死なない奴等の愚行
第147話 ハーフモンスターの国へと入りました
切れ目が入ったと思えば、今まで見ていた光景が動き出した。それは荒野の一部を張り付けたような巨大な門。完全に開いた時、周囲は荒野だったはずだが、門の先には街が広がっていた。
門を通り抜けていいのだろうかと発車させられなかったが、フェルが速く中に入ろうと揺さぶって来るので覚悟を決めて門をくぐった。
門を通り抜けると、バスを停車させて降りてみる。
「ここが……ハーフモンスターの国か……」
「そうだよ! ハーフモンスターの国だよ!」
フェルは俺の呟きに嬉しそうに答えた。
どうやら国全体を魔法で隠しているようだ。大掛かりな事をしていると思ったが、ハーフモンスターが国民だから念入りに隠しているのだろう。
荒野から突然現れたハーフモンスターの国に驚いていると、ふと気になった事があり、フェルに尋ねてみる。
「……ところで、今更だが国の名前って何なんだ?」
「名前? えっとね…………何だっけ?」
「…………」
これまで会話の中で国の名前が出て来なかったと思えば、知らなかったのか。いや、俺も一度も尋ねてなかったのは迂闊だった。
国の名前を知らなくても問題ないと思うが、一度気になってしまうと無性に気になってしまう。
「ちょっと聞いて来る!」
「あ、ちょっ! 聞くって誰に聞くんだよ!」
そこら辺の人にいきなり何て国ですか? なんて聞いたら、警戒されてしまうのではないだろうか。こんなに大掛かりな魔法で国を隠しているのだから、よそ者というだけで警戒されるだろうし……。
来たばかりで衛兵に捕まる事態は防ぎたい。そう思い、フェルを引き止めようとしたのだが……彼女の向かった方に目をやると言葉を失った。
「おうっ、フェル。やっと来たか」
「ゼン! 数日振り!」
そこにはオッサン……いや、オッサンだけでなく、他のイモータルの団員達がいた。どうやらそこは酒場のようで、表で数人飲んでいる。室内が騒がしい事から、中に他にも居る事が伺えられる。
酒を片手にこちらに手を振るオッサンたちのもとへと俺は向かった。
俺の肩をバンバン叩きながら「久し振りだな!」「元気してたか?」と声を掛けて来る団員達。こういう温かな雰囲気嫌いじゃないけど、今はここに居る事への疑問の方が大きくて嬉しいとか思えない。
「ど、どうしているんだ?」
「ん? いや、久し振りに俺達も行くかって話になってな」
「行くかって……いや、そこは別にいい。だけど俺達よりどうして早く着いたんだ? 俺達はバスも使った訳だし……あ、バスが複数台あるのか?」
ハーフモンスターの国に行く事を決めた時、イモータルは俺達の近くで待機していたはずだ。向こうが最初からバスを使っているのなら、先に到着していても不思議ではない。
「ん? 違うぞ。俺達は通路を使ったんだ」
「通路?」
「ああ。フェルが忘れちまってたみたいだけどな。色んなところに、ここに来るための転移の魔道具が設置されているんだ」
「あ! そういえば、あったね!」
「おい」
「はっはっは。まあ、許してやれ。魔道具を幾つか使わないと辿り着けないようになっているから、覚えるのが大変なんだ。フェルは普通の道のりを覚えるので精いっぱいだったようだな」
「うん! 綺麗さっぱり、通路の事は記憶から消えてた!」
忘れていたとこれほどはっきり言われてしまえば、清々しいとさえ思えてしまう。
いや、別に怒りはないが、もっと楽に来る事ができたと思うと溜息が出る。ゴブリンにボコボコにされる事はなかったし……いや、もう今では良い思い出だったと思っておこう。
「ところで……ここの国って何ていう名前なんだ?」
「国の名前? フェルに聞けばいいだろ?」
「忘れた!」
「はっはっは! 国の名前も忘れてたのかよ! 仕方ないな……」
グラスに残っていた酒を飲み干してから、オッサンは口を開く。
「この国の名前はセーレだ」
その名前を聞いて、ようやくハーフモンスターの国へ到着した実感が湧いた。
門を通り抜けていいのだろうかと発車させられなかったが、フェルが速く中に入ろうと揺さぶって来るので覚悟を決めて門をくぐった。
門を通り抜けると、バスを停車させて降りてみる。
「ここが……ハーフモンスターの国か……」
「そうだよ! ハーフモンスターの国だよ!」
フェルは俺の呟きに嬉しそうに答えた。
どうやら国全体を魔法で隠しているようだ。大掛かりな事をしていると思ったが、ハーフモンスターが国民だから念入りに隠しているのだろう。
荒野から突然現れたハーフモンスターの国に驚いていると、ふと気になった事があり、フェルに尋ねてみる。
「……ところで、今更だが国の名前って何なんだ?」
「名前? えっとね…………何だっけ?」
「…………」
これまで会話の中で国の名前が出て来なかったと思えば、知らなかったのか。いや、俺も一度も尋ねてなかったのは迂闊だった。
国の名前を知らなくても問題ないと思うが、一度気になってしまうと無性に気になってしまう。
「ちょっと聞いて来る!」
「あ、ちょっ! 聞くって誰に聞くんだよ!」
そこら辺の人にいきなり何て国ですか? なんて聞いたら、警戒されてしまうのではないだろうか。こんなに大掛かりな魔法で国を隠しているのだから、よそ者というだけで警戒されるだろうし……。
来たばかりで衛兵に捕まる事態は防ぎたい。そう思い、フェルを引き止めようとしたのだが……彼女の向かった方に目をやると言葉を失った。
「おうっ、フェル。やっと来たか」
「ゼン! 数日振り!」
そこにはオッサン……いや、オッサンだけでなく、他のイモータルの団員達がいた。どうやらそこは酒場のようで、表で数人飲んでいる。室内が騒がしい事から、中に他にも居る事が伺えられる。
酒を片手にこちらに手を振るオッサンたちのもとへと俺は向かった。
俺の肩をバンバン叩きながら「久し振りだな!」「元気してたか?」と声を掛けて来る団員達。こういう温かな雰囲気嫌いじゃないけど、今はここに居る事への疑問の方が大きくて嬉しいとか思えない。
「ど、どうしているんだ?」
「ん? いや、久し振りに俺達も行くかって話になってな」
「行くかって……いや、そこは別にいい。だけど俺達よりどうして早く着いたんだ? 俺達はバスも使った訳だし……あ、バスが複数台あるのか?」
ハーフモンスターの国に行く事を決めた時、イモータルは俺達の近くで待機していたはずだ。向こうが最初からバスを使っているのなら、先に到着していても不思議ではない。
「ん? 違うぞ。俺達は通路を使ったんだ」
「通路?」
「ああ。フェルが忘れちまってたみたいだけどな。色んなところに、ここに来るための転移の魔道具が設置されているんだ」
「あ! そういえば、あったね!」
「おい」
「はっはっは。まあ、許してやれ。魔道具を幾つか使わないと辿り着けないようになっているから、覚えるのが大変なんだ。フェルは普通の道のりを覚えるので精いっぱいだったようだな」
「うん! 綺麗さっぱり、通路の事は記憶から消えてた!」
忘れていたとこれほどはっきり言われてしまえば、清々しいとさえ思えてしまう。
いや、別に怒りはないが、もっと楽に来る事ができたと思うと溜息が出る。ゴブリンにボコボコにされる事はなかったし……いや、もう今では良い思い出だったと思っておこう。
「ところで……ここの国って何ていう名前なんだ?」
「国の名前? フェルに聞けばいいだろ?」
「忘れた!」
「はっはっは! 国の名前も忘れてたのかよ! 仕方ないな……」
グラスに残っていた酒を飲み干してから、オッサンは口を開く。
「この国の名前はセーレだ」
その名前を聞いて、ようやくハーフモンスターの国へ到着した実感が湧いた。
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