死なない奴等の愚行
第166話 サラの怒りから救いし者
「まあ、別にこちらとしては困る事はないから構わんぞ」
そうセーレの王ユマエさんが言ってくれたので、俺はガルダ達と少し話をし、安心して宿へと戻った。ユマエさんはまだ残ると言っていたが、一国の王が一人で出歩いて大丈夫なのだろうか。
彼女の身が心配になったが、外に出ると入り口に二人の男性が立っていた。同じ制服を着込んでいる事から察するに、ユマエさんの警護の人だろう。来た時には姿が見えなかったが、最初から何処かに居たのだろうか。
とにかく警護の人間が居るなら問題ないだろうと、俺はガルダ達の家を後にした。
「よく帰って来たなケルベロス」
「…………」
宿に戻ると、外でサラが待ち構えていた。
ああ、物凄い笑顔だ。お面のように張り付けたような笑顔だ。その笑顔の裏には怒りに満ちているに違いない。
「ま、待ってくれ。さっきの仕事の件だよな?」
「おお、よく分かった。それなら話が早い。それじゃあ早速聞きたいんだが……どうして黙っていた?」
「いや、黙っていた訳じゃ……伝えるのを忘れてて……」
「ばれたら何か都合の悪い事でもあったんじゃないか?」
鋭い……いや、それなら調整しただけだと押し通そう。それならそこまで怒られずに済む。ばれていけないのは壊して修理した事だ。それさえ隠し通せばいい。
「いや、本当に……ちょっと調整しただけだから忘れてたんだ」
「ほう……その調整は誰がやったんだ?」
「へ?」
「誰がやったのか聞いてるんだ。カーシャは違うだろう。マヤも魔法の知識はあるが、魔道具となって来ると専門外のはずだ。あとは、ケルベロス、お前だけだが…………お前が調整したのか?」
「…………」
俺がやった事にする? いや、そんな事をしたらすぐにボロが出る。素直に博士に調整して貰ったと言ったらどうだろうか? そうなると、そもそもどうして調整が必要か分かったのか問われるだろう。
駄目だ……どう答えても誤魔化せる気がしない。
「えっと……それは……」
「それは?」
「のっぴきならない事情があって……」
「どんな事情だ?」
「こう……ものすっごい……その……なんという、か……」
「ええいっ! はっきり言わんか!」
「壊して博士に修理を頼みました! ごめんなさい! でも、正直にユマエさんに謝りましたので、サラも許してください! お願いします!」
サラの怒声にあてられ、頭を下げて全てを包み隠さず吐き出した。
下げた頭を再び上げるのが恐ろしい。見なくても分かる、先程の笑顔のお面剥がれ落ちて鬼のような形相になっているのが……。
「なあ、サラ。それぐらいにしてやれよ」
「……ゼンか」
そうサラに声を掛けたのはオッサンだった。
オッサンの声が聞こえて思わず頭を上げる。どうやらオッサンも割り振られた仕事を終え、宿に居たようで酒瓶を片手に宿から出て来た。
「ユマエならそれぐらいの事で怒らないって」
「いや、だからと言って許す訳にはいかない」
「よく考えてみろって、これがケルベロスだけのヘマだと思うか?」
「…………確かに、マヤやカーシャと一緒に仕事をしていたからな。二人も関わっていると考えるべきか」
「そうそう。まあ、だから怒りも三等分にして、そんぐらいにしてやれよ」
「……はあ、仕方ない。ケルベロス次からはちゃんと報告しろ。いいな?」
そう言って、サラは宿の中へと消えていく。
そしてその場に残されたオッサンと俺。
「……感謝しろよ」
酒瓶に口をつけながらオッサンは宿へと入って行く。俺はその後ろ姿を見ながら、礼の言葉を口にする。
「……オッサン、ありがとう」
オッサンがこの時だけ団長らしく見えた。
そうセーレの王ユマエさんが言ってくれたので、俺はガルダ達と少し話をし、安心して宿へと戻った。ユマエさんはまだ残ると言っていたが、一国の王が一人で出歩いて大丈夫なのだろうか。
彼女の身が心配になったが、外に出ると入り口に二人の男性が立っていた。同じ制服を着込んでいる事から察するに、ユマエさんの警護の人だろう。来た時には姿が見えなかったが、最初から何処かに居たのだろうか。
とにかく警護の人間が居るなら問題ないだろうと、俺はガルダ達の家を後にした。
「よく帰って来たなケルベロス」
「…………」
宿に戻ると、外でサラが待ち構えていた。
ああ、物凄い笑顔だ。お面のように張り付けたような笑顔だ。その笑顔の裏には怒りに満ちているに違いない。
「ま、待ってくれ。さっきの仕事の件だよな?」
「おお、よく分かった。それなら話が早い。それじゃあ早速聞きたいんだが……どうして黙っていた?」
「いや、黙っていた訳じゃ……伝えるのを忘れてて……」
「ばれたら何か都合の悪い事でもあったんじゃないか?」
鋭い……いや、それなら調整しただけだと押し通そう。それならそこまで怒られずに済む。ばれていけないのは壊して修理した事だ。それさえ隠し通せばいい。
「いや、本当に……ちょっと調整しただけだから忘れてたんだ」
「ほう……その調整は誰がやったんだ?」
「へ?」
「誰がやったのか聞いてるんだ。カーシャは違うだろう。マヤも魔法の知識はあるが、魔道具となって来ると専門外のはずだ。あとは、ケルベロス、お前だけだが…………お前が調整したのか?」
「…………」
俺がやった事にする? いや、そんな事をしたらすぐにボロが出る。素直に博士に調整して貰ったと言ったらどうだろうか? そうなると、そもそもどうして調整が必要か分かったのか問われるだろう。
駄目だ……どう答えても誤魔化せる気がしない。
「えっと……それは……」
「それは?」
「のっぴきならない事情があって……」
「どんな事情だ?」
「こう……ものすっごい……その……なんという、か……」
「ええいっ! はっきり言わんか!」
「壊して博士に修理を頼みました! ごめんなさい! でも、正直にユマエさんに謝りましたので、サラも許してください! お願いします!」
サラの怒声にあてられ、頭を下げて全てを包み隠さず吐き出した。
下げた頭を再び上げるのが恐ろしい。見なくても分かる、先程の笑顔のお面剥がれ落ちて鬼のような形相になっているのが……。
「なあ、サラ。それぐらいにしてやれよ」
「……ゼンか」
そうサラに声を掛けたのはオッサンだった。
オッサンの声が聞こえて思わず頭を上げる。どうやらオッサンも割り振られた仕事を終え、宿に居たようで酒瓶を片手に宿から出て来た。
「ユマエならそれぐらいの事で怒らないって」
「いや、だからと言って許す訳にはいかない」
「よく考えてみろって、これがケルベロスだけのヘマだと思うか?」
「…………確かに、マヤやカーシャと一緒に仕事をしていたからな。二人も関わっていると考えるべきか」
「そうそう。まあ、だから怒りも三等分にして、そんぐらいにしてやれよ」
「……はあ、仕方ない。ケルベロス次からはちゃんと報告しろ。いいな?」
そう言って、サラは宿の中へと消えていく。
そしてその場に残されたオッサンと俺。
「……感謝しろよ」
酒瓶に口をつけながらオッサンは宿へと入って行く。俺はその後ろ姿を見ながら、礼の言葉を口にする。
「……オッサン、ありがとう」
オッサンがこの時だけ団長らしく見えた。
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