せっかく吸血鬼《ヴァンパイア》になれたのに異世界転移させられて伝説に。(推敲中)
第8話 夜。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
王都の路地裏、とある喫茶店の前で1人の少女が5人のイカツイ男に囲まれていた。
少女は全身の震えを堪え、死に物狂いで悲鳴をあげた。
だが、ただでさえ人通りの少ない路地な上に、少女を取り囲んでいるのはまるで軍人かのような屈強な体格の男たちだ。
例え悲鳴を聞きつけても遠くからその光景が目に入ると、助けに来る者などいない。
「おい。観念してさっさと金を払えよ。払えないならここの権利書を寄越しな。」
男達の中でも一際体格の大きく、小麦色の肌でスキンヘッドにサングラスを掛けた、いかにもリーダー格の男が少女に詰め寄る。
少女は、
「う…うぐ…そんな…あなた達の請求は不当です…
本当に聖騎士に通報しますよ…」
と、泣きながら抵抗するが、男達はそれに怯むどころか逆に脅しをかけてきた。
「おいおい、待てよ。おれらはここらの治安を守ってやってんだ。国が衛兵に払う防衛費と同じだろ?これが払えないってんなら、国民の税金で衛兵に金を払ってる国も不当なことをしてるってことだよな。国家に反逆の意思でもあんのか?お?」
「そ…そんな…!?横暴です!!」
するとリーダーの隣にいた男がリーダーに言う。
「リーダー、もういいでしょう。そんな事よりさっさとこの女、奴隷商にでも売り払っちまいましょうよ!そっちの方が金になるでしょう!」
「ふ、それもそうだな。お前ら、捕らえろ。見えるとこに傷は付けんなよ。手を出すのは服に隠れてるとこだぞ。」
「「へいっ!」」
そう男達のやり取りが済むと、少女を捕らえようとしたその時だった。
夜が来た。
まだ時刻は正午過ぎ。
太陽が沈むなんてあり得ない。
太陽の光を分厚い雲が遮った、なんてのもあり得ない。
その日は雲ひとつない晴天であった。
しかし、辺りは暗くなったどころか、星まで出ている。
間違いようもないほど、正真正銘の夜が。
夜空から、一際暗い闇が少女の前に降り立った。
少女からは、自分の目の前の空間にぽっかりと穴が開いたように見えた。
だが、男達は違った。
突然目の前に現れた闇。その中に浮かぶ赤く揺らぐ仄かな光が2つ。
屈強な男達が皆、歯をガタガタと鳴らし、全身は震え、目線すら動かせずにいた。
(な…何がどうなってんだ…!?)
男達は必死に今を理解しようと、そして得体の知れない存在からどう逃げるか、頭をフル回転させて考えていたが、自分たちの助かる道が見つからない…
無心で逃げ出したい気持ちとは裏腹に、全身の震えがそれをさせてくれない。微塵の身動きすら取れない。
『平伏せ。』
「ぐっっ…!!?」
闇から発された言葉に無意識に言いなりになる。
(言葉に魔力が籠もっている、だと…!?)
この現象を理解したリーダーの男が驚愕の表情を浮かべた。
それに理解できない者達は、ただただ恐怖に震えるしかできなかった。
1人の男が死に抗うように声を絞り出して問う。
「な、何者なんだ!?おれたちをどうするつもりだ!!!」
すると、闇から1人の青年が現れた。
笑っていた。新しいオモチャを開けた子供の様に。はたまた、冷酷で残酷な悪魔の様に。
「どうするって…。弱い者いじめしてたのはあんたらだろ?弱い者いじめって、ほら、んー…」
青年はなにかを考える様に口を紡ぐと、いたずら事でも思いついた風に言葉を続けた。
「ほら、悪い事じゃないか!悪い事するってことは、ゴミだろ?てことはゴミは処分しなきゃ、せっかくの王都が汚れちまう。」
ははは、といたずらに笑う青年に男達は言葉を失った。
遊んでいるのだ。理由などなんでもいい、自分たちを、オモチャとしか見ていない。
「さて、掃除の時間だ。」
闇を纏った青年が手のひらを掲げる。
青年に纏われた闇が徐々に男達へと移っていく。
「な!なんだこれは!?」
「くそっ!取れねえ!!」
「リ…リーダー!助けてくれ!!!」
「無理だ…奴のあの声に魔力を宿らせる能力は…魔王の技だ…
あいつの力は…魔王に勝るとも劣らない。おれたち程度じゃ抵抗すら出来ねえよ…」
諦めを口にしたリーダーに失望の目を向けた男達だったが、リーダーが諦めた以上どうにもならない。
死を、受け入れるしかなかった。
突如、青年がリーダーの背後に現れ、その首筋に噛み付いた。
リーダーから離れた青年の口からは血が滴っていた。
端にいた男が目を合わせてしまうと、奴は微笑みながら姿を消した。
男から安堵が漏れたのもつかの間。背後にナニカが現れた気配を感じると首筋に激痛が走った。
仲間達がパタパタと倒れていく姿にもはやなにも思考できないでいた男は生きたいという欲さえ忘れていた。
数メートル先にいた青年が消えたかと思うと、自分のすぐ後ろに現れた。
死を覚悟した男だったが、予想外にも背後から話しかけてきた。
「よぉ。おれはムラマサってんだ。お前は?
…。なんだ?答えてくんねえのか。どうする。お前には二つの道がある。一つはこのまま死ぬか。もう一つは、おれの事を他の仲間に報告して復讐に来るか、だ。」
男はあまりの衝撃に言葉が出ない。
(こいつ…復讐される事を楽しんでる…!?)
