死なない奴等の愚行
第81話 裏切り者の頼み事
意識を取り戻すと、俺は周囲には誰も居ない港で目が覚めた。
「……あー、そうだ。サラにボコボコにされたんだ」
ガチバトルとの命令だったので、この場所まで来ると俺も拳を握り締めて反撃に出た。結果、惨敗だった。いや、強いというのは分かっていたけど……あの人、一応は交渉担当で戦闘関係の担当じゃないだろ? どうしてあんなに強いの?
こちらの攻撃を的確に潰しに来たのだ。
拳に拳をぶつけられ、砕かれた。ちなみにサラの拳は健在だ。両方の拳を砕かれても、心が折れなかった自分を褒めてやりたい。だが、両足を折られた時にはさすがに心が折れて、あとはボコボコだ。
両手両足が元通りになっているのを確認して立ち上がる。サラはまた食堂に戻ったのだろうか…………戻りたくないな。暫くここでのんびりとしていようか。
「あ、ケルベロス!」
サボろうとしていると声を掛けられた。周囲には誰も居なかったはず、と不思議に思いながら改めて周囲を見回す。
すると海に誰かが居た。
「……ユーリか」
俺を無人島からここまで連れて来てくれた人魚のユーリが海面から顔を出していた。彼女はこちらに近付いて来る。ちょうどいい、彼女には言いたい事があったのだ。
「裏切り者っ!」
「急に!?」
「急も何もあるか! お前のせいで俺はサラに…………何をされたのか覚えてないけど酷い事をされたんだぞ! たぶん!」
海面を走って来たサラに何をされたのかは覚えていないが、思い出したくないほど酷い事をされたのは分かる。そして、そうなってしまったのは彼女が俺を置いて逃げ出したせいだ。
「だ、だって、仕方ないでしょ! あんなのが迫って来たら……逃げ出すに決まってるじゃん!」
「逃げ出すのはいい! だけど、お前は俺を囮にしただろ!」
「生き延びる為には多少の犠牲は仕方ないでしょ!」
「お前もやっぱりイモータルの団員だな!」
まともな奴だと思ったが、やはりイモータルの団員だ。無茶苦茶な思考をしてやがる。
そう思ったが、自分は悪くないとばかりに叫んでいたユーリは、海面に視線を落として口を開く。
「……まあ、悪いと思ってるよ、少しはね。何かお詫びにしてあげるよ」
「何かしてあげる……?」
「う、うん……まあ、変なのは無理だけど……大抵の事なら良いよ」
……大抵の事なら良いのか。
さて、俺は何を要求すればいいのだろうか。大抵の事ならして貰えると言われると、内に秘められし性欲が疼き、彼女の豊満な胸へと視線がいってしまうのは不可抗力だろう。
だが、それでいいのか?
今の俺にはもっと彼女にして貰うべき事があるのではないか。そうだ……彼女にして貰いたい事、それは。
「酒乱サラ担当を替わってくれ」
「無理」
「大抵の事なら良いっていったじゃないか!」
「それは大抵に含まれないのっ! あんなサラを相手にするなんて無理!」
くっ……最もして貰いたい事が駄目となると、次点のエロい事でもして貰うか……。
俺はエロい事を頼もうと口を開きかけるが、ふと疑問に思った事があるので尋ねる。
「ところで、ユーリは今何をしてるんだ?」
「え? ああ……私は行方不明の団員を捜索しているの。少しここから離れた海底を見ていたんだけど…………あ」
何かを思い出したように声を漏らすユーリ。そして俺に向かって手を合わせて申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「ごめんっ! お詫びで何かすると云っといてあれなんだけど……一つ頼まれてくれない?」
「何だよ? 言ってみろ」
「団長に伝えて欲しいんだけど……」
「何だ、そんな事か。いいぞ」
急に頼みたいなどと言うから少し身構えてしまったが、伝言くらい大した事ではない。俺は彼女の頼みを快諾した。
「ありがとうっ! えっとね……団員の一人を海底で見つけたんだけど…………なんか封印されちゃってて、私じゃどうしようもできないって伝えてくれる。あ、時間がある時でいいから」
「今すぐ伝えに行くわ!」
伝言の中身が大した事あった。
「……あー、そうだ。サラにボコボコにされたんだ」
ガチバトルとの命令だったので、この場所まで来ると俺も拳を握り締めて反撃に出た。結果、惨敗だった。いや、強いというのは分かっていたけど……あの人、一応は交渉担当で戦闘関係の担当じゃないだろ? どうしてあんなに強いの?
