ウイニー王国のワガママ姫
思わぬ誤算 2【フィオ編】
「ねぇねぇ、あたしも一応は戦力なのよねぇ?アスベルグだけでいいならあたし1人でよくなくないー?」
場違いなあっけらかんとしたキツネの声が作戦室に響き渡る。
当のキツネはキョトンとした顔で地図を広げている机の上に足をぶらつかせながら座っていた。
そんなキツネの言動にぷはぁ〜…と誰ともなく溜息を付いた。
「なによぅ〜。せっこさんだってやるときはやるのよぅ?特に今は契約者のホルガーと相性がすこぶるいいからずっとこっちに出ていられるしぃ〜。この辺一帯を氷雪地帯に変えることも出来ちゃったりするのよぅ?」
「…それは出来ればご遠慮願いたいですね」
ゲイリーが引きつった笑みで言えばキツネは不満そうに口を膨らませた。
夏になろうとしてはいるものの、生態系に影響を与えるのは流石に困る。
しかし、そんなにホルガーと相性が良いとは思ってもみなかった。
心なしかホルガーの頬が赤いし…
「因みに国境に氷の分厚い壁を端から端まで配置とか出来ます?」
「ん〜?出来なくは無いだろうけどぉ〜夏になって溶けたら大洪水。みたいな?」
「雪狐を使うのは無しの方向で」
と、ホルガーがこめかみを押さえつつ言うと、僕とゲイリーはウンウンと同意してみせた。
するとキツネはますますもってむくれてしまった。
「あ、いや、待って下さい雪狐。貴女、名前さえ判れば瞬時にその人の所へ行けましたよね?」
キツネは僕の質問に不満な顔のまま憮然として答えた。
「出来るわよぅ?でもそれはあたしに限ったことじゃなく神獣ならだーれでもそれくらい出来るわよぅ」
「他にできることはあったりしますか?雪や氷を使役する以外にです」
僕がそう言うと、キツネは何故だかニヤリと広角を上げて机から飛び降り、その場でくるりと一回転し、瞬時に煙に身を包まれたかと思うとその姿を現す。
『もちろんよテディ。こんな事だってできるわ』
ニッコリと微笑んで言うキツネの姿はどこをどう見てもレティだった。
「なっ…」
と、僕は赤くなって絶句する。
なんでキツネがレティの事知ってるんだ!?
絶句する僕と、完璧にレティに化けたキツネをホルガーとゲイリーが目を見開いて交互に見やる。
そしてゲイリーは再びキツネに視線を戻すと、興味深げに目を輝かせながら顎髭を撫でて言った。
「これが殿下が夢中になっている姫君ですか…なんともまぁ…」
「綺麗な方ですねぇ」
と、ホルガーはゲイリーがいい終わる前に同意した。
「待って下さい、誰かに化けることが出来るのは判りましたが、なんで貴女レティの事を知ってるんですか?」
ばくばくと心臓が高鳴るのを悟られない様にあくまでも平静を装ってキツネに尋ねる。
するとキツネは姿はレティのままだが元の声で、
「だってぇ〜フィオに届くお手紙に宛名が書いてあったんだもん♪ずっと前に気になるからこっそり見てきちゃった♪」
「人の手紙を勝手に見たのか!?」
「失礼ねぇ。机に置いてあった手紙の宛名が見えただけよぉ〜。中を読んだわけじゃないわよぉ?」
中を見なくてもやっていい事と悪い事はあるだろう!
