ウイニー王国のワガママ姫
絶望の城 1【フィオ編@リオ】
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戦闘を開始して一刻半が過ぎた。
街の中はほぼ制圧し、城の中を残す所となっていたのだが…
(なんだこれは…これをフィオ1人でやったというのか!?)
城の中から響き渡る悲鳴とフィオの笑い声に恐怖を感じ、立ち尽くしていた兵達が正気を取り戻し中へと入った頃には外壁の兵士達はほぼ全滅していた。
正気を失った兵が頭を抱えて震え上がっている姿も見て取れたが、殆どの者が死に絶えていたのだ。
恐ろしいのは兵達に抵抗した形跡が一切なく、壁や床に血の吹き出した後や引きずったような跡が至る所で見られた事だ。
「おいおい…冗談だろ?朝から普通じゃねぇとは思っていたがどうしちまったんだ主は」
ウルフが愕然と立ち尽くしながら言う言葉が同じように横で立ち尽くしていた俺の耳を通過して行った。
昨日までは元気はなかったがそれでも普通だった筈だ。それが今朝になって何故ああなった?
時間が経てば経つ程顕著にフィオの様子がおかしくなっていくのが感じ取れた。
(それにあの壁を切り裂いた力…)
普段フィオが使う技の倍以上の力が発揮されていた様に見える。開戦直前に届いたゲイリーからの手紙によれば時折頭に血が上ると神獣の力に引きずられて暴走する事があったらしいが、原因不明でそうなる事は無かったらしい。しかも暴走は長時間は続かないとゲイリーの手紙には書いてあった。
「ひとしきり暴れれば満足して元に戻るんじゃなかったのか?」
朝からあの状態で既にもう昼を過ぎている。にも関わらずフィオは依然城の奥へと向かって暴走し続けていた。
「まさか国王殺すまであの状態って事は無いっスよね?!」
「それならばまだ良いが、なんか嫌な予感がする…」
神獣の力に引きずられて暴走する事があるなんて話は雪狐に聞いていなかった。
それは俺が雪狐と付かず離れずの関係だったからかもしれないが、暴走するなどという事は一度もなかったからだ。
「時間経過と共におかしくなっていくフィオの様子、最終的に完全に正気を失う何て事は無いよな…?」
「や…やだなぁ、冗談はやめて下さいよ。ハ、ハハハハ……」
ゾッとしてウルフと思わず顔を見合わせる。引き攣った顔でウルフが言うと、流石にこのままではマズいだろうと俺は顎に手を当て思案し始める。
「こう言った経験は無いからな…雪狐なら何か知ってるかも知れんが…ゲイリー達の状況を確認する必要があるな」
不幸中の幸いというかフィオが暴れてくれたおかげで後処理は傭兵と雪狐だけで十分出来そうだった。
ならばこの戦争を早く終わらせる為にも夢想を海上戦へ移動させるのが得策か。
「夢想兵を纏められる奴は居るか?」
近くに居た夢想兵達に声を掛ける。すると中から何人か隊長職を任されたであろう兵士が進み出てきた。
「よし、お前達夢想は誰でも転移が出来るんだよな?ならば今から夢想はゲイリー達と合流し海上戦の方を手助けしてこい。夢想は俺管轄じゃないが、今の状況は解ってるな?ゲイリーや雪狐がどうしても必要だ」
夢想兵達は嫌な顔一つせずに神妙に頷く。
「フィオディール様をお願い致します。こちらもなるべく早く戻って来れるように努めます」
「すまない。頼んだぞ」
消える夢想兵を見送るとウルフへと向き直る。
「俺達は兄上を探す。フィオが兄上と接触する前に見つけるぞ。目的を達成したフィオが正気を取り戻すとは限らないからな…」
おそらく二つに一つだろう。
「見つけてどうするんスか?まさか匿うだなんて…」
「ゲイリー達が来るまで時間稼ぎをするだけだ。フィオに裏切りと取られれば逆鱗に触れるだけだからな。フィオと接触したら言葉は慎重に選べよ」
ウルフは思わずゴクリと生唾を飲み、
「俺が最も苦手な事を…俺ここで死ぬのか?」
と、天を仰ぎながら呟いた。
戦闘を開始して一刻半が過ぎた。
街の中はほぼ制圧し、城の中を残す所となっていたのだが…
(なんだこれは…これをフィオ1人でやったというのか!?)
