初心者スキル【言語理解】の横に“極致”と載ってるんだが
6話
「ゴッツイ体だなァ……何食えばそうなンだよォ」
「そう言う土御門も、なかなか筋肉があるな。鍛えてるのか?」
「ンなわけねェだろォ。体質だ体質ゥ」
元の世界にある温泉、と言えば良いのだろうか。
何十人という規模の人間が入る事を想定して作られた大浴場……しかし、そこにいるのは、たった3人の少年たちだ。
「……ったくよォ。いつまで辛気臭ェ面してンだァ?」
「……それ、俺に言ってるのか?」
「どうした聡太? 何かあるんなら話せよ?」
「……大丈夫だ。勇輝は気にしないでくれ」
「そうか……ならいいけどよ」
空返事を返す聡太……その頭の中は、自身に刻まれた紋様で埋め尽くされている。
古河 聡太、鬼龍院 勇輝、土御門 虎之介……今の所、それぞれの体のどこかに紋様が刻まれている。
この紋様は、何なのだろうか?
もしかすると……勇者として召喚された全員に、それぞれ紋様が刻まれているのだろうか?
「はぁ……考えてもわからないか……にしても、剣ヶ崎たちはまだ来ないのか?」
「アイツァクソマジメだからなァ。星矢と影人も付き合わされてンだろォ……影人はアレだがァ、星矢は頼まれたら断れねェ性格だからなァ……」
言いながら、苦笑する土御門。
そんな土御門を横目で見て──ふと、女性の声が聞こえた。
「あら……なかなか広いわね」
「ひ、光ちゃん。そんな堂々と入るなんて、たくましすぎるよ……!」
「疑っても仕方がないでしょ? 氷室さんたちも来たらどうかしら? 広いわよ」
「そうは言っても……何があるかわからないじゃない?」
破闇たちの声だ。
聡太たち3人が壁を見上げ──壁の上部が空いている事に気づく。どうやら、あそこから声が聞こえているようだ。
「破闇、そっちにいるのか?」
「この声……古河君? どうしたの?」
「おおおおオイ聡太?! なんで話し掛けてんだ?!」
「うるせぇ勇輝、ちょっと静かにしてろ」
突然破闇に話し掛ける聡太に、勇輝が驚いたような反応を見せるが……聡太の低い声を聞いて、大人しくなった。
もちろん聡太も、いきなり女湯に話し掛けるのは非常識だと理解している。
だけど、どうしても確認したい事があるのだ。
「女子の中に、変なタトゥーみたいな模様が入ってるやつはいないか?」
「……その様子だと、男子にもいるのね?」
「って事は……」
「えぇ。私と優子と獄炎さんに、覚えのない変な模様が入っているわ」
破闇の返事を聞いた聡太は──首を傾げた。
声を聞く限り、氷室もいたはず。氷室と獄炎がいるという事は、水面もそこにいるはず……なのに、紋様が入っているのは、5人中3人?
「色は?」
「私が黒。獄炎さんが茶色。優子が緑色ね」
「どこに入ってるか聞いてもいいか?」
「え? ちょ、それは──」
「私は右の太もも。獄炎さんはお腹。優子はお尻──」
「わーわー! ちょっと光ちゃん!」
何かあったのか、小鳥遊が大声を上げて破闇の声を遮った。
そんな女子たちの声には耳も貸さず……聡太は、さらに集中を深めた。
……紋様の色も、場所も違う。
てっきり、勇者として召喚された全員に刻まれているかと思ったが……氷室と水面には刻まれていない。
何故だ?何の理由がある?
剣ヶ崎たちには、この紋様があるのか?それとも、現在見つかっている6人だけなのか?