キッとキツネを睨みつけると、あろうことかその顔で最も苦手な悲しそうな表情をしてキツネはさめざめと僕に泣いてみせた。
『酷いわテディ…私、盗み見ようと思ったわけじゃ無いのよ?ただ、見えちゃっただけで…私以外に好きな人が居るかもって思ったら私…』
「う…ぼ、僕がレティ以外の人を好きになる訳無いじゃないですか!!」
ッハっと気づいた時には呆れたようなゲイリーの顔と、真っ赤になったホルガーの顔、そしてニヤニヤしているキツネの顔が僕に注目して「ごちそうさまです」と言ってきた。
「この顔と声で殿下に迫れば確実に暗殺は成功しそうですね」
「…シャレになりませんからやめて下さい。殿下、お時間がある時に雪狐に頼んで特訓しましょう!暗殺は困ります暗殺は!」
「僕の事はともかく!!雪狐、他にはもう出来ることは無いんですか?」
キツネは煙混じりに元の姿へ戻ると「これで全部よ」と言って再び机の上に陣取った。
雪や氷はともかく、名前さえ判れば相手の所へ移動できる能力とこの変身能力はかなり使えるんじゃ無いだろうか?
上手くやれば戦力は落とさずに相手の注意をアスベルグから引き剥がす事が出来るかも知れない。
「殿下、何か妙案でも浮かびましたか?」
僕が思案していると、ホルガーが不思議そうに僕に尋ねてきた。
「そうですねぇ、掴みかけてると言った所でしょうか。ゲイリー、エブグレイ騎士団の鎧一式手に入りますか?遺体から履いでも構いませんが」
「数によりますが、まぁ、攻め込んできた人数を考えればアスベルグに残っている兵士分の数は余裕で手に入るでしょう」
僕はゲイリーの言葉を聞いて頷くと、今度はキツネに向かって再度質問する。
「雪狐、死んでしまった人間に化ける事って出来ますか?」
「死んだ人間〜?化けれない事はないと思うけどぉ〜…流石に姿しか変えられないみたいな〜?」
つまり声は無理という事か。
「誰か、紙とペンを」
と、僕が言うと、ホルガーが羊皮紙とペンを取り出し僕に渡した。
僕はそれを使って思いついた事をとにかく書き連ねて、ひとつひとつを地図と照らし合わせながら可能か否かを考え線を引いて消して行く。
やがてひとつの答えを導き出して、ニヤリと口角を上げると、踵を返してゲイリー、ホルガー、キツネに宣言した。
「まずはシュミット伯領を落とします」
場違いなあっけらかんとしたキツネの声が作戦室に響き渡る。
当のキツネはキョトンとした顔で地図を広げている机の上に足をぶらつかせながら座っていた。
そんなキツネの言動にぷはぁ〜…と誰ともなく溜息を付いた。
「なによぅ〜。せっこさんだってやるときはやるのよぅ?特に今は契約者のホルガーと相性がすこぶるいいからずっとこっちに出ていられるしぃ〜。この辺一帯を氷雪地帯に変えることも出来ちゃったりするのよぅ?」
「…それは出来ればご遠慮願いたいですね」
ゲイリーが引きつった笑みで言えばキツネは不満そうに口を膨らませた。
夏になろうとしてはいるものの、生態系に影響を与えるのは流石に困る。
しかし、そんなにホルガーと相性が良いとは思ってもみなかった。
心なしかホルガーの頬が赤いし…
「因みに国境に氷の分厚い壁を端から端まで配置とか出来ます?」
「ん〜?出来なくは無いだろうけどぉ〜夏になって溶けたら大洪水。みたいな?」
「雪狐を使うのは無しの方向で」
と、ホルガーがこめかみを押さえつつ言うと、僕とゲイリーはウンウンと同意してみせた。
するとキツネはますますもってむくれてしまった。
「あ、いや、待って下さい雪狐。貴女、名前さえ判れば瞬時にその人の所へ行けましたよね?」
キツネは僕の質問に不満な顔のまま憮然として答えた。
「出来るわよぅ?でもそれはあたしに限ったことじゃなく神獣ならだーれでもそれくらい出来るわよぅ」
「他にできることはあったりしますか?雪や氷を使役する以外にです」
僕がそう言うと、キツネは何故だかニヤリと広角を上げて机から飛び降り、その場でくるりと一回転し、瞬時に煙に身を包まれたかと思うとその姿を現す。
『もちろんよテディ。こんな事だってできるわ』
ニッコリと微笑んで言うキツネの姿はどこをどう見てもレティだった。
「なっ…」
と、僕は赤くなって絶句する。
なんでキツネがレティの事知ってるんだ!?
絶句する僕と、完璧にレティに化けたキツネをホルガーとゲイリーが目を見開いて交互に見やる。
そしてゲイリーは再びキツネに視線を戻すと、興味深げに目を輝かせながら顎髭を撫でて言った。
「これが殿下が夢中になっている姫君ですか…なんともまぁ…」
「綺麗な方ですねぇ」
と、ホルガーはゲイリーがいい終わる前に同意した。
「待って下さい、誰かに化けることが出来るのは判りましたが、なんで貴女レティの事を知ってるんですか?」
ばくばくと心臓が高鳴るのを悟られない様にあくまでも平静を装ってキツネに尋ねる。
するとキツネは姿はレティのままだが元の声で、
「だってぇ〜フィオに届くお手紙に宛名が書いてあったんだもん♪ずっと前に気になるからこっそり見てきちゃった♪」
「人の手紙を勝手に見たのか!?」
「失礼ねぇ。机に置いてあった手紙の宛名が見えただけよぉ〜。中を読んだわけじゃないわよぉ?」
中を見なくてもやっていい事と悪い事はあるだろう!
キッとキツネを睨みつけると、あろうことかその顔で最も苦手な悲しそうな表情をしてキツネはさめざめと僕に泣いてみせた。
『酷いわテディ…私、盗み見ようと思ったわけじゃ無いのよ?ただ、見えちゃっただけで…私以外に好きな人が居るかもって思ったら私…』
「う…ぼ、僕がレティ以外の人を好きになる訳無いじゃないですか!!」
ッハっと気づいた時には呆れたようなゲイリーの顔と、真っ赤になったホルガーの顔、そしてニヤニヤしているキツネの顔が僕に注目して「ごちそうさまです」と言ってきた。
「この顔と声で殿下に迫れば確実に暗殺は成功しそうですね」
「…シャレになりませんからやめて下さい。殿下、お時間がある時に雪狐に頼んで特訓しましょう!暗殺は困ります暗殺は!」
「僕の事はともかく!!雪狐、他にはもう出来ることは無いんですか?」
キツネは煙混じりに元の姿へ戻ると「これで全部よ」と言って再び机の上に陣取った。
雪や氷はともかく、名前さえ判れば相手の所へ移動できる能力とこの変身能力はかなり使えるんじゃ無いだろうか?
上手くやれば戦力は落とさずに相手の注意をアスベルグから引き剥がす事が出来るかも知れない。
「殿下、何か妙案でも浮かびましたか?」
僕が思案していると、ホルガーが不思議そうに僕に尋ねてきた。
「そうですねぇ、掴みかけてると言った所でしょうか。ゲイリー、エブグレイ騎士団の鎧一式手に入りますか?遺体から履いでも構いませんが」
「数によりますが、まぁ、攻め込んできた人数を考えればアスベルグに残っている兵士分の数は余裕で手に入るでしょう」
僕はゲイリーの言葉を聞いて頷くと、今度はキツネに向かって再度質問する。
「雪狐、死んでしまった人間に化ける事って出来ますか?」
「死んだ人間〜?化けれない事はないと思うけどぉ〜…流石に姿しか変えられないみたいな〜?」
つまり声は無理という事か。
「誰か、紙とペンを」
と、僕が言うと、ホルガーが羊皮紙とペンを取り出し僕に渡した。
僕はそれを使って思いついた事をとにかく書き連ねて、ひとつひとつを地図と照らし合わせながら可能か否かを考え線を引いて消して行く。
やがてひとつの答えを導き出して、ニヤリと口角を上げると、踵を返してゲイリー、ホルガー、キツネに宣言した。
「まずはシュミット伯領を落とします」
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