こちらの攻撃を的確に潰しに来たのだ。
拳に拳をぶつけられ、砕かれた。ちなみにサラの拳は健在だ。両方の拳を砕かれても、心が折れなかった自分を褒めてやりたい。だが、両足を折られた時にはさすがに心が折れて、あとはボコボコだ。
両手両足が元通りになっているのを確認して立ち上がる。サラはまた食堂に戻ったのだろうか…………戻りたくないな。暫くここでのんびりとしていようか。
「あ、ケルベロス!」
サボろうとしていると声を掛けられた。周囲には誰も居なかったはず、と不思議に思いながら改めて周囲を見回す。
すると海に誰かが居た。
「……ユーリか」
俺を無人島からここまで連れて来てくれた人魚のユーリが海面から顔を出していた。彼女はこちらに近付いて来る。ちょうどいい、彼女には言いたい事があったのだ。
「裏切り者っ!」
「急に!?」
「急も何もあるか! お前のせいで俺はサラに…………何をされたのか覚えてないけど酷い事をされたんだぞ! たぶん!」
海面を走って来たサラに何をされたのかは覚えていないが、思い出したくないほど酷い事をされたのは分かる。そして、そうなってしまったのは彼女が俺を置いて逃げ出したせいだ。
「だ、だって、仕方ないでしょ! あんなのが迫って来たら……逃げ出すに決まってるじゃん!」
「逃げ出すのはいい! だけど、お前は俺を囮にしただろ!」
「生き延びる為には多少の犠牲は仕方ないでしょ!」
「お前もやっぱりイモータルの団員だな!」
まともな奴だと思ったが、やはりイモータルの団員だ。無茶苦茶な思考をしてやがる。
そう思ったが、自分は悪くないとばかりに叫んでいたユーリは、海面に視線を落として口を開く。
「……まあ、悪いと思ってるよ、少しはね。何かお詫びにしてあげるよ」
「何かしてあげる……?」
「う、うん……まあ、変なのは無理だけど……大抵の事なら良いよ」
……大抵の事なら良いのか。
さて、俺は何を要求すればいいのだろうか。大抵の事ならして貰えると言われると、内に秘められし性欲が疼き、彼女の豊満な胸へと視線がいってしまうのは不可抗力だろう。
だが、それでいいのか?
今の俺にはもっと彼女にして貰うべき事があるのではないか。そうだ……彼女にして貰いたい事、それは。
「酒乱サラ担当を替わってくれ」
「無理」
「大抵の事なら良いっていったじゃないか!」
「それは大抵に含まれないのっ! あんなサラを相手にするなんて無理!」
くっ……最もして貰いたい事が駄目となると、次点のエロい事でもして貰うか……。
俺はエロい事を頼もうと口を開きかけるが、ふと疑問に思った事があるので尋ねる。
「ところで、ユーリは今何をしてるんだ?」
「え? ああ……私は行方不明の団員を捜索しているの。少しここから離れた海底を見ていたんだけど…………あ」
何かを思い出したように声を漏らすユーリ。そして俺に向かって手を合わせて申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「ごめんっ! お詫びで何かすると云っといてあれなんだけど……一つ頼まれてくれない?」
「何だよ? 言ってみろ」
「団長に伝えて欲しいんだけど……」
「何だ、そんな事か。いいぞ」
急に頼みたいなどと言うから少し身構えてしまったが、伝言くらい大した事ではない。俺は彼女の頼みを快諾した。
「ありがとうっ! えっとね……団員の一人を海底で見つけたんだけど…………なんか封印されちゃってて、私じゃどうしようもできないって伝えてくれる。あ、時間がある時でいいから」
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