「クソ……! 考えれば考えるほど、わけがわかんねぇな……!」
「お前、軽ーく変態だからな? わかってるか?」
「しょうがないだろ。気になったんだから」
「はぁ……それで、何かわかったのか?」
「いや……さっぱりだ」
大きくため息を漏らし、聡太が空を仰ぐ。
「勇者として召喚された全員にあるわけではない……模様があっても、色や場所が違う……何か理由があるのか……?」
「オレは左の脇腹、聡太は背中、土御門は右肩、破闇は右の太もも、獄炎は腹、小鳥遊はケツ……だよな?」
「ちょっと鬼龍院くん! 恥ずかしいからあんまり言わないでよ!」
「あ……ああ、悪い」
壁の向こう側から聴こえる小鳥遊の声に、勇輝が少し顔を赤くさせて謝罪する。
コイツ今、小鳥遊の紋様の位置を想像したな。
親友のムッツリな一面に、聡太が小さく苦笑を浮かべ……だが何もわからない現実に、今度は深々と息を吐き出した。
「……まぁ、特に害は無さそうだし、気にしなくても──」
「みんな! ここにいたのか!」
大浴場の扉が開かれ──その先から、全裸の少年が姿を現す。
突然の大声に、聡太がビクッと肩を跳ね上げ……入ってきた3人の男を見て、『何だお前らか』と肩を下ろした。
「剣ヶ崎か……驚かすなよ」
「古河! これを見てくれ!」
そう言って剣ヶ崎が見せてきたのは──左腕。
剣ヶ崎の左腕を見た聡太は……固まった。
「お前……それ……」
「ボクには覚えがないんだ! 古河ならわかるだろう?!」
剣ヶ崎の左腕に、紫色の紋様が刻まれている。
だが……色も紋様の形も、聡太や勇輝とは違う。別の紋様だ。
「剣ヶ崎にもあるのか……」
「それはどういう──なっ……古河……?! それに、鬼龍院や土御門にも……?!」
聡太が背中を向け……赤色の紋様を見せる。
絶句したように紋様を見つめる剣ヶ崎……そんな剣ヶ崎に向け、聡太がわかっている事を説明し始めた。
「この模様については、俺もよくわからん……わかってる事と言えば、模様の色と、模様の場所……それと、誰に模様が刻まれているか、だな」
「……ちなみに、誰が……?」
「俺と勇輝、それに土御門と剣ヶ崎……女子だと、破闇と小鳥遊と獄炎だ」
「合計7人……なのか……?」
「そこについては何とも言えん。川上先生が模様を持ってるかわからないし……何より、俺たち以外にこの模様を持ってるやつがいる可能性もある……とりあえず、この模様の意味を知りたいな」
浴槽から立ち上がり、聡太がゆっくりと出口へと向かう。
「古河? どこに行くんだ?」
「グローリアの所に行ってくる……あのオッサンなら、この模様の事を何か知ってるかも知れないからな」
「オレも付いて行こうか?」
「んや、俺1人で充分だ」
正直、脳筋の勇輝は話し合いにおいて無力だ。
それなら、聡太1人で話した方が良い。
脱衣所で素早く服を着替え、聡太がグローリアを探して王宮を歩き始めた。
────────────────────
「おや。君は……ソータだったか? 何か用か?」
──美しい女性の絵画が置かれている部屋。
その絵画の目の前に、グローリアがいた。
「……その絵の人が……女神か?」
「そうだ……美しいだろう?」
「ああ……とても絵画とは思えないな……写真みたいだ」
こちらの世界にカメラがあるとは思えないが……『魔道具』という原理不明な道具があるのだ。カメラのような物があると考えても変ではない。
「それで、どうかしたのか? まさか、クラリオン様のお姿を見に来たわけではないだろう?」
「……まあ、そうだな」
