ウイニー王国のワガママ姫
約束の深意 2
力強く抱きしめられて驚いて見上げると、銀髪の額に角の生えた青年が私を険しい顔で見下ろしていた。
「…貴方はだあれ?何処かでお会いしたかしら?」
首を傾げて尋ねると、とても辛そうに彼は顔を歪めた。
『ゼイルだよ。貴女が俺につけてくれた名前だ』
「私が?貴方に?…ごめんなさい。覚えてないわ」
申し訳なく思って謝ると、彼は少し悲しそうに「謝らないで」と呟いた。
『行こうレティアーナ。フィオが待ってる。ほら、あそこを見て』
ゼイルが指を指した方を見る。すると真っ白な空間だった所が暗闇に包まれていた。
「嫌…あっちは怖いわ。行きたくない」
奥の方から徐々に闇が迫ってきていた。冷たく暗い闇の気配に怯えて慌ててまた扉の中へと入ろうと彼の腕を振り払おうとして暴れる。けれど彼の腕はビクともせずに逆にさらに強い力で抑え込まれてしまった。
『レティアーナ。落ち着いて、大丈夫だから。もっとよく見て』
不安になって彼を見上げる。すると彼はにっこり微笑んで私の頭を撫でた。
言われた方向をもう一度よく見る。すると闇の中に微かに小さく光る何かがみえた。
「あれは?」
何かしら…すごく惹かれる光だわ。
『怖くないよ。ぼくも途中まで一緒に行ってあげる』
いつの間にいたのか小さな男の子が足元でスカートの裾を握ってきていた。
「貴方はだあれ?」
『みんこ!みんこだよぅ!忘れちゃやだぁ』
そう言ってみんこは大泣きし始めてしまった。私がオロオロと困っていると、隣に居た彼がみんこの頭をゴツンと叩く。
『うるせぇ!そんくらいでいちいち泣くな!レティアーナが困ってるだろ!』
『だってゆにこーん。レティが直ぐに忘れちゃうんだ!みんな忘れちゃう!ぼくいやだよぅ』
「あの、喧嘩しないで…」
2人を宥めるとゆにこーんが私の右手を、みんこが私の左手を掴んで引っ張るように歩き出した。
『とにかくあそこに行こう。あそこに行けば全部思い出す筈だ』
『いそいでレティ!いそいで!』
「えっ、あの…ま、まってっ」
すぐそこまで来ていた闇の中を2人は私を引きずってぐんぐんと進んでいく。足元は冷たくて奥に行けば行くほど凍えるような寒さだった。
「怖いわ…」
進めば進む程恐怖と寒さ、そして胸の中が焼けるような気持ち悪い不快感と倦怠感に襲われる。重くなりつつある歩みを叱咤するかのように、手を引く2人が私に声をかけてきた。
『もう少しだ。ほら、もう目の前にある』
『手を差し出してレティ!』
パッと顔をあげれば本当に直ぐそこに小さな光がほんのりと浮かび上がっていた。
男の子に言われたとおり両手を光に差し伸べると光の中から小さな蜜蜂が現れ私の額にピタリと止まった。
ーー"アサル"
何処からともなくそんな声が聞こえてきた。
(誰かが私を呼んでる)
どこか惹かれる声。一体どこから聞こえて来るのかしら?
そう思った時、額に止まっていた蜜蜂がふわふわと奥へと飛んで行く。
(追いかけないと)
何となくそう思って必死になって追い掛けた。追いかければ追いかける程不快感は増すのに、追いかけないといけないと進めば進む程強く思う。
「待って!置いていかないで!」
蜜蜂に手を伸ばして捕まえる。
すると今度はハッキリとその声が耳元で聞こえてきた。
ーー戻ってきて下さい。ーー"アサル"
蜜蜂を掴んだ手の先から体が光に包まれる。眩い光に目を閉じると、近くにいた筈の青年と小さな男の子の声が遠くで聞こえた気がした。
「…貴方はだあれ?何処かでお会いしたかしら?」
首を傾げて尋ねると、とても辛そうに彼は顔を歪めた。
『ゼイルだよ。貴女が俺につけてくれた名前だ』
「私が?貴方に?…ごめんなさい。覚えてないわ」
申し訳なく思って謝ると、彼は少し悲しそうに「謝らないで」と呟いた。
『行こうレティアーナ。フィオが待ってる。ほら、あそこを見て』
ゼイルが指を指した方を見る。すると真っ白な空間だった所が暗闇に包まれていた。
「嫌…あっちは怖いわ。行きたくない」
奥の方から徐々に闇が迫ってきていた。冷たく暗い闇の気配に怯えて慌ててまた扉の中へと入ろうと彼の腕を振り払おうとして暴れる。けれど彼の腕はビクともせずに逆にさらに強い力で抑え込まれてしまった。
『レティアーナ。落ち着いて、大丈夫だから。もっとよく見て』
不安になって彼を見上げる。すると彼はにっこり微笑んで私の頭を撫でた。
言われた方向をもう一度よく見る。すると闇の中に微かに小さく光る何かがみえた。
「あれは?」
何かしら…すごく惹かれる光だわ。
『怖くないよ。ぼくも途中まで一緒に行ってあげる』
いつの間にいたのか小さな男の子が足元でスカートの裾を握ってきていた。
「貴方はだあれ?」
『みんこ!みんこだよぅ!忘れちゃやだぁ』
そう言ってみんこは大泣きし始めてしまった。私がオロオロと困っていると、隣に居た彼がみんこの頭をゴツンと叩く。
『うるせぇ!そんくらいでいちいち泣くな!レティアーナが困ってるだろ!』
『だってゆにこーん。レティが直ぐに忘れちゃうんだ!みんな忘れちゃう!ぼくいやだよぅ』
「あの、喧嘩しないで…」
2人を宥めるとゆにこーんが私の右手を、みんこが私の左手を掴んで引っ張るように歩き出した。
『とにかくあそこに行こう。あそこに行けば全部思い出す筈だ』
『いそいでレティ!いそいで!』
「えっ、あの…ま、まってっ」
すぐそこまで来ていた闇の中を2人は私を引きずってぐんぐんと進んでいく。足元は冷たくて奥に行けば行くほど凍えるような寒さだった。
「怖いわ…」
進めば進む程恐怖と寒さ、そして胸の中が焼けるような気持ち悪い不快感と倦怠感に襲われる。重くなりつつある歩みを叱咤するかのように、手を引く2人が私に声をかけてきた。
『もう少しだ。ほら、もう目の前にある』
『手を差し出してレティ!』
パッと顔をあげれば本当に直ぐそこに小さな光がほんのりと浮かび上がっていた。
男の子に言われたとおり両手を光に差し伸べると光の中から小さな蜜蜂が現れ私の額にピタリと止まった。
ーー"アサル"
何処からともなくそんな声が聞こえてきた。
(誰かが私を呼んでる)
どこか惹かれる声。一体どこから聞こえて来るのかしら?
そう思った時、額に止まっていた蜜蜂がふわふわと奥へと飛んで行く。
(追いかけないと)
何となくそう思って必死になって追い掛けた。追いかければ追いかける程不快感は増すのに、追いかけないといけないと進めば進む程強く思う。
「待って!置いていかないで!」
蜜蜂に手を伸ばして捕まえる。
すると今度はハッキリとその声が耳元で聞こえてきた。
ーー戻ってきて下さい。ーー"アサル"
蜜蜂を掴んだ手の先から体が光に包まれる。眩い光に目を閉じると、近くにいた筈の青年と小さな男の子の声が遠くで聞こえた気がした。
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