闇を纏った青年は楽しげに笑いながら男を蹴飛ばした。
見えなくなるほど飛ばされていった。
王都の路地裏、とある喫茶店の前で1人の少女が5人のイカツイ男に囲まれていた。
少女は全身の震えを堪え、死に物狂いで悲鳴をあげた。
だが、ただでさえ人通りの少ない路地な上に、少女を取り囲んでいるのはまるで軍人かのような屈強な体格の男たちだ。
例え悲鳴を聞きつけても遠くからその光景が目に入ると、助けに来る者などいない。
「おい。観念してさっさと金を払えよ。払えないならここの権利書を寄越しな。」
男達の中でも一際体格の大きく、小麦色の肌でスキンヘッドにサングラスを掛けた、いかにもリーダー格の男が少女に詰め寄る。
少女は、
「う…うぐ…そんな…あなた達の請求は不当です…
本当に聖騎士に通報しますよ…」
と、泣きながら抵抗するが、男達はそれに怯むどころか逆に脅しをかけてきた。
「おいおい、待てよ。おれらはここらの治安を守ってやってんだ。国が衛兵に払う防衛費と同じだろ?これが払えないってんなら、国民の税金で衛兵に金を払ってる国も不当なことをしてるってことだよな。国家に反逆の意思でもあんのか?お?」
「そ…そんな…!?横暴です!!」
するとリーダーの隣にいた男がリーダーに言う。
「リーダー、もういいでしょう。そんな事よりさっさとこの女、奴隷商にでも売り払っちまいましょうよ!そっちの方が金になるでしょう!」
「ふ、それもそうだな。お前ら、捕らえろ。見えるとこに傷は付けんなよ。手を出すのは服に隠れてるとこだぞ。」
「「へいっ!」」
そう男達のやり取りが済むと、少女を捕らえようとしたその時だった。
夜が来た。
まだ時刻は正午過ぎ。
太陽が沈むなんてあり得ない。
太陽の光を分厚い雲が遮った、なんてのもあり得ない。
その日は雲ひとつない晴天であった。
しかし、辺りは暗くなったどころか、星まで出ている。
間違いようもないほど、正真正銘の夜が。
夜空から、一際暗い闇が少女の前に降り立った。
少女からは、自分の目の前の空間にぽっかりと穴が開いたように見えた。
だが、男達は違った。
突然目の前に現れた闇。その中に浮かぶ赤く揺らぐ仄かな光が2つ。
屈強な男達が皆、歯をガタガタと鳴らし、全身は震え、目線すら動かせずにいた。
(な…何がどうなってんだ…!?)
男達は必死に今を理解しようと、そして得体の知れない存在からどう逃げるか、頭をフル回転させて考えていたが、自分たちの助かる道が見つからない…
無心で逃げ出したい気持ちとは裏腹に、全身の震えがそれをさせてくれない。微塵の身動きすら取れない。
『平伏せ。』
「ぐっっ…!!?」
闇から発された言葉に無意識に言いなりになる。
(言葉に魔力が籠もっている、だと…!?)
この現象を理解したリーダーの男が驚愕の表情を浮かべた。
それに理解できない者達は、ただただ恐怖に震えるしかできなかった。
1人の男が死に抗うように声を絞り出して問う。
「な、何者なんだ!?おれたちをどうするつもりだ!!!」
すると、闇から1人の青年が現れた。
笑っていた。新しいオモチャを開けた子供の様に。はたまた、冷酷で残酷な悪魔の様に。
「どうするって…。弱い者いじめしてたのはあんたらだろ?弱い者いじめって、ほら、んー…」
青年はなにかを考える様に口を紡ぐと、いたずら事でも思いついた風に言葉を続けた。
「ほら、悪い事じゃないか!悪い事するってことは、ゴミだろ?てことはゴミは処分しなきゃ、せっかくの王都が汚れちまう。」
ははは、といたずらに笑う青年に男達は言葉を失った。
遊んでいるのだ。理由などなんでもいい、自分たちを、オモチャとしか見ていない。
「さて、掃除の時間だ。」
闇を纏った青年が手のひらを掲げる。
青年に纏われた闇が徐々に男達へと移っていく。
「な!なんだこれは!?」
「くそっ!取れねえ!!」
「リ…リーダー!助けてくれ!!!」
「無理だ…奴のあの声に魔力を宿らせる能力は…魔王の技だ…
あいつの力は…魔王に勝るとも劣らない。おれたち程度じゃ抵抗すら出来ねえよ…」
諦めを口にしたリーダーに失望の目を向けた男達だったが、リーダーが諦めた以上どうにもならない。
死を、受け入れるしかなかった。
突如、青年がリーダーの背後に現れ、その首筋に噛み付いた。
リーダーから離れた青年の口からは血が滴っていた。
端にいた男が目を合わせてしまうと、奴は微笑みながら姿を消した。
男から安堵が漏れたのもつかの間。背後にナニカが現れた気配を感じると首筋に激痛が走った。
仲間達がパタパタと倒れていく姿にもはやなにも思考できないでいた男は生きたいという欲さえ忘れていた。
数メートル先にいた青年が消えたかと思うと、自分のすぐ後ろに現れた。
死を覚悟した男だったが、予想外にも背後から話しかけてきた。
「よぉ。おれはムラマサってんだ。お前は?
…。なんだ?答えてくんねえのか。どうする。お前には二つの道がある。一つはこのまま死ぬか。もう一つは、おれの事を他の仲間に報告して復讐に来るか、だ。」
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