言いながら、聡太が黒色の学ランを脱ぎ、その下に着ていた赤色のTシャツを脱いだ。
上裸となり、背中に刻まれている紋様をグローリアに見せる。
「これ、何かわかるか?」
聡太の背中に刻まれている赤色の紋様を見て……グローリアは固まった。
「それ、は……『大罪人』の……?!」
「た、『大罪人』? なんだそりゃ?」
「………………遠い昔に、絶大な力を持っていたとされる七人の『人類族』の事だ」
グローリアの話をまとめると、こういう事らしい。
今から遠い遠い昔、『人類族』は『魔族』と戦争をしていた。
圧倒的な力を持つ『魔族』の王、『魔王』を前に、軟弱な『人類族』は絶滅寸前まで追い込まれた。
そこに現れたのが、七人の『人類族』。
七人にはそれぞれ『憤怒』『強欲』『暴食』『嫉妬』『傲慢』『怠惰』『色欲』という呼び名が付けられていた。
最強と呼ばれていた七人の人間は、大勢の『魔族』をたった七人で退け……さらには、魔王にも致命傷を与えた。
七人の人間たちは、残った『人類族』から英雄と呼ばれ、ヒーローとして扱われた。
だが……平穏は長くは続かなかった。
七人の英雄を疎んだ王族の『人類族』が、嘘を言って七人を国外へと追放した。
『あの強すぎる魔王に致命傷を与えるなんてあり得ない。コイツらは『魔族』と繋がっている』……と、ありもしない嘘を言って、七人を『大罪人』として扱い始めたのだ。
それでも、七人の強さに疑問を持っていた『人類族』は、その嘘を信じてしまった。
魔王の被害を受けていたのは、『人類族』だけでない。『獣人族』や『森精族』も、魔王による被害を受けていた。
故に、七人の『人類族』には居場所がなかった。
いつしか七人は離れ離れになり、それぞれの隠れ家で一生を終える事になる。
今の人々は、その隠れ家の事を──『大罪迷宮』と呼んでいる。
「その紋様は……『大罪人』と呼ばれていた七人の『人類族』それぞれに刻まれていた紋様にそっくりなのだ」
「『大罪迷宮』……って、俺たちに攻略してほしいって言ってた所か?」
「そうだ。『大罪迷宮』には、『大罪人』が残した何かがあるとされる」
「何かって?」
「『十二魔獣』を倒す力かも知れない。『魔族』を絶滅させる力かも知れない。もしくは──世界を滅ぼす力かも知れない」
声を低くするグローリアが、目を細めてそう言った。
「……私たちの事情で、君たち12人を戦いに巻き込んでしまった事は本当に申し訳ないと思っている……だが、我々も必死なのだ。恨まれても仕方がないとは理解して──」
「じゃあさ、1つ頼みを聞いてくれないか?」
「頼み……だと?」
「ああ」
悪ガキっぽく笑い、上裸の聡太が言った。
「本を見せてくれ。こんだけ広い王宮なんだ、図書館ぐらいあるだろ?」
「そう言う土御門も、なかなか筋肉があるな。鍛えてるのか?」
「ンなわけねェだろォ。体質だ体質ゥ」
元の世界にある温泉、と言えば良いのだろうか。
何十人という規模の人間が入る事を想定して作られた大浴場……しかし、そこにいるのは、たった3人の少年たちだ。
「……ったくよォ。いつまで辛気臭ェ面してンだァ?」
「……それ、俺に言ってるのか?」
「どうした聡太? 何かあるんなら話せよ?」
「……大丈夫だ。勇輝は気にしないでくれ」
「そうか……ならいいけどよ」
空返事を返す聡太……その頭の中は、自身に刻まれた紋様で埋め尽くされている。
古河 聡太、鬼龍院 勇輝、土御門 虎之介……今の所、それぞれの体のどこかに紋様が刻まれている。
この紋様は、何なのだろうか?
もしかすると……勇者として召喚された全員に、それぞれ紋様が刻まれているのだろうか?
「はぁ……考えてもわからないか……にしても、剣ヶ崎たちはまだ来ないのか?」
「アイツァクソマジメだからなァ。星矢と影人も付き合わされてンだろォ……影人はアレだがァ、星矢は頼まれたら断れねェ性格だからなァ……」
言いながら、苦笑する土御門。
そんな土御門を横目で見て──ふと、女性の声が聞こえた。
「あら……なかなか広いわね」
「ひ、光ちゃん。そんな堂々と入るなんて、たくましすぎるよ……!」
「疑っても仕方がないでしょ? 氷室さんたちも来たらどうかしら? 広いわよ」
「そうは言っても……何があるかわからないじゃない?」
破闇たちの声だ。
聡太たち3人が壁を見上げ──壁の上部が空いている事に気づく。どうやら、あそこから声が聞こえているようだ。
「破闇、そっちにいるのか?」
「この声……古河君? どうしたの?」
「おおおおオイ聡太?! なんで話し掛けてんだ?!」
「うるせぇ勇輝、ちょっと静かにしてろ」
突然破闇に話し掛ける聡太に、勇輝が驚いたような反応を見せるが……聡太の低い声を聞いて、大人しくなった。
もちろん聡太も、いきなり女湯に話し掛けるのは非常識だと理解している。
だけど、どうしても確認したい事があるのだ。
「女子の中に、変なタトゥーみたいな模様が入ってるやつはいないか?」
「……その様子だと、男子にもいるのね?」
「って事は……」
「えぇ。私と優子と獄炎さんに、覚えのない変な模様が入っているわ」
破闇の返事を聞いた聡太は──首を傾げた。
声を聞く限り、氷室もいたはず。氷室と獄炎がいるという事は、水面もそこにいるはず……なのに、紋様が入っているのは、5人中3人?
「色は?」
「私が黒。獄炎さんが茶色。優子が緑色ね」
「どこに入ってるか聞いてもいいか?」
「え? ちょ、それは──」
「私は右の太もも。獄炎さんはお腹。優子はお尻──」
「わーわー! ちょっと光ちゃん!」
何かあったのか、小鳥遊が大声を上げて破闇の声を遮った。
そんな女子たちの声には耳も貸さず……聡太は、さらに集中を深めた。
……紋様の色も、場所も違う。
てっきり、勇者として召喚された全員に刻まれているかと思ったが……氷室と水面には刻まれていない。
何故だ?何の理由がある?
剣ヶ崎たちには、この紋様があるのか?それとも、現在見つかっている6人だけなのか?
「クソ……! 考えれば考えるほど、わけがわかんねぇな……!」
「お前、軽ーく変態だからな? わかってるか?」
「しょうがないだろ。気になったんだから」
「はぁ……それで、何かわかったのか?」
「いや……さっぱりだ」
大きくため息を漏らし、聡太が空を仰ぐ。
「勇者として召喚された全員にあるわけではない……模様があっても、色や場所が違う……何か理由があるのか……?」
「オレは左の脇腹、聡太は背中、土御門は右肩、破闇は右の太もも、獄炎は腹、小鳥遊はケツ……だよな?」
「ちょっと鬼龍院くん! 恥ずかしいからあんまり言わないでよ!」
「あ……ああ、悪い」
壁の向こう側から聴こえる小鳥遊の声に、勇輝が少し顔を赤くさせて謝罪する。
コイツ今、小鳥遊の紋様の位置を想像したな。
親友のムッツリな一面に、聡太が小さく苦笑を浮かべ……だが何もわからない現実に、今度は深々と息を吐き出した。
「……まぁ、特に害は無さそうだし、気にしなくても──」
「みんな! ここにいたのか!」
大浴場の扉が開かれ──その先から、全裸の少年が姿を現す。
突然の大声に、聡太がビクッと肩を跳ね上げ……入ってきた3人の男を見て、『何だお前らか』と肩を下ろした。
「剣ヶ崎か……驚かすなよ」
「古河! これを見てくれ!」
そう言って剣ヶ崎が見せてきたのは──左腕。
剣ヶ崎の左腕を見た聡太は……固まった。
「お前……それ……」
「ボクには覚えがないんだ! 古河ならわかるだろう?!」
剣ヶ崎の左腕に、紫色の紋様が刻まれている。
だが……色も紋様の形も、聡太や勇輝とは違う。別の紋様だ。
「剣ヶ崎にもあるのか……」
「それはどういう──なっ……古河……?! それに、鬼龍院や土御門にも……?!」
聡太が背中を向け……赤色の紋様を見せる。
絶句したように紋様を見つめる剣ヶ崎……そんな剣ヶ崎に向け、聡太がわかっている事を説明し始めた。
「この模様については、俺もよくわからん……わかってる事と言えば、模様の色と、模様の場所……それと、誰に模様が刻まれているか、だな」
「……ちなみに、誰が……?」
「俺と勇輝、それに土御門と剣ヶ崎……女子だと、破闇と小鳥遊と獄炎だ」
「合計7人……なのか……?」
「そこについては何とも言えん。川上先生が模様を持ってるかわからないし……何より、俺たち以外にこの模様を持ってるやつがいる可能性もある……とりあえず、この模様の意味を知りたいな」
浴槽から立ち上がり、聡太がゆっくりと出口へと向かう。
「古河? どこに行くんだ?」
「グローリアの所に行ってくる……あのオッサンなら、この模様の事を何か知ってるかも知れないからな」
「オレも付いて行こうか?」
「んや、俺1人で充分だ」
正直、脳筋の勇輝は話し合いにおいて無力だ。
それなら、聡太1人で話した方が良い。
脱衣所で素早く服を着替え、聡太がグローリアを探して王宮を歩き始めた。
────────────────────
「おや。君は……ソータだったか? 何か用か?」
──美しい女性の絵画が置かれている部屋。
その絵画の目の前に、グローリアがいた。
「……その絵の人が……女神か?」
「そうだ……美しいだろう?」
「ああ……とても絵画とは思えないな……写真みたいだ」
こちらの世界にカメラがあるとは思えないが……『魔道具』という原理不明な道具があるのだ。カメラのような物があると考えても変ではない。
「それで、どうかしたのか? まさか、クラリオン様のお姿を見に来たわけではないだろう?」
「……まあ、そうだな」
言いながら、聡太が黒色の学ランを脱ぎ、その下に着ていた赤色のTシャツを脱いだ。
上裸となり、背中に刻まれている紋様をグローリアに見せる。
「これ、何かわかるか?」
聡太の背中に刻まれている赤色の紋様を見て……グローリアは固まった。
「それ、は……『大罪人』の……?!」
「た、『大罪人』? なんだそりゃ?」
「………………遠い昔に、絶大な力を持っていたとされる七人の『人類族』の事だ」
グローリアの話をまとめると、こういう事らしい。
今から遠い遠い昔、『人類族』は『魔族』と戦争をしていた。
圧倒的な力を持つ『魔族』の王、『魔王』を前に、軟弱な『人類族』は絶滅寸前まで追い込まれた。
そこに現れたのが、七人の『人類族』。
七人にはそれぞれ『憤怒』『強欲』『暴食』『嫉妬』『傲慢』『怠惰』『色欲』という呼び名が付けられていた。
最強と呼ばれていた七人の人間は、大勢の『魔族』をたった七人で退け……さらには、魔王にも致命傷を与えた。
七人の人間たちは、残った『人類族』から英雄と呼ばれ、ヒーローとして扱われた。
だが……平穏は長くは続かなかった。
七人の英雄を疎んだ王族の『人類族』が、嘘を言って七人を国外へと追放した。
『あの強すぎる魔王に致命傷を与えるなんてあり得ない。コイツらは『魔族』と繋がっている』……と、ありもしない嘘を言って、七人を『大罪人』として扱い始めたのだ。
それでも、七人の強さに疑問を持っていた『人類族』は、その嘘を信じてしまった。
魔王の被害を受けていたのは、『人類族』だけでない。『獣人族』や『森精族』も、魔王による被害を受けていた。
故に、七人の『人類族』には居場所がなかった。
いつしか七人は離れ離れになり、それぞれの隠れ家で一生を終える事になる。
今の人々は、その隠れ家の事を──『大罪迷宮』と呼んでいる。
「その紋様は……『大罪人』と呼ばれていた七人の『人類族』それぞれに刻まれていた紋様にそっくりなのだ」
「『大罪迷宮』……って、俺たちに攻略してほしいって言ってた所か?」
「そうだ。『大罪迷宮』には、『大罪人』が残した何かがあるとされる」
「何かって?」
「『十二魔獣』を倒す力かも知れない。『魔族』を絶滅させる力かも知れない。もしくは──世界を滅ぼす力かも知れない」
声を低くするグローリアが、目を細めてそう言った。
「……私たちの事情で、君たち12人を戦いに巻き込んでしまった事は本当に申し訳ないと思っている……だが、我々も必死なのだ。恨まれても仕方がないとは理解して──」
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