族』と言っても、厳密に分ければ様々な種族がいるんです」
ワーウルフ種、ハーピー種、フォクシー種、ライガー種──他にも多くの種族がいるらしく、ハルピュイアたちハーピー種は、ワーウルフ種とは別の部隊として逃げたらしい。
何故ハルピュイアはこの部隊にいるのか。
その理由は……ハルピュイアは『獣国』から人がいなくなるまでパルハーラと戦って、ハーピー種と一緒に逃げる機会を失ったのだとか。
とりあえず、一番最後に避難したワーウルフ種の部隊と共に、パルハーラから逃げていた……と。
「素晴らしいですね……自分が危険な目に遭っても、他の方々を逃がすために戦うなんて……」
「……次の質問だ。他の『十二魔獣』の情報は持ってないのか?」
「すみません……他の『十二魔獣』の事は……」
「そうか……質問は以上だ。もういいぞ」
「なっ──これだけで終わりですか?!」
何が不満なのか、大声を出しながら聡太の肩を掴んで前後に揺さぶる。
「……はぁ……じゃあ、もう一つだけ」
聡太の言葉に、男が肩から手を離して無言で見つめてくる。
何をそんなに期待してるのか──そんな事を思いながら、聡太は男にふと思い付いた望みを口にした──
────────────────────
「──おー! ソータ、起きたんだー!」
「……ハルピュイアか……どこに行ってたんだ?」
「狩りー! 食べられるモンスターを狩ってきたのー!」
片方の足でモンスターを掴み、もう片方の足で器用にケンケンしながら近づいてくる。
「……ハルピュイア」
「んー? なにー?」
「お前の事、あのワーウルフの種族長から聞いたんだ」
「……? ハピィの事ー?」
不思議そうに首を傾げるハルピュイアに、聡太は先ほどワーウルフ種の男から聞いた事を話した。
「お前、他の奴等を逃がすために、最後の最後まで『獣国』に残ってパルハーラと戦てたんだよな?」
「んー……難しいのは苦手ー。ハピィは他の人たちよりも強いから、あの牛さんと戦ってたのー」
「……ん? だから、逃がすために戦ってたんだろ?」
「そうなのかなー? よくわかんないけど、戦わないといけないって思ったからー」
コイツは、本能で動いているのだろうか。
「……お前、父さんとか母さんに会いたいって思わないのか?」
「んー。でも、しょうがないよー。家族には会いたいけど、どこにいるかわかんないし……」
「……なら、これからもワーウルフ種と一緒に行動するって事か?」
「うん」
表情を変えずに返事をする少女。
だが……その瞳は、家族の安否を知りたがっているように見える。
「……お前は、どうしたいんだ?」
「さあー? でも、ハピィがいないとみんな困るし──」
「おい」
早口に続けようとして──聡太の短い言葉が、その先を遮った。
「俺は、お前がどうしたいのかを聞いてんだよ。ワーウルフの奴らがどうとか、誰かが困るとか聞いてねぇ。お前の気持ちを教えろ」
スッと目を細くし、低い声で問い掛ける。
──グラッと、ハルピュイアの濃い青色の瞳が揺れた。
ぱくぱくと口を開閉させ、言うかどうか迷うような仕草を見せ……意を決したように、本音を話し始めた。
「…………ハピィ、家族が……心配……」
「そうか……お前は、どうしたいんだ?」
「家族を探したい……けど──」
「お前が望むなら、俺の旅に連れて行ってもいい。その途中で、お前の家族を見つけられるかもな」
聡太の言葉に、ハルピュイアがバッと顔を上げた。
「で、でもっ、ワーウルフのみんなが──」
「許可は取った。お前を連れて行っていいってな」
あのワーウルフ種のリーダーは、どうしても聡太に礼がしたかったらしい。
だから──ハルピュイアの力が欲しいと言った。ハルピュイアを連れて行きたいと言った。
ハルピュイアは、ワーウルフ種にとって命を守るナイトと同じだ。
そいつを欲しいと言えば、さすがに拒否するだろうと思っていた。
……だが、あのワーウルフ種のリーダーは、連れて行って良いと言いやがった。
リーダーだけでなく、他のワーウルフ種の奴らもだ。
「付いて来たいなら、付いて来い。俺としても、お前の力は……戦力として、欲しい」
ガリガリと頭を掻き──ハルピュイアに手を差し出した。
「最後に聞くぞ──お前は、どうしたい?」
聡太の顔と、差し出された手を交互に見て──小さな手で、聡太の手を握った。
「ハピィ、ソータに付いてくー! それで、パパとママ、お姉ちゃんを見つけるのー!」
モコモコとした羽毛にくすぐったさを感じながら、ハルピュイアの手を強く握り返す。
すると、ハルピュイアは嬉しそうに笑みを深めて、握った手をぶんぶんと上下に振った。
「えへへー!」
「何笑ってんだよ……」
「──ソータ様、言われた通り取ってきました」
──と、森の奥から、バックパック背負ったミリアが戻ってきた。
ハルピュイアの本音を聞き出すには、二人きりの方が良いだろう──そう判断し、ミリアには高く売れそうな草花を採集しに行ってもらっていたのだ。
「お、サンキューミリア」
「ソータ様。その……どうなりました?」
「ああ。ハルピュイアも連れて行く。と言っても、コイツの家族を見つけるまで、だけどな」
「そうですか……では、これからよろしくお願いします、ハルピュイア」
聡太の言葉を聞き、ミリアがハルピュイアに近づいて手を差し出した。
だが──ムッと頬を膨らませ、ハルピュイアが握っていた聡太の手を離した。
「もー! ハルピュイアって呼ばないでー!」
どうやら、愛称の方で呼んで欲しいらしい。
ミリアと顔を見合わせ……苦笑し、もう一度ハルピュイアに手を差し出した。
「んじゃ……これからよろしく、ハピィ」
「よろしくお願いします、ハピィ」
「……! おー!」
聡太とミリアの手を握り──ハルピュイアが心底嬉しそうな笑みを見せた。
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