ウイニー王国のワガママ姫
思わぬ誤算 5【フィオ編】
「そもそも何故最初の時点で怪しい依頼だと思ったのに引き受けたんですか?僕なら怪しいと踏んだ時点でお断りします」
甘いなぁにぃちゃんと男は笑う。
「怪しい依頼ってのは聞いちまった時点で拒否権はねぇの。断れば死あるのみだ。あんた、依頼した時点でそれ考えないのか?」
と、逆に問われて面を食らう。
今回傭兵を直に雇ったのはレムナフだが、そう言われれば確かに僕でも口封じをしようとは考えるかもしれない。
この男はどうも先手先手を読むのが得意のようだ。
僕の考えを読まれている様で些か気分はあまり良くないが…
僕は溜息をついて、奥にいるゲイリーに話し掛ける。
「ゲイリー、どう思います?」
するとゲイリーはヒョイっと肩を竦ませてフルフルと首を横に振って見せた。顔はニヤニヤと如何にも楽しそうだ。
余程この規格外の男が気に入ったらしい。
僕は剣を収めて、馬から飛び降りると、腕を組みながら男を見上げて名前を問う。
すると男は
「ヴォルフガング。皆俺をウルフと呼ぶ」
と答えた。
「いいでしょうウルフ。直に取引をしましょう。貴方がもし僕に忠誠を誓うのであれば正式に家臣として貴方がたを迎え入れる事を検討します。ただ僕は傭兵という職業をあまり理解していないし、逃げ出す事を算段に入れる様子を見ているといまいち信用していいのか自信がありません。ので、常に見張りは付けさせてもらいますが、傭兵から騎士へ転職する気はありますか?」
ニッコリ微笑んで僕がそう言うと、ウルフは顔を顰めつつ僕を見下ろしながら、
「騎士ってのはそれ相応の身分やら身元の保証ってのが居るんだろ?俺達はならず者でそんなもん持ってねぇよ。偽装して王族に書類でも提出するつもりか?」
と言ってきた。
僕はその言葉にこめかみを押さえた。
「んん?僕は今、"僕に忠誠を誓うのであれば"と言った筈ですが?夢想や雪狐に入れとは一言も言ってませんよ。まぁ、夢想の末端扱いでも構いませんが、興味無いです?騎士」
「興味がねぇことはねぇが…にぃちゃん、もしかして王族なのか?」
訝しむウルフに僕は、さぁ?どうでしょうかとニッコリ微笑んで答える。
「俺も名を明かせねぇヤツを主君にする気はねぇんだが、そうなると俺はここで死ぬのか?」
「そうですねぇ。野放しにするには少々厄介な頭脳を持ってますから…仕方ありませんね。何事も歩み寄りです。僕はリン・プ・リエンの第3王子、フィオディール・バルフ・ラスキンです」
あんまり多言しないで下さいよ。と付け加える。
するとざわりと周りが騒然とする。
奥ではゲイリーや夢想兵達が頭を抱えて唸っているのが目の端に映る。
馬上にいたウルフは流石に顔色を変えて「第3王子って死んだんじゃねぇのか!?」と声を上げ、馬からずり落ちそうになっていた。
「なんででしょうね?僕生きてるんですが。何時死んだのか教えて欲しいくらいです。それで、どうします?時間は無限ではないので早急に返事をしてもらえると有難いんですが?」
口をぱくぱくとさせ馬にしがみついていたウルフは、何とか馬から降りると、鞘ごと剣を僕に投げてよこし、僕の前で膝をついた。
「どうせ死ぬなら面白い方がいい。戦場で長生きできるなんざ元から思ってねぇしな。騎士の誓いだろうが何だろうがやってやるよ主」
それがウルフの答えだと他の傭兵が判断すると、彼らも同じように膝をついて僕に頭を下げて見せた。
僕は半ば呆れながら、宣誓を行い、
「本当にあなた方傭兵なんですかね?」
と、ポツリと呟き剣を収めてウルフに返すと、ウルフは嬉しそうにニカッと歯を出して微笑み、
「褒め言葉と受け取っておきますよ」
と、言葉遣いまで改めて言って僕から剣を受け取った。
