死なない奴等の愚行
第155話 タロスに癒されます
ユウマが海の上に居る事を知ったものの、席には戻らなかった。また、シャラに永遠と話し掛けられ続ける事になる。
別のところに紛れ込むのが一番だが、酒を無理矢理流し込まれて意識を失い、意識が戻るとまた酒を流し込まれる繰り返しとなるだろう。
そんな目には遭いたくない。いっそ酒場から抜け出して、何処かに居るであろうタロスのところにでも避難しようかと思った。
「……ケルベロス」
「っ! ああ、なんだカーシャか……」
フェルと同じくらいの年頃の少女の見た目をした団員、カーシャ。
酒を勧められるっ! と思って少し身構えてしまったが、彼女なら無理に飲まされる事はないので、警戒を解き笑い掛ける。
「どうした? モモンモンの肉でも探してるのか?それだったらあっちのテーブルにそれっぽい肉が」
あったぞ、そう言い切る前にカーシャに手を握られる。そして、そのまま俺を引っ張るのだ。
「ど、どうしたんだ? 何処かへ連れて行きたいのか?」
「……これから、タロスのところに行く。……タロス……ケルベロスに、会いたがって……た……。来て」
「そうなのか? 分かった、それじゃあ案内してくれ」
「うん……」
モモンモンの肉が盛られた大皿を手に、カーシャは外へと出る。俺もその後に続いて外へと出た。そしてバスで入って来た門の傍にある扉を開けた。
外に出れば荒野が広がっているはず。そんな環境でタロスは一人待機しているのかと心配になったが、その心配は無用だった。
扉の先は荒野ではなく、草木が生えた自然豊かな大地。
「国だけでなく、その周囲も結界で覆ってるのか……」
「……そう。ここから……数時間歩くと……荒野」
「そんな広い範囲を囲ってるのか……」
カーシャの解説に唖然としてしまう。これほどまでに、大掛かりな事をして隠す必要があるのかと思えてしまう。
半ば呆れながら振り返り、国の城壁を見上げた。タロスの背丈よりも遥かに高く、堅固な城壁だ。これほどの城壁だけでも充分に思えてしまう。
「……タロス……ケルベロス……戻って来たよ」
「!」
地面に腰を下ろしていたタロスにカーシャが声を掛けると、彼は俺を見て手を振って来る。
「久し振りだな。元気だったか?」
「!」
力強く頷く。どうやら元気のようだ。
「そうか、元気なら良かった。俺が居ない間、どんな仕事をしてたんだ?」
「! !! !!!」
「モンスター……いや盗賊退治か? そんな事をしてたんだなぁ」
タロスは言葉を発さないが、身振り手振りで俺に説明をしてくれる。そして、その際タロスはとても楽しそうだった。
彼の純粋な子供のような反応に、俺は心が洗われるような気分だった。先程の酒を浴びるように飲む環境に居たせいで、より心が清められた気がする。そして、カーシャが持って来たモモンモンの肉を三人で摘みながら、それからも会話を続けた。
久し振りの、普通の穏やかな時間だった。
体が大きく、団員を敵に向かって投げ込むタロスだが、彼が一番普通の感性をしている。もしかすると、イモータルでこのように穏やかな時間を過ごせるのはタロスとともに居る時だけかもしれない。
そんな事を考えていたら、ふと頭の中に声が響く。
(ケルベロスさんっ!)
サーペントか? どうした?
(どうしたじゃないですよ! 酒場から出て行くなんて聞いてないですよ!)
落ち着け。悪かった。タロスに会いたくて、カーシャに案内して貰って外に出たんだ。それにしても、どうした? 本当に何があったんだ?
(シャラさんが大変なんです! ケルベロスさんが居ない事に気付いて……)
……気付いて?
(禁断症状が出てます)
怖っ!?
俺が居ない事に気付いて、禁断症状が出た。
状況が分かるようで、分からない状況説明だ。ただ、なんかシャラが怖い。
慌てるサーペントの声を聞きながら、正直戻りたくないと思ったのだった。
別のところに紛れ込むのが一番だが、酒を無理矢理流し込まれて意識を失い、意識が戻るとまた酒を流し込まれる繰り返しとなるだろう。
そんな目には遭いたくない。いっそ酒場から抜け出して、何処かに居るであろうタロスのところにでも避難しようかと思った。
「……ケルベロス」
「っ! ああ、なんだカーシャか……」
フェルと同じくらいの年頃の少女の見た目をした団員、カーシャ。
酒を勧められるっ! と思って少し身構えてしまったが、彼女なら無理に飲まされる事はないので、警戒を解き笑い掛ける。
「どうした? モモンモンの肉でも探してるのか?それだったらあっちのテーブルにそれっぽい肉が」
あったぞ、そう言い切る前にカーシャに手を握られる。そして、そのまま俺を引っ張るのだ。
「ど、どうしたんだ? 何処かへ連れて行きたいのか?」
「……これから、タロスのところに行く。……タロス……ケルベロスに、会いたがって……た……。来て」
「そうなのか? 分かった、それじゃあ案内してくれ」
「うん……」
モモンモンの肉が盛られた大皿を手に、カーシャは外へと出る。俺もその後に続いて外へと出た。そしてバスで入って来た門の傍にある扉を開けた。
外に出れば荒野が広がっているはず。そんな環境でタロスは一人待機しているのかと心配になったが、その心配は無用だった。
扉の先は荒野ではなく、草木が生えた自然豊かな大地。
「国だけでなく、その周囲も結界で覆ってるのか……」
「……そう。ここから……数時間歩くと……荒野」
「そんな広い範囲を囲ってるのか……」
カーシャの解説に唖然としてしまう。これほどまでに、大掛かりな事をして隠す必要があるのかと思えてしまう。
半ば呆れながら振り返り、国の城壁を見上げた。タロスの背丈よりも遥かに高く、堅固な城壁だ。これほどの城壁だけでも充分に思えてしまう。
「……タロス……ケルベロス……戻って来たよ」
「!」
地面に腰を下ろしていたタロスにカーシャが声を掛けると、彼は俺を見て手を振って来る。
「久し振りだな。元気だったか?」
「!」
力強く頷く。どうやら元気のようだ。
「そうか、元気なら良かった。俺が居ない間、どんな仕事をしてたんだ?」
「! !! !!!」
「モンスター……いや盗賊退治か? そんな事をしてたんだなぁ」
タロスは言葉を発さないが、身振り手振りで俺に説明をしてくれる。そして、その際タロスはとても楽しそうだった。
彼の純粋な子供のような反応に、俺は心が洗われるような気分だった。先程の酒を浴びるように飲む環境に居たせいで、より心が清められた気がする。そして、カーシャが持って来たモモンモンの肉を三人で摘みながら、それからも会話を続けた。
久し振りの、普通の穏やかな時間だった。
体が大きく、団員を敵に向かって投げ込むタロスだが、彼が一番普通の感性をしている。もしかすると、イモータルでこのように穏やかな時間を過ごせるのはタロスとともに居る時だけかもしれない。
そんな事を考えていたら、ふと頭の中に声が響く。
(ケルベロスさんっ!)
サーペントか? どうした?
(どうしたじゃないですよ! 酒場から出て行くなんて聞いてないですよ!)
落ち着け。悪かった。タロスに会いたくて、カーシャに案内して貰って外に出たんだ。それにしても、どうした? 本当に何があったんだ?
(シャラさんが大変なんです! ケルベロスさんが居ない事に気付いて……)
……気付いて?
(禁断症状が出てます)
怖っ!?
俺が居ない事に気付いて、禁断症状が出た。
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