城の中から響き渡る悲鳴とフィオの笑い声に恐怖を感じ、立ち尽くしていた兵達が正気を取り戻し中へと入った頃には外壁の兵士達はほぼ全滅していた。
正気を失った兵が頭を抱えて震え上がっている姿も見て取れたが、殆どの者が死に絶えていたのだ。
恐ろしいのは兵達に抵抗した形跡が一切なく、壁や床に血の吹き出した後や引きずったような跡が至る所で見られた事だ。
「おいおい…冗談だろ?朝から普通じゃねぇとは思っていたがどうしちまったんだ主は」
ウルフが愕然と立ち尽くしながら言う言葉が同じように横で立ち尽くしていた俺の耳を通過して行った。
昨日までは元気はなかったがそれでも普通だった筈だ。それが今朝になって何故ああなった?
時間が経てば経つ程顕著にフィオの様子がおかしくなっていくのが感じ取れた。
(それにあの壁を切り裂いた力…)
普段フィオが使う技の倍以上の力が発揮されていた様に見える。開戦直前に届いたゲイリーからの手紙によれば時折頭に血が上ると神獣の力に引きずられて暴走する事があったらしいが、原因不明でそうなる事は無かったらしい。しかも暴走は長時間は続かないとゲイリーの手紙には書いてあった。
「ひとしきり暴れれば満足して元に戻るんじゃなかったのか?」
朝からあの状態で既にもう昼を過ぎている。にも関わらずフィオは依然城の奥へと向かって暴走し続けていた。
「まさか国王殺すまであの状態って事は無いっスよね?!」
「それならばまだ良いが、なんか嫌な予感がする…」
神獣の力に引きずられて暴走する事があるなんて話は雪狐に聞いていなかった。
それは俺が雪狐と付かず離れずの関係だったからかもしれないが、暴走するなどという事は一度もなかったからだ。
「時間経過と共におかしくなっていくフィオの様子、最終的に完全に正気を失う何て事は無いよな…?」
「や…やだなぁ、冗談はやめて下さいよ。ハ、ハハハハ……」
ゾッとしてウルフと思わず顔を見合わせる。引き攣った顔でウルフが言うと、流石にこのままではマズいだろうと俺は顎に手を当て思案し始める。
「こう言った経験は無いからな…雪狐なら何か知ってるかも知れんが…ゲイリー達の状況を確認する必要があるな」
不幸中の幸いというかフィオが暴れてくれたおかげで後処理は傭兵と雪狐だけで十分出来そうだった。
ならばこの戦争を早く終わらせる為にも夢想を海上戦へ移動させるのが得策か。
「夢想兵を纏められる奴は居るか?」
近くに居た夢想兵達に声を掛ける。すると中から何人か隊長職を任されたであろう兵士が進み出てきた。
「よし、お前達夢想は誰でも転移が出来るんだよな?ならば今から夢想はゲイリー達と合流し海上戦の方を手助けしてこい。夢想は俺管轄じゃないが、今の状況は解ってるな?ゲイリーや雪狐がどうしても必要だ」
夢想兵達は嫌な顔一つせずに神妙に頷く。
「フィオディール様をお願い致します。こちらもなるべく早く戻って来れるように努めます」
「すまない。頼んだぞ」
消える夢想兵を見送るとウルフへと向き直る。
「俺達は兄上を探す。フィオが兄上と接触する前に見つけるぞ。目的を達成したフィオが正気を取り戻すとは限らないからな…」
おそらく二つに一つだろう。
「見つけてどうするんスか?まさか匿うだなんて…」
「ゲイリー達が来るまで時間稼ぎをするだけだ。フィオに裏切りと取られれば逆鱗に触れるだけだからな。フィオと接触したら言葉は慎重に選べよ」
ウルフは思わずゴクリと生唾を飲み、
「俺が最も苦手な事を…俺ここで死ぬのか?」
と、天を仰ぎながら呟いた。
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