ウイニー王国のワガママ姫

みすみ蓮華

ノートウォルドを彷徨って 8

「フィ…テディ、それってお前の召使い・・・達も同じなのか?」
 リオが何処か含みのある言い方でテディに質問する。
 テディはというと、同じように含みがある笑顔を見せて、
「さぁ?ご想像にお任せします」
 と、答えた。


 リオはその返答に苛立たしげに「チッ」と舌打ちをする。
「ちゃんと答えろ。相手が相手なんだから重要な事だろう。やつらの能力を無効化出来るなら俺達も参戦…」
「あ、それは無理です」
 リオの言葉を遮ってテディは即答する。
「言ったでしょ?特殊な修行が必要なんです。1日2日、ましてや数時間で会得出来るものではないですよ。それなりに準備が要りますし、そもそも兄上達が参戦してしまったら後々厄介です。これ以上・・・・足を引っ張らないで大人しく待っていてくれませんか?僕それを言いにここに来たんですよ」
 ニッコリ微笑んでテディはリオに牽制する。
 リオはと言うと「グッ…」と押し黙って俯いてしまった。


 なんか…不思議な兄弟ね。
 お兄様って弟や妹を窘めたり守ったりするものだと思ってたんだけど、明らかにテディの方が強いわ。
 それにしても…


「ねぇ、テディって本当は一体何者なの?貴族なのは勿論判るわ。でも武器商人でも吟遊詩人でも無いわよね?もしかして、諜報員を纏めてる司令官とか?」
 ダニエルは諜報員って言ってたし、ここにいるって事は何かしら関わりがあるのよね?
 んー、でも、テディは明らかにリン・プ・リエンの人だから…移民?


 私が腕を組んで唸っていると、
「言い得て妙だな…」
 と、リオがポツリと呟いた。
 周りの兵やダニエルに目配せをすると「解らないです」とでも言うように、首を横に振った。
 …一緒に働いてて素性がわからないのもどうなんだろうか。
 まぁ、レイの指示で動いてるのであればそういう事もあるのかもしれないけど。


 テディはおもむろに私の両肩を掴むと、
「レティ、今それ重要ですかね?」
 と言って、少々怖い笑顔で私に問いかける。
 私は勢いに押され思わず怯んで後ずさりながら、
「そ、こまで重要ではない…かしら?」
 と答えた。ウイニーの兵がいるところで聞いたら不味かったのかしら。


「よろしい」とテディは頷くと話を再開する。
「メルさんが回復や攻撃系の魔法が使えないのであれば何とかなるかもしれません。そこで相談なんですが、レティ、少々危険な事を頼んでも良いですか?」
 メルを助けられるなら喜んで!と意気込みを込めて力強く頷く。
 テディも満足そうに相槌を打つと、少々真剣に説明をする。


「レティにこれから解呪の方法を教えます。それを覚えたらワザと捕まって欲しいんです。隙をついてメルさんに接近して解呪を頼めますか?」
「もち…」
「反対だ!」
 勿論と答えようとした私の言葉を遮ったのはすぐ後ろにいたダニエルだった。
 驚いて後ろを振り返ると、今にも殴りかかりそうな顔でダニエルはテディを睨みつけていた。


「ハ…姫さんに何かあったらどうするつもりだ!奴らがメルを使って姫さんに酷いことをしないなんて保証は何処にもない!」
「貴方の意見は聞いていません。僕はレティに聞いているんです」
「なんだと?!」
 今まで見たことがない冷ややかな視線でテディがダニエルに告げると、ダニエルはカッとなってテディの胸ぐらに掴みかかった。


「ちょっとダニエル!私は大丈夫だから、テディに酷い事しないで!」
「大丈夫なわけあるかっ!ハニーにはハニーの立場ってもんがあるだろ!それに魔法が使えたとしてもか弱い女には変わりないんだぞ?!」
 ダニエルの言葉にピクリと私と何故かテディまで反応した。


「ダニエル…心配してくれるのは嬉しいわ。でも、私ってそんなにか弱かったかしら?なんならココで貴方と勝負をしてもいいわよ?あの時より華麗な技を見せてあげるから」
 軽く拳を構えて挑発して見せると、ダニエルは漸く最初に出会った時の事を思い出したらしく、サーッと顔色を変えてブンブンと手を大きく降ってみせた。


「いやっ、俺はそんなに強くないから!だが、奴らは男を操るわけだろ?しかもメルが相手ならハニーだって躊躇するだろ?そうなったら隙が…」
「それはないから大丈夫」
 とキッパリダニエルに宣言する。


「あのねダニエル、私とメルは小さい頃から姉弟の様に育ったの。レイやお兄様と過ごすより長い時間一緒にいると思うわ。だから誰よりもメルの事は判ってるし、メルだって私の事を判ってるの。だからこそ躊躇せずに隙をつく事が出来る自信があるわ」


 体術も剣術も魔法も身を守るための術は全てメルと一緒に学んだ事だ。
 練習する時は殆ど一緒に向かい合って行った。
 互いの弱点も知ってるし、メルは何処か私にどうしても遠慮してしまう癖があるのも知っている。
 誰よりも知っているからこそメルがどう動くか予想しやすい。
 故に安心して攻撃が出来る唯一の相手とも言えるのだ。


「それにね、テディは別にして、少なからずここに居る貴方たちより役に立つと思うけど?私が女故に操られる心配なんて無いからテディは私に頼んだんでしょ?」
 ね?とテディに向き直り、にこりと微笑んでみせると、テディは嬉しそうに笑顔を返してくれた。


「僕もなるべくならレティを巻き込むような真似はしたくなかったんです。でも、約束しましたからね。レティもこうと決めたら譲らないでしょう?」
 どこか楽しげに言うテディに「もちろん!」と即答してみせた。
「安心して下さい。僕も一緒に潜り込みますから。ちゃんとレティを守りますよ」
 テディも一緒に…?ってどうやって?


 私が首を傾げていると、ダニエルはすかさず
「じゃあ俺も行くぞ!ハニーを守るのは俺の役目だ!」
 と、テディに対抗でもするかのように名乗りを上げた。


 テディはジロリとダニエルを訝しむように観察すると、
「無理…があると思いますが……」
 と、少しだけ困惑気味に呟いた。


「無理って何がだ?俺は確かにハニー…姫さんより弱いかも知れないが、それなりに戦闘経験はあるぞ」
「いえ、そういう意味ではなくてですね、幻術対策もないですし、そもそも貴方が女装して女性に見えるとはとても…」
 と、テディは口ごもった。


 ん?女装?!
 私は思わず目を見開いてマジマジとテディを見る。
「テディ、まさか女装して私について来る気なの?」
 私の言葉にダニエルはもちろん、兄であるリオも唖然とした表情でテディを見つめた。
 当の本人はどこか楽しそうに頷いてみせた。
「僕こんな顔ですから、化粧をすれば案外誤魔化せると思うんですよね〜。幻術もおそらく効きませし、大丈夫ですよ」
 そういうテディを見ながら、なんとなく女装姿のテディを頭の中で思い描いてみる。


 ううん…2年前より男らしくはなってるけど、確かに化粧をすればスラリとした美人に見えるかもしれない。
 周りの人間も同じ事を想像したらしく、赤くなったり青くなったり複雑な表情をしながら頭を抱えていた。


「お、俺だって…頑張れば……」
 と、最後に悔しげにダニエルがボソリと呟いた。



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