死なない奴等の愚行
第79話 荒ぶる王様ゲーム
それは突然だった。
何の脈絡もなしに酒を飲んでいたサラが、ボソリと独り言のように呟く。
「王様ゲームすんぞぉ」
「「「「「!?」」」」」
食堂に緊張が走るのが分った。誰かの「またか……」という呟きを聞くに、おそらく同じ事が前にもあったのだろう。独り言のように見えて、俺達に暗に王様ゲームをやるぞと言っているようだ。
仕方ない……まあ、暴れられるよりはマシだろう。そう思えば王様ゲームをやるなんて大した事ない。
「あんた! 一発芸しな!」
ん? 王様ゲームをするのかと思いきや、サラは一人の男を指さしてそのような命令をする。王様ゲームをやるんじゃないのか?
続けてサラは別の男を指さす。
「お前はモノマネだ! モノマネをしろぉ! そうらなぁ……マリア! マリアのモノマネらぁ!」
命令を受けた二人は周囲から、哀れみの視線を向けられながら実行していく。
ちなみに一発芸は手品だった。両手を打ち鳴らした直後に、手のひらから鳩を出して見せるというガチの手品。お金が取れるレベルだ。
そしてマリアのモノマネだが…………こちらもハイクオリティだった。声が完全にマリアだ。しかも吐血まで再現してる……どうやってんだ、あれ?
「アハハ! アハハハハハハ! アヒャハハハハハハハハッ!! 面白いっ! よし次は、お前と……」
サラはどうやらお気に召したらしく、狂ったように大爆笑。続いて別の人を指さしながら命令をする。
そして俺はようやく気付いた。一方的にサラが誰かを指名して命令をする、この行為が王様ゲームであるという事に。俺の知ってる王様ゲームとは全然違う。ただ命令してるだけだ。
数字と王様と書かれたくじを引いてやるやつじゃなかったか、王様ゲームって……絶対君主制ゲームに改名しようぜ。
粛々と行われていく王様ゲームというサラからの命令。
命令はどれもハードなものばかりで「三秒で大瓶の酒を飲み干せ」「芸術作品を作れ」「分身しろ」「奥義を見せろ」など……。ハードというか、意味不明だ。そしてもっと意味不明なのがそれをこなす団員達だ。
――三秒で大瓶の酒を飲み干せ。
この指示にある大瓶は……どこの馬鹿がこの酒を造ったんだと文句を言いたくなる大きさの瓶だ。大の大人が膝を抱えるなどすればギリギリ入ると言えば、その馬鹿げた大きさが理解できるだろう。
この量を三秒で飲むというのは不可能だし、そもそもこれほどの量の酒が人間の腹に収まるとは思えない。
だが、常識外に生きる不死身には関係なかった。
サラから指名を受けた女性の団員。呼吸を整え、意を決して瓶の大きな口の端に両手を添えたと思いきや、腕に力を込めて逆立ちをする。そして次の行動が咄嗟に理解できなかった。なんと手を離して、頭から酒の中にダイブしたのだ。直立の状態で酒に沈む……と思いきや、そうはならなかった。
酒が消えていた。
何処に消えたかって? 女性の団員の腹を見れば分かる。女性の腹はパンパンに膨れ上がっていた。瓶の口から体が抜けないほどに……。
落下と共に彼女は酒に口が触れた一瞬で飲み干したのだ。
そして、どんな体の構造をしているのか分からないが、酒はしっかりと彼女の胃袋に収まっている。普通はち切れてると思う。実際身に着けていた上半身の服がはち切れ、上半身の大部分が露出していた。
元は美人だったが今は見た目が大きな球体になっていて色気がなく、これっぽちもいやらしい気持ちは湧き上がらない。それに、やりきったとばかりに清々しい表情を浮かべて意識を失っている彼女に対して、とてもじゃないが、そんな気持ちになれなかった。
さすがにあの量のイッキは堪えたようだ。一般人ならはち切れて死ぬか、急性アルコール中毒で死ぬかの生存ルートのない、絶対死亡確定コースだ。
自らの腹で瓶詰状態になった彼女は一部の団員が、サラが他の団員に命令している間に瓶ごと食堂から撤去されていった。
このように、他の団員達も無茶な命令を次々と遂行していくのである。
何の脈絡もなしに酒を飲んでいたサラが、ボソリと独り言のように呟く。
「王様ゲームすんぞぉ」
「「「「「!?」」」」」
食堂に緊張が走るのが分った。誰かの「またか……」という呟きを聞くに、おそらく同じ事が前にもあったのだろう。独り言のように見えて、俺達に暗に王様ゲームをやるぞと言っているようだ。
仕方ない……まあ、暴れられるよりはマシだろう。そう思えば王様ゲームをやるなんて大した事ない。
「あんた! 一発芸しな!」
ん? 王様ゲームをするのかと思いきや、サラは一人の男を指さしてそのような命令をする。王様ゲームをやるんじゃないのか?
続けてサラは別の男を指さす。
「お前はモノマネだ! モノマネをしろぉ! そうらなぁ……マリア! マリアのモノマネらぁ!」
命令を受けた二人は周囲から、哀れみの視線を向けられながら実行していく。
ちなみに一発芸は手品だった。両手を打ち鳴らした直後に、手のひらから鳩を出して見せるというガチの手品。お金が取れるレベルだ。
そしてマリアのモノマネだが…………こちらもハイクオリティだった。声が完全にマリアだ。しかも吐血まで再現してる……どうやってんだ、あれ?
「アハハ! アハハハハハハ! アヒャハハハハハハハハッ!! 面白いっ! よし次は、お前と……」
サラはどうやらお気に召したらしく、狂ったように大爆笑。続いて別の人を指さしながら命令をする。
そして俺はようやく気付いた。一方的にサラが誰かを指名して命令をする、この行為が王様ゲームであるという事に。俺の知ってる王様ゲームとは全然違う。ただ命令してるだけだ。
数字と王様と書かれたくじを引いてやