ウイニー王国のワガママ姫

みすみ蓮華

帰国の末 3

 村で宿を取ると、2年の間にしたためた薬草・薬材手帳を元に、薬に足りない材料のうちこの近辺で採取できそうなものをピックアップする作業に移った。
 薬の売買に関して厳しいウイニーだけど、採取自体に規制はないので、その点だけは助かったと言える。
 ただ、どうしても季節外れの薬草や、採取が困難な材料は買う以外に方法がない。


 ベッドの上で胡座をかきながら腕を組んで項垂れる。
「うーん…家に帰ったら薬剤免許でも取ろうかしら。でも魔法薬学とウイニーの薬学じゃかなり違うだろうからまた勉強し直しかしら?」
 厄介だわー!と体を投げ出し仰向けになる。


 ウイニーで薬の扱いが厳しいのには理由がある。
 ウイニーはもちろんトップルが有名なのだが、薬学がどの国よりも一番発達しているという点でも実は有名だったりする。
 それは国防に直結するくらい重要な事項で、国王が直轄の騎士団を持たなくても他国に襲われなかったり、他の地域の首領が謀反を起こさないのもひとえに多種多様な薬を開発販売しているからなのだ。
 因みに古い時代にはトップルも薬の扱いだったとか。


 材料をピックアップしたメモを仰向けのままメルに渡す。
 メルはメモを確認した後チラリと私を見下ろした。
「これ以外の他に足りない材料って何なんです?やっぱり買わないとダメな物なんですか?」


 眉を顰めながらコクリとメルに頷いてみせる。
「アグ鹿の雄の角の粉末と雪の雫…前者は生息地域に行ったとしても素人が簡単に発見できる動物じゃないし、後者は季節外れだしで購入以外の方法が無いわ」
 手詰まり手詰まり〜とやや投げやりに言いながら不貞寝に入ろうとする。
 すると流石は優秀な小間使い。素敵な案を提案してくれた。


「でしたら、フェンスのヒルダに相談してみませんか?あそこなら裏ルートで薬材手に入るかも知れませんよ?」
【かかとの折れたハイヒール亭】!その手があったか!
「メル冴えてる!そうなると少し旅程を変更しないとね。とはいえまた折り返して回るのも二度手間になってしまうから、通れる地域はちゃんと通って行きましょう」
 私がそう言うとメルはコクリと笑顔で頷いた。




 =====




 翌日、薬草の採取はメルに任せ、私は宿の前に座り込んでのんびりとヴェルを適当に掻き鳴らしていると、昼を過ぎた頃に目的の人物が駆け寄って来るのが見えた。


(うっわ!ダニエルそっくり!!)


 白髪混じりのダークブラウンの髪はいかにもお役所で働いてます!といった感じに整えられていて居るんだけど、その彫りの深い顔立ちと、筋肉質な身体つきと背丈はまさにダニエルが年取ったらこうなりますと言わんばかりの風体だった。
 違いを上げるとすれば肌の色が白い所だろうか?まぁ、元々ダニエルも肌は白かったみたいだからそう考えると違いなんて無いのだろう。


「ビセット閣下の御息女のレティアーナ様でいらっしゃいますね?」
 私はニコッと笑いかけ、スッと立ち上がると右手を差し出し子爵に握手を求めた。
「はい、トレンス子爵ですね?初めまして。レティアーナ・ビセットです。ご連絡頂ければこちらから伺おうと思っていたのですが、わざわざご足労をお掛けしてしまって申し訳ありません」


 私がそう言うや否や、子爵はカッと目を見開いたかと思うと、突然、地面に穴が空くんじゃないだろうかと思う位頭を擦り付け深々と土下座をして神にでも許しを乞う様な勢いで謝罪を始めた。


「その節は愚息がっ!大変ご迷惑をお掛け致しまして!なんとお詫びをすれば良いのかっ!大変申し訳御座いませんでした!!」
 私は差し出した右手を持て余しながら子爵の土下座にどうして対応していいのか判らなくなってしまった。
「え、いや…あの、子爵、ワタクシは……」
「それだけにとどまらずっ!昨日さくじつは何のおもてなしもしないまま追い返す形となってしまった事を改めて、改めてっ!深く謝罪させて頂きたい所存で御座います!!」


 うわぁ…村の人が凄い集まってきてる上にこっちを凄い見てる。
 新聞記者が嗅ぎつけない事を祈るしかないわ。


 このままではどんどん人が集まってくるだけなので、おそるおそる子爵に声をかけてみる。
「子爵、どうか頭を上げて下さい。ワタクシは気にしていませんから。それに今はその、あまり目立つような行為は避けたいですし、出来れば中でお話を…」
 私が中に入るように促すと、子爵はまた目を見開いて頭を上げると、再び地面に頭を擦り付け出してしまった。


「本当に申し訳御座いませんっ!お忍びとお聞きしていたのに配慮が足りず、このように注目を浴びさせてしまうような失態まで犯してしまいっ!私はっ!私はっ!こうなったら爵位を返上してお詫びをっ!」
「し、子爵?!」


 このやりとりはここから更に10分程続く羽目になってしまい、村のほぼ全ての住人が集まるには十分な時間を与えてしまったと言えるだろう。
 あああああ〜!この人は間違いなくダニエルのお父様だわ。

「ウイニー王国のワガママ姫」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く