死なない奴等の愚行

山口五日

第159話 ペット探しと今回仕事を共にする団員達

 俺がわざわざ引き受ける仕事だろうかと呆れていると、サラがそれを察知したようで語気を強めて注意される。


「行方不明のペット探しだからといって軽んじるな。これはセーレの王の依頼だからな」
「王? 王のペットを探すのか?」


 それは確かに軽く考えてはいけないかもしれない。軽く考えてはいけないかもしれないが、それなら自分の配下を使うなりして探した方がいいのではと疑問を抱いた。そんな俺の疑問すらも、できる女サラは見抜いて語り始めた。


「王のペットが迷い込んだ場所が厄介でな……その場所というのは随分と昔に廃棄された納骨堂らしい。ただ、どうしてか分からないが…………入った者は必ず死ぬらしい」
「……そういう噂があるのか?」
「いや、実話で百パーセント死ぬ。足を踏み入れた瞬間に絶命すると聞いている。確か……これまで56人ほど死んでいると言っていたな」
「そんなところに行かせるのか!? 俺、死ぬだろ!?」
「不死身だから死にはしないだろう。何を言ってるんだ?」


 確かに……死にはしないだろうけど、そんな危険なところに……あれ? 待てよ……。


「なあ、そしたらペットも死んでるんじゃないか?」
「いや、死んでない。ペットというのは普通の生き物じゃないからな」
「普通の生き物じゃない?」
「ああ、それは鳥の形をした魔道具でな。姿や動きは鳥そのもの。だが、寿命や病気で死ぬ事はない。ある意味不老不死だな。実際、外から元気に飛んでいる姿が目撃されている」


 鳥の形をした魔道具なんてものがあるのか。ただ、鳥となると飛ばれると捕まえる事が難しそうだ。サーペントを纏えば飛ばれてもジャンプすれば捕まえられそうだが……あとはガンを使って撃ち落とすか。


「言っておくが、壊れても再生したりはしないからな。不老不死とは言ったが、そこまでの機能は持っていない」
「サラって人の心が読めたりするのか?」


 考えている事が見抜かれている事に軽く恐怖を感じてしまう。
 ただ、サラの話からガンで撃ち落とすという事はできないという事だ。


「俺一人だけで捕まえるか?」
「ああ、この仕事はケルベロスだけじゃない」
「そうなのか?」


 思わず口に出して自問自答すると、すっかり忘れていたとばかりにサラが言う。


「他の仕事も複数人であたらせるんだ。ケルベロスだけ一人で仕事をさせる訳にはいかないからな」
「なんだ、それを早く言ってくれよ」


 てっきり一人でやるものだと思っていた。そうだよな……納骨堂がどれくらいの広さなのか分からないが、逃げ回る一羽の鳥を一人で捕まえるなんて困難だ。だが、複数人で捕獲にあたれるなら、仕事の成功率はグッと上がるだろう。


 いったい誰が一緒に仕事をしてくれるのだろうか。


「この仕事にはケルベロス、そしてカーシャ、マヤにあたってもらう」


 告げられた二人の名前。カーシャは以前にも一緒に仕事をした事もあり、とても頼りになる存在だ。だが…………マヤか……いや、マヤも充分頼りになる。彼女の魔法はきっと捕獲の役に立つだろう。


 だが、その魔法が自分に向けられる可能性がある。彼女には自分とサーペントを本人の理もなく、博士と協力して融合させた前科がある。


 サラもマヤの魔法に関しては危険性を含んでいる事を理解しているのか、彼女を見て釘をさす。


「マヤ、今回はケルベロスとカーシャのサポートに回ってくれ。魔法でペットの居場所を探して、動きを制限するんだ。それ以外は何もするなよ。最低限の事だけをしてくれ」
「はーい」


 間延びした声で返事をするマヤ。サラの言葉通りに最低限の事だけで済めばいいが……。


 納骨堂の人が死ぬという話も気になるが、それと同じくらいマヤが暴走しないかが気になってしまう。果たして無事に仕事を終わらせられるのだろうか……。

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