ウイニー王国のワガママ姫
たったひとつの奇跡 2【フィオ編@リオ】
話を遮られたのが不快だったのか、女王は機嫌が悪そうにゲイリーを睨み付けた。
『お主…騎士なら騎士らしく王の話を遮るでない!不敬なるぞ』
『も、申し訳御座いません』
珍しく決まり悪そうにゲイリーは頭を下げる。女王は「フン!」と鼻で息を吐くと再び話を再開した。
『まあ良い。お主の言う通りじゃ。妾はあの娘に毒を送り、あの娘が自ら死を選ぶ様に仕向けたのじゃ……殆ど賭けに近かったがの』
『なん…だと……!!』
ずっと黙って話を聞いていたフィオが顔を赤くして怒りに震える。
(マズい!今度こそ止められなくなるぞ!!)
『フィオ落ち着け!!』
『うるさい!!お前がっ!お前がレティを死に追いやったというのかっ!!』
掴みかかろうとするフィオを女王は避ける事なく目の前で片手を上げて金色の膜を自らの周りに張り巡らせた。
途端フィオは女王に近づくことが出来なくなり、そのまま苦しげに後ずさった。
『うるさいのはお主じゃ。まったく今までの話はちゃんと聞いておったのか?レティアーナの死は避けられなかったのじゃ。その中で可能性を妾が選んだだけじゃ。因みにあの毒は仮死毒じゃ。とはいえ放っておけば本当に死ぬぞぇ』
『仮死だと…?ならレティはまだ生きているのか!?』
女王の周りに張ってある膜で近づけないフィオは目を見開いて女王に喰い掛かる。
それが本当ならばレティはやはり助かるという事か?
女王は目を細め満足そうに頷くと、急に真面目な顔になりフィオに言い聞かせる。
『だがお主がレティアーナの死を認めねば救うことが出来ん。仮死とはいえ死は死じゃ。今は妾の神獣がレティアーナの魂を引き止めておるが、あまり長い時間引き止め続けるのは良くない。魂は摩耗して行ってしまうのじゃ。しかし今のままでは魂を連れ戻すのに必要なものが足りん』
『僕が認めれば…レティは助かると?』
微かにフィオの髪の色に本来の鳶色が混ざり揺らめく。戸惑いを顕にするフィオを女王は厳しい目で見据えていた。
『そうじゃ。だがそれも条件の一つに過ぎん。お主がフィオディールとして唯一起こせる奇跡の為の条件の一つじゃ。神獣と同化した状態で出来るものでは無いぞ。あの娘を助けたければ2人ともレティアーナの死を受け入れあるべき姿に戻れ!』
女王はそう叫ぶとフィオに向かって金色の膜をを解き放つ。
『!!っ』
光を浴びたフィオは苦痛に顔を歪めながら声にならない絶叫を上げる。
『その苦痛忘れるでないぞ。お主が犯した業の重さのほんの一部に過ぎん』
女王が静かに言う中で、膜はフィオを通り抜け、中空に丸い光の玉となって留まった。
その光はやがて人の形を成し、跪ながら姿を現した。
『礼を言おう…眠虎の主』
角の映えた銀色の髪の青年が額から汗を流し苦しげに女王に言った。
呆然と立ち尽くしていたフィオは、血塗れではあるが髪の色も目の色も元の鳶色戻っていた。
俺達が漸くホッと息をついていると、女王は妖艶な笑みを浮かべながら頷き銀色の髪の青年に言った。
『よい、お主かなり面倒な主に仕えておるのぅ。心から同情するぞぇ』
**********
その後女王はとりあえずレティを城へ連れてくるようにと指示を出した。
ゲイリーと雪狐が機転を効かせてくれていたお陰で遺体の状態は良いと女王は満足そうに頷いた。
レティは城の中でも1番綺麗だったフィオの母上が生前に使用していた部屋へと連れて来られた。
部屋とレティを汚すわけにはいかないと、返り血で汚れていた俺達は1度身を清めてから部屋へと入る。一番最後に入って来たのはやはり血の量が多かったフィオだった。
ベッドの上で静かに眠るように横たわるレティの姿を認めると、フィオはフラフラとおぼつかない足取りでレティの側へと歩み寄った。
「レティ…レティ!!すみません!!こんな…こんな事にっ……」
組まれた手をギュッと握りしめてフィオは崩れ落ちた。
暫くレティの手を握りしめたまま何かを堪える様に俯いていたフィオは、やがて唇を噛み締めて顔を上げた。
「それで、どうすればいいんですか?」
向かい側に立っていた女王に向かって睨む形でフィオは問いかける。
女王も神妙に頷くと、フィオのポケットを指差した。
「ユニコーンを使うのじゃ。何時ものように夢を辿れ。行き先は妾が導こう」
「そこにレティが居るんですか?」
フィオが問えば女王は首を横に振る。
「居るには居る。が、今のレティではない。お主の意識はこれより過去へ飛ばされる。お主が選んだ過去ではない、数ある可能性の中の過去じゃ。そこで起こる事は実際の過去ではなく、お主達が選ぶことの無かった未来が過去へと変化したものじゃ。ここにいるお主やレティアーナに影響は与えぬが、あまり余計な事をしてはいかんぞ?それを踏まえた上で、じゃ。よいか?チャンスは1度きりしかないぞ。そこでお主はあの娘の名を聞き出すのじゃ」
「名前を?レティの名前なら僕ちゃんと知ってますが…」
眉を顰めて言うフィオに女王は再び首を横に振った。
「その名は意味がない。妾があの娘に与えた真名じゃ。真名には魂の一部が宿っておる。あの娘の口からそれを聞き、あの娘の魂の一部を受け取るのじゃ。受け取った後はここにいる本人に返してやれば良い。それでレティアーナは目覚める筈じゃ」
「真名…」
フィオはレティを見つめると、目を伏せて頷く。
「判りました。名前を尋ねればいいんですね?」
「そうじゃ。忘れるでないぞ?チャンスは一度しかないからの」
フィオは再び頷くと俺達の方へと視線を配り、またレティに視線を戻すと最後にポツリとフィオは言った。
「レティ、待ってて下さい。絶対助けますから」
目を閉じて呪文を唱えるとフィオはベッドに伏せる様に眠りについた。
向かいに居た金色の瞳の女王は、ベッドで眠る2人の頭に手を当てて静かに目を伏せ瞑想に入った。
『お主…騎士なら騎士らしく王の話を遮るでない!不敬なるぞ』
『も、申し訳御座いません』
珍しく決まり悪そうにゲイリーは頭を下げる。女王は「フン!」と鼻で息を吐くと再び話を再開した。
『まあ良い。お主の言う通りじゃ。妾はあの娘に毒を送り、あの娘が自ら死を選ぶ様に仕向けたのじゃ……殆ど賭けに近かったがの』
『なん…だと……!!』
ずっと黙って話を聞いていたフィオが顔を赤くして怒りに震える。
(マズい!今度こそ止められなくなるぞ!!)
『フィオ落ち着け!!』
『うるさい!!お前がっ!お前がレティを死に追いやったというのかっ!!』
掴みかかろうとするフィオを女王は避ける事なく目の前で片手を上げて金色の膜を自らの周りに張り巡らせた。
途端フィオは女王に近づくことが出来なくなり、そのまま苦しげに後ずさった。
『うるさいのはお主じゃ。まったく今までの話はちゃんと聞いておったのか?レティアーナの死は避けられなかったのじゃ。その中で可能性を妾が選んだだけじゃ。因みにあの毒は仮死毒じゃ。とはいえ放っておけば本当に死ぬぞぇ』
『仮死だと…?ならレティはまだ生きているのか!?』
女王の周りに張ってある膜で近づけないフィオは目を見開いて女王に喰い掛かる。
それが本当ならばレティはやはり助かるという事か?
女王は目を細め満足そうに頷くと、急に真面目な顔になりフィオに言い聞かせる。
『だがお主がレティアーナの死を認めねば救うことが出来ん。仮死とはいえ死は死じゃ。今は妾の神獣がレティアーナの魂を引き止めておるが、あまり長い時間引き止め続けるのは良くない。魂は摩耗して行ってしまうのじゃ。しかし今のままでは魂を連れ戻すのに必要なものが足りん』
『僕が認めれば…レティは助かると?』
微かにフィオの髪の色に本来の鳶色が混ざり揺らめく。戸惑いを顕にするフィオを女王は厳しい目で見据えていた。
『そうじゃ。だがそれも条件の一つに過ぎん。お主がフィオディールとして唯一起こせる奇跡の為の条件の一つじゃ。神獣と同化した状態で出来るものでは無いぞ。あの娘を助けたければ2人ともレティアーナの死を受け入れあるべき姿に戻れ!』
女王はそう叫ぶとフィオに向かって金色の膜をを解き放つ。
『!!っ』
光を浴びたフィオは苦痛に顔を歪めながら声にならない絶叫を上げる。
『その苦痛忘れるでないぞ。お主が犯した業の重さのほんの一部に過ぎん』
女王が静かに言う中で、膜はフィオを通り抜け、中空に丸い光の玉となって留まった。
その光はやがて人の形を成し、跪ながら姿を現した。
『礼を言おう…眠虎の主』
角の映えた銀色の髪の青年が額から汗を流し苦しげに女王に言った。
呆然と立ち尽くしていたフィオは、血塗れではあるが髪の色も目の色も元の鳶色戻っていた。
俺達が漸くホッと息をついていると、女王は妖艶な笑みを浮かべながら頷き銀色の髪の青年に言った。
『よい、お主かなり面倒な主に仕えておるのぅ。心から同情するぞぇ』
**********
その後女王はとりあえずレティを城へ連れてくるようにと指示を出した。
ゲイリーと雪狐が機転を効かせてくれていたお陰で遺体の状態は良いと女王は満足そうに頷いた。
レティは城の中でも1番綺麗だったフィオの母上が生前に使用していた部屋へと連れて来られた。
部屋とレティを汚すわけにはいかないと、返り血で汚れていた俺達は1度身を清めてから部屋へと入る。一番最後に入って来たのはやはり血の量が多かったフィオだった。
ベッドの上で静かに眠るように横たわるレティの姿を認めると、フィオはフラフラとおぼつかない足取りでレティの側へと歩み寄った。
「レティ…レティ!!すみません!!こんな…こんな事にっ……」
組まれた手をギュッと握りしめてフィオは崩れ落ちた。
暫くレティの手を握りしめたまま何かを堪える様に俯いていたフィオは、やがて唇を噛み締めて顔を上げた。
「それで、どうすればいいんですか?」
向かい側に立っていた女王に向かって睨む形でフィオは問いかける。
女王も神妙に頷くと、フィオのポケットを指差した。
「ユニコーンを使うのじゃ。何時ものように夢を辿れ。行き先は妾が導こう」
「そこにレティが居るんですか?」
フィオが問えば女王は首を横に振る。
「居るには居る。が、今のレティではない。お主の意識はこれより過去へ飛ばされる。お主が選んだ過去ではない、数ある可能性の中の過去じゃ。そこで起こる事は実際の過去ではなく、お主達が選ぶことの無かった未来が過去へと変化したものじゃ。ここにいるお主やレティアーナに影響は与えぬが、あまり余計な事をしてはいかんぞ?それを踏まえた上で、じゃ。よいか?チャンスは1度きりしかないぞ。そこでお主はあの娘の名を聞き出すのじゃ」
「名前を?レティの名前なら僕ちゃんと知ってますが…」
眉を顰めて言うフィオに女王は再び首を横に振った。
「その名は意味がない。妾があの娘に与えた真名じゃ。真名には魂の一部が宿っておる。あの娘の口からそれを聞き、あの娘の魂の一部を受け取るのじゃ。受け取った後はここにいる本人に返してやれば良い。それでレティアーナは目覚める筈じゃ」
「真名…」
フィオはレティを見つめると、目を伏せて頷く。
「判りました。名前を尋ねればいいんですね?」
「そうじゃ。忘れるでないぞ?チャンスは一度しかないからの」
フィオは再び頷くと俺達の方へと視線を配り、またレティに視線を戻すと最後にポツリとフィオは言った。
「レティ、待ってて下さい。絶対助けますから」
目を閉じて呪文を唱えるとフィオはベッドに伏せる様に眠りについた。
向かいに居た金色の瞳の女王は、ベッドで眠る2人の頭に手を当てて静かに目を伏せ瞑想に入った。
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