こうして僕は新たに強力な助っ人を得たのだった。
甘いなぁにぃちゃんと男は笑う。
「怪しい依頼ってのは聞いちまった時点で拒否権はねぇの。断れば死あるのみだ。あんた、依頼した時点でそれ考えないのか?」
と、逆に問われて面を食らう。
今回傭兵を直に雇ったのはレムナフだが、そう言われれば確かに僕でも口封じをしようとは考えるかもしれない。
この男はどうも先手先手を読むのが得意のようだ。
僕の考えを読まれている様で些か気分はあまり良くないが…
僕は溜息をついて、奥にいるゲイリーに話し掛ける。
「ゲイリー、どう思います?」
するとゲイリーはヒョイっと肩を竦ませてフルフルと首を横に振って見せた。顔はニヤニヤと如何にも楽しそうだ。
余程この規格外の男が気に入ったらしい。
僕は剣を収めて、馬から飛び降りると、腕を組みながら男を見上げて名前を問う。
すると男は
「ヴォルフガング。皆俺をウルフと呼ぶ」
と答えた。
「いいでしょうウルフ。直に取引をしましょう。貴方がもし僕に忠誠を誓うのであれば正式に家臣として貴方がたを迎え入れる事を検討します。ただ僕は傭兵という職業をあまり理解していないし、逃げ出す事を算段に入れる様子を見ているといまいち信用していいのか自信がありません。ので、常に見張りは付けさせてもらいますが、傭兵から騎士へ転職する気はありますか?」
ニッコリ微笑んで僕がそう言うと、ウルフは顔を顰めつつ僕を見下ろしながら、
「騎士ってのはそれ相応の身分やら身元の保証ってのが居るんだろ?俺達はならず者でそんなもん持ってねぇよ。偽装して王族に書類でも提出するつもりか?」
と言ってきた。
僕はその言葉にこめかみを押さえた。
「んん?僕は今、"僕に忠誠を誓うのであれば"と言った筈ですが?夢想や雪狐に入れとは一言も言ってませんよ。まぁ、夢想の末端扱いでも構いませんが、興味無いです?騎士」
「興味がねぇことはねぇが…にぃちゃん、もしかして王族なのか?」
訝しむウルフに僕は、さぁ?どうでしょうかとニッコリ微笑んで答える。
「俺も名を明かせねぇヤツを主君にする気はねぇんだが、そうなると俺はここで死ぬのか?」
「そうですねぇ。野放しにするには少々厄介な頭脳を持ってますから…仕方ありませんね。何事も歩み寄りです。僕はリン・プ・リエンの第3王子、フィオディール・バルフ・ラスキンです」
あんまり多言しないで下さいよ。と付け加える。
するとざわりと周りが騒然とする。
奥ではゲイリーや夢想兵達が頭を抱えて唸っているのが目の端に映る。
馬上にいたウルフは流石に顔色を変えて「第3王子って死んだんじゃねぇのか!?」と声を上げ、馬からずり落ちそうになっていた。
「なんででしょうね?僕生きてるんですが。何時死んだのか教えて欲しいくらいです。それで、どうします?時間は無限ではないので早急に返事をしてもらえると有難いんですが?」
口をぱくぱくとさせ馬にしがみついていたウルフは、何とか馬から降りると、鞘ごと剣を僕に投げてよこし、僕の前で膝をついた。
「どうせ死ぬなら面白い方がいい。戦場で長生きできるなんざ元から思ってねぇしな。騎士の誓いだろうが何だろうがやってやるよ主」
それがウルフの答えだと他の傭兵が判断すると、彼らも同じように膝をついて僕に頭を下げて見せた。
僕は半ば呆れながら、宣誓を行い、
「本当にあなた方傭兵なんですかね?」
と、ポツリと呟き剣を収めてウルフに返すと、ウルフは嬉しそうにニカッと歯を出して微笑み、
「褒め言葉と受け取っておきますよ」
と、言葉遣いまで改めて言って僕から剣を受け取った。
こうして僕は新たに強力な助っ人を得たのだった。
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