ウイニー王国のワガママ姫
ノートウォルドを彷徨って 2
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私の言葉通りメルは夜に宿を抜け出し、ピアを連れて王都へ向かった。
私は2人を見送った後、数種類の魔法薬をバンダナに包み、スカートの内側に軽く縫い付けて万が一に備えた。
そして翌日、私は朝食を終えると早速町を調べることにした。
出かける際、念の為にメルとテディが泊まっていた部屋を覗いて見たけど、やっぱりテディが戻って来た様な形跡はなかった。
ノートウォルドの町は東、南、西に街道へ出る門があり、それは決して閉鎖的な壁に囲まれているわけではない。
いわゆる「ここからが町ですよ〜」とお知らせする程度の木を切って組み立てただけの門だ。
とはいえ、自警団のような人達がちゃっかり門番を行っている。
屈強な男というわけではないが、町の中にいてもジットリとした視線を送ってくる気味の悪さは、この先を通ろうとしたらどうなるか判らないという雰囲気がありありと伝わってくる。
ピアはよくこんなところを1人で抜け出せたなと感心してしまう程だ。
町の中の大通りはT字路になっていて、南の門から左右に主だった宿や商店といった建物があり、脇道の奥を少し覗いてみるとビッシリと建物が軒を連ねていた。
道も複雑に入り組んでいるし、ちょっとこれは探すのに骨が折れるかもしれない。
「せめて何か覚えている事が無いかピアに聞いておけば良かった」
と、呟いてガクリと肩を落とす。
嘆いていても仕方が無いんだけど意外と広い町なので、嘆かずにはいられない。
町の大通りを基準に東側から歩き回る事にした。
町の東側は比較的立派な建物が多く、どうやら町の中でも裕福な商家が住んでいるのだろうという印象を受けた。
その所為か一軒一軒の家が大きい為、入り組んだ道でも散策するのに然程時間はかからなかった。
次に同じように西側を周る。
こちらは東側と対照的に簡素な家が多く、所々に酒場や小さな魚市場が見て取れた。
ある程度西の門の付近まで進むと、海に向って小さな川が流れていて、更にその上に小さな橋が掛かっている事に気がついた。西側の表通りには川は流れていなかったので不思議に思い、下流へ目を凝らすと途中から暗渠化されている事がわかった。
もしかしたら、この川の真上に建っている建物が怪しいかもしれない。
建物の中に地下に続く道があって、川を下った場所に船があったら気づかれない様に人を運ぶことがきっと出来る。
「そうなると、まずは川を調べた方が手っ取り早そうね」
何処かに降りる場所はないかと川沿いを歩き回る。
下流方向には降りられそうな場所は無かったので、上流に向って歩き出す。
すると突然、民家の隙間からぬッと太くて大きな腕が伸びてきて、私の口を塞ぐと同時に腕の上から抱き竦められた状態でそちらの方へ引き寄せられた。
「んぐっ!」と声にならない声が思わず漏れる。
(なっ?!白昼堂々まさかこんな場所で襲われるなんて流石に予想して無かったわ!)
パニックになりながらも、何とか抜け出そうと暴れてみるがビクともしない。
魔法を詠唱しようにも口を塞がれているので攻撃することも出来ない。
(まだテディの事も解ってないのにこんな所で捕まるなんてなさけない…)
じわっと目頭が熱くなった所で、不意に耳元で吐息交じりに囁かれた。
「ハニー暴れないでくれ。何もしないから落ち着いて」
私は聞き覚えのある低い声と呼び名にピタリと動きを止める。
…ん?この声ってまさか?
声の主の腕の力が緩むと、おそるおそる後ろを見上げる。
肌の色は白くなっていたけど、見間違えるはずもない野生的な彫りの深い顔がそこにあった。
「ダニエル?」
訝しげに私がマジマジと彼を見上げると、彼は嬉しそうにニッと白い歯を出して笑ってみせた。
「おう!久しぶりだなハニー!あ、いや…レティアーナ様?」
私の言葉通りメルは夜に宿を抜け出し、ピアを連れて王都へ向かった。
私は2人を見送った後、数種類の魔法薬をバンダナに包み、スカートの内側に軽く縫い付けて万が一に備えた。
そして翌日、私は朝食を終えると早速町を調べることにした。
出かける際、念の為にメルとテディが泊まっていた部屋を覗いて見たけど、やっぱりテディが戻って来た様な形跡はなかった。
ノートウォルドの町は東、南、西に街道へ出る門があり、それは決して閉鎖的な壁に囲まれているわけではない。
いわゆる「ここからが町ですよ〜」とお知らせする程度の木を切って組み立てただけの門だ。
とはいえ、自警団のような人達がちゃっかり門番を行っている。
屈強な男というわけではないが、町の中にいてもジットリとした視線を送ってくる気味の悪さは、この先を通ろうとしたらどうなるか判らないという雰囲気がありありと伝わってくる。
ピアはよくこんなところを1人で抜け出せたなと感心してしまう程だ。
町の中の大通りはT字路になっていて、南の門から左右に主だった宿や商店といった建物があり、脇道の奥を少し覗いてみるとビッシリと建物が軒を連ねていた。
道も複雑に入り組んでいるし、ちょっとこれは探すのに骨が折れるかもしれない。
「せめて何か覚えている事が無いかピアに聞いておけば良かった」
と、呟いてガクリと肩を落とす。
嘆いていても仕方が無いんだけど意外と広い町なので、嘆かずにはいられない。
町の大通りを基準に東側から歩き回る事にした。
町の東側は比較的立派な建物が多く、どうやら町の中でも裕福な商家が住んでいるのだろうという印象を受けた。
その所為か一軒一軒の家が大きい為、入り組んだ道でも散策するのに然程時間はかからなかった。
次に同じように西側を周る。
こちらは東側と対照的に簡素な家が多く、所々に酒場や小さな魚市場が見て取れた。
ある程度西の門の付近まで進むと、海に向って小さな川が流れていて、更にその上に小さな橋が掛かっている事に気がついた。西側の表通りには川は流れていなかったので不思議に思い、下流へ目を凝らすと途中から暗渠化されている事がわかった。
もしかしたら、この川の真上に建っている建物が怪しいかもしれない。
建物の中に地下に続く道があって、川を下った場所に船があったら気づかれない様に人を運ぶことがきっと出来る。
「そうなると、まずは川を調べた方が手っ取り早そうね」
何処かに降りる場所はないかと川沿いを歩き回る。
下流方向には降りられそうな場所は無かったので、上流に向って歩き出す。
すると突然、民家の隙間からぬッと太くて大きな腕が伸びてきて、私の口を塞ぐと同時に腕の上から抱き竦められた状態でそちらの方へ引き寄せられた。
「んぐっ!」と声にならない声が思わず漏れる。
(なっ?!白昼堂々まさかこんな場所で襲われるなんて流石に予想して無かったわ!)
パニックになりながらも、何とか抜け出そうと暴れてみるがビクともしない。
魔法を詠唱しようにも口を塞がれているので攻撃することも出来ない。
(まだテディの事も解ってないのにこんな所で捕まるなんてなさけない…)
じわっと目頭が熱くなった所で、不意に耳元で吐息交じりに囁かれた。
「ハニー暴れないでくれ。何もしないから落ち着いて」
私は聞き覚えのある低い声と呼び名にピタリと動きを止める。
…ん?この声ってまさか?
声の主の腕の力が緩むと、おそるおそる後ろを見上げる。
肌の色は白くなっていたけど、見間違えるはずもない野生的な彫りの深い顔がそこにあった。
「ダニエル?」
訝しげに私がマジマジと彼を見上げると、彼は嬉しそうにニッと白い歯を出して笑ってみせた。
「おう!久しぶりだなハニー!あ、いや…レティアーナ様?」
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