死なない奴等の愚行

山口五日

第100話 幽霊海賊団ファントム

「さてと……まあ、陸に戻るまで今回の仕事の話を詳しく話すか。まあ、ほとんどがファントム、船長の話になるだろうが。それにしても便利だな、サーペントの力は」


 俺とオッサンはサーペントの力で、海を操り陸へと向かって運んで貰っている。俺達は立っているだけだ。


「悪いな、俺まで運んで貰って」
(こうした方が話をしやすいかと思いまして)
「こうした方が話をしやすいだろうってさ」
「おお、そうか。助かるわ……それじゃあ話をするか」


 サーペントに感謝すると、オッサンは早速話し出した。


「まあ、とりあえず船長の事から話さないとな。簡単に言えばデュラ爺さんとだいたい同じ境遇だ。元々不老不死みたいなもんだったのを、俺の力で完全な不老不死にしたんだ」
「船長はモンスターって事か? あの感じだとゴーストとか?」


 船長は自分でゴーストと言っていた。そうなのだろうと思ったのだが、オッサンは首を横に振って否定する。


「いや、あれはモンスターというか…………幽霊海賊?」
「……モンスターだろ?」
「いやいや、モンスターとは違うんだよ……何て言えばいいんだろうな…………ああ、あれだ、怪奇現象?」
「…………んん?」
「ああ、その反応は良く分かる。だけど実際説明しにくいんだよなぁ。だってよ、モンスターじゃないんだから」


 正直いまいちよく分からない。ただ、オッサンの言葉をそのまま受け止めるなら、モンスターではなくて怪奇現象という事だ。うん、全くもってモンスターとどう違うのかがよく分からない。だが、とりあえず分かった事にしないと話は進みそうになさそうなので、船長は怪奇現象っていう事で納得しておこう。


「で、あいつは固有の力があってな。海で死んだ奴を仲間に不老不死の力を与えて引き入れる事ができるんだ。ただし、船長が死なない限り船からは一生降りられないがな。まあ、俺の力の自由をかなり制限した海版ってところか」


 船員の方は船長の力で不老不死にしているのか。てっきりオッサンが一人一人不老不死にしているのかと思った。だが、よく考えてみれば、オッサンから離れても老化が進まない人間がそんなに居る訳がないか。


 そうそう不老の存在が居る訳がない……デュラ、ユーリ、船長といった感じで既に三人は出会っているが。気付かないだけで、他の団員の中にも居るのかもしれない。


「……じゃあ、今日死んだ海賊も、もしかして仲間になってたりするのか?」
「いや、それはどうだろうな。俺にはあいつが仲間にしていいと思えるような奴は居ないように見えたぞ。そもそも今回相手にした海賊達は船長が排除したかった奴等だしな。ああいう奴等が居ると海が騒がしくなる。イモータルのおかげで、また暫くは平穏な海を過ごせる、と言ってたな」


 海賊達を海から根絶して、穏やかな海にしたい。だから今回みたいな騙し討ちのような手段を取ったようだが、俺は今一つ納得できなかった。既に海賊達を騙した事には納得しているが、どうしてそのような手段を取ったのかが分からない。


「どうして俺達が出る必要があるんだ? 船長達なら倒せるだろ?」
「確かにな……。だけどな、一つ一つ海賊を潰していっても面倒臭い。それなら一網打尽にしてしまった方が楽だ。それに俺達に海賊退治の仕事が回って来れば金になる」
「ああ……確かにな」
「そこで、船長と俺やサラが相談して決めたんだ。まず船長がここら一帯の海賊団の取り纏め役をするようにした。そして海賊が増えてきたら俺達に連絡。連絡を受けたら、ここらの海に接している地域の偉い人に海賊退治の仕事ありませんか? と聞いて、あると言われれば引き受ける。そして海賊を少し退治する。で、なんかやべえのが俺達を倒しに来てるぞと海賊達に危機感を煽ったところで、船長が海賊達を集めて全員一斉に襲う機会を作ったとか言って一箇所に集めるんだ。それで最後は達が一網打尽って訳だ。分かったか?」
「ああ……分かったんだが、それはそれで面倒だな」
「まあな。だが、報酬は結構な額なんだぞ。重要な収入源の一つだ」


 海賊達の纏め役が言ってみれば身内であって、海賊が増えていくのを暫く放置。そして増えて来て、困ったところに助けに来る…………これって、いわゆるマッチポン……いや、深く考えるのはやめておこう。



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