ウイニー王国のワガママ姫
帰国の末 4
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なんとか子爵を宿の部屋へ案内すると、私は子爵にお茶を出し、また何か謝られる前に単刀直入に話を切り出すことにした。
「ダニエルの事はともかくとして、ワタクシはここへは子爵に頼みたい事があったので立ち寄らせて頂きました」
「私に、ですか?私に出来る事があれば何なりと尽力致しますが、私は然程力になれるとは…」
確かに、言われてしまえば財力も人脈も公爵家には足元も及ばないだろう。
困惑する子爵を気にしないように、本領発揮とばかりに本題を突き付ける。
「子爵の人柄を見込んで、クレクソン伯を説得するための仲介人になって頂きたいのです」
「仲介人ですか?それは構いませんが、一体何を説得すれば宜しいのでしょうか?」
私はニコリと微笑むと、ベルンで得た経験と知識を元に練った企画の詳細を子爵に話し始めた。
「子爵はこの国に根深い半獣族の問題をご存知でしょうか?」
「ええ、陛下や殿下がここ2年の内に政策に取り入れていますから。クレクソン領も場所によっては例外ではありません」
例外ではないということは、やはり差別的な問題があるのだろう。
どの程度のものなのかは流石に図ることはできないけど…
「実はあれ、ワタクシが言い出した話で…今も何とか策を練っている最中ではあるんですが、流石に政治面でこれ以上助力する事は私には出来ないので、少し別の視点から後押しをしてみようと思いまして」
子爵は少し驚いた顔をして見せた後、「聞かせてください」と話を促した。
「ワタクシは本当にウイニーに帰って来たばかりなので、ここがまず最初の交渉場所となるわけですが、4年後の夏を目標に、半獣族の文化や風習を知ってもらうための大々的な祭りを開催したいと思っているんです」
これはケザスのバザーをヒントに思いついた事だった。
ケザスはベルン中からさまざまな商品を取り寄せ、海外の観光客に品物を売る事で国益としている国だ。
更にケザスで買った商品を気に入り、その産地に興味を抱き、赴こうとする観光客も少なく無い。
ベルン内の至る国で色んな人に出会った結果、それが理由でここに来たと言う人を沢山見てきた。
私はそれをウイニーで半獣族メインでやったらどうなのだろうかと思ったのだ。
無論それには莫大な費用と、貴族達の理解が必要になってくる。
何より自分の領土に住まう半獣族の文化や風習を理解しなければならないので、お金を出資さえすればいいという心構えでは決して成す事が出来ないだろう。
「なるほど、しかし何故4年後なのですか?」
「出資金を集めるだけなら陛下に頼んで強制的に掻き集めればとても楽に集めることが出来、来年にでも祭りを開催する事が出来るでしょう。しかしそれでは彼らを理解したとは言い切れない。あくまで彼らが主役であり、彼らの同意無しには成功しない祭りなんです。その同意を得るためには我々から彼らに近づいて行くしかない筈です。そう考えると4年でもまだ足りないかもしれません」
「つまり和解の期間だと?」
「そうです」
ふーむ…と子爵は椅子に凭れかかって難しい顔をしている。
「勿論ワタクシ自身も彼らの事をあまりにも知らなすぎる。それを知るためにも各地方を納める首領達の協力が必要不可欠なんです。クレクソン伯が半獣族に対してどのような想いを抱いておられるのか分からない以上、ワタクシが直接交渉するよりも、伯のすぐ側で仕えている子爵なら説得しやすいのではと思ったんです」
「引き受けて頂けませんか?」と子爵におそるおそる尋ねる。
頭を下げる私を見て、子爵は慌てて私に答えた。
「そんな、よして下さい!レティアーナ様には返そうにも返しきれない恩が有りますから、勿論協力させて頂きます。ただ、場合によっては長期戦になってしまうかもしれません」
それでも宜しければ…と子爵は告げる。
私以外の人間がどう思ってどう動くかは、王都で貴族相手にワガママを言っていた頃とは違い、腹の中を探りにくい未知の領域だと思っている。
それでもなんとか成功させたい。私に今出来ることはこれしかないのだ。
私はギュッと子爵の手を両手で握り締めながら、また深々と頭を下げて心からお礼を述べた。
「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
なんとか子爵を宿の部屋へ案内すると、私は子爵にお茶を出し、また何か謝られる前に単刀直入に話を切り出すことにした。
「ダニエルの事はともかくとして、ワタクシはここへは子爵に頼みたい事があったので立ち寄らせて頂きました」
「私に、ですか?私に出来る事があれば何なりと尽力致しますが、私は然程力になれるとは…」
確かに、言われてしまえば財力も人脈も公爵家には足元も及ばないだろう。
困惑する子爵を気にしないように、本領発揮とばかりに本題を突き付ける。
「子爵の人柄を見込んで、クレクソン伯を説得するための仲介人になって頂きたいのです」
「仲介人ですか?それは構いませんが、一体何を説得すれば宜しいのでしょうか?」
私はニコリと微笑むと、ベルンで得た経験と知識を元に練った企画の詳細を子爵に話し始めた。
「子爵はこの国に根深い半獣族の問題をご存知でしょうか?」
「ええ、陛下や殿下がここ2年の内に政策に取り入れていますから。クレクソン領も場所によっては例外ではありません」
例外ではないということは、やはり差別的な問題があるのだろう。
どの程度のものなのかは流石に図ることはできないけど…
「実はあれ、ワタクシが言い出した話で…今も何とか策を練っている最中ではあるんですが、流石に政治面でこれ以上助力する事は私には出来ないので、少し別の視点から後押しをしてみようと思いまして」
子爵は少し驚いた顔をして見せた後、「聞かせてください」と話を促した。
「ワタクシは本当にウイニーに帰って来たばかりなので、ここがまず最初の交渉場所となるわけですが、4年後の夏を目標に、半獣族の文化や風習を知ってもらうための大々的な祭りを開催したいと思っているんです」
これはケザスのバザーをヒントに思いついた事だった。
ケザスはベルン中からさまざまな商品を取り寄せ、海外の観光客に品物を売る事で国益としている国だ。
更にケザスで買った商品を気に入り、その産地に興味を抱き、赴こうとする観光客も少なく無い。
ベルン内の至る国で色んな人に出会った結果、それが理由でここに来たと言う人を沢山見てきた。
私はそれをウイニーで半獣族メインでやったらどうなのだろうかと思ったのだ。
無論それには莫大な費用と、貴族達の理解が必要になってくる。
何より自分の領土に住まう半獣族の文化や風習を理解しなければならないので、お金を出資さえすればいいという心構えでは決して成す事が出来ないだろう。
「なるほど、しかし何故4年後なのですか?」
「出資金を集めるだけなら陛下に頼んで強制的に掻き集めればとても楽に集めることが出来、来年にでも祭りを開催する事が出来るでしょう。しかしそれでは彼らを理解したとは言い切れない。あくまで彼らが主役であり、彼らの同意無しには成功しない祭りなんです。その同意を得るためには我々から彼らに近づいて行くしかない筈です。そう考えると4年でもまだ足りないかもしれません」
「つまり和解の期間だと?」
「そうです」
ふーむ…と子爵は椅子に凭れかかって難しい顔をしている。
「勿論ワタクシ自身も彼らの事をあまりにも知らなすぎる。それを知るためにも各地方を納める首領達の協力が必要不可欠なんです。クレクソン伯が半獣族に対してどのような想いを抱いておられるのか分からない以上、ワタクシが直接交渉するよりも、伯のすぐ側で仕えている子爵なら説得しやすいのではと思ったんです」
「引き受けて頂けませんか?」と子爵におそるおそる尋ねる。
頭を下げる私を見て、子爵は慌てて私に答えた。
「そんな、よして下さい!レティアーナ様には返そうにも返しきれない恩が有りますから、勿論協力させて頂きます。ただ、場合によっては長期戦になってしまうかもしれません」
それでも宜しければ…と子爵は告げる。
私以外の人間がどう思ってどう動くかは、王都で貴族相手にワガママを言っていた頃とは違い、腹の中を探りにくい未知の領域だと思っている。
それでもなんとか成功させたい。私に今出来ることはこれしかないのだ。
私はギュッと子爵の手を両手で握り締めながら、また深々と頭を下げて心からお礼を述べた。
「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
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