黒いレストラン

クロネコカナ

黒いレストラン

黒い霧の間を歩く
それは、見えないなにかの具現化

ここのオーナーは悪趣味だ、なんて
とうの昔の話
今じゃ、これが普通
そう、楽観的なのは自分が
この世界に踏み入って 浅いはずなのに
昔から知ってる世界だからだろう

数あるテーブルと数ある椅子の間を歩く
ここは"Human poison emotion"
日本語訳すると"害ある感情の人間"
なんてネーミングセンスのないオーナー
でも、その名前はこの店にぴったりなんだろう

ここは、レストラン
テーブルの上には美味しそうな料理が並べられていて
外に行列ができるほど人気のレストランなのだ

ステキなサイコーレストラン
オーナーと従業員だけがしる、あるひとつの秘密を除けば...



運ばれるきらびやかな料理
きらきらに輝くお客様の瞳
1部きりぬけば、人気レストランの風景

でも、お客様の会話に耳を大きくする
ううん、本当はお客様の心の方に

"あーあ、嫌だわぁ...仕事やめたーい"
"ここの料理はサイコーだ!妻の料理ときたら...はぁ"
"その食べ方どーなの?別れたいなぁ..."

心から漏れる罵詈雑言
口から出る黒い霧

そう、黒い霧
害ある感情
その、黒い霧はタバコを吸う人が吐き出す煙のよう

お客様には見えない黒い霧
お客様には聞こえない感情
従業員には見える黒い霧
従業員には聞こえる感情

オーナーはその罵詈雑言に恍惚と見蕩れていた
なんて悪趣味のレストラン
なんて悪趣味のオーナー



テーブルの真ん中に置かれている黒い壺
壺には不思議な力があって
お客様が吐き出した黒い霧を吸収する力がある

オーナーは開店当時から黒い霧を集めて"食べている"

食べたことは無いが、美味しいらしい
不味きゃ食べないだろう
赤の他人の不の感情を、ましてやお客様の罵詈雑言を
自分の腹の満たしにするなんて、頭がイカれてる
なんて、でも...
そんな人間は世の中商売にしないだけで5万といるんだろう



ガタンっ!!

突然大きな音が響く
レストランの一角
テーブルの上に座っているお客様1人
顔が魚のように醜くなっていた
そんなお客様は入れた覚えはないが、問題はそこじゃぁない

お客様の手には、あの黒い壺

お客様の目は魚のようにギョロギョロ
お客様の口は魚のように膨らんでいる
もう、姿形まで魚のように見えてきた
吐く息は黒い霧

あぁ、大変だ

お客様の前で店員がオロオロとして叫んでいた

「お、お、お、お客様落ち着いてください!」
まずは、お前が落ち着け

あのお客様は、もうお客様じゃない

黒い霧を食べた人間は、もう、"元には戻らない"



切り刻んだ色とりどりの料理
肉、魚、野菜...
いろんな料理がある

シェフは自慢の腕を振るいパパパと作ってしまう

「今日のモノも最高級だな」
シェフがいう

「あぁ、1匹いいのが釣れたよ」
と、オーナー

「ハハハッまた、繁盛するな」

「まったく本当だよ」

アハハハハとシェフとオーナー

出来上がった魚料理
材料は1匹の黒い魚


ようこそ、Human poison emotionへ

最高級の料理をご提供します
ささ、奥へどうぞ
極上のお客様...従業員一同笑顔で御出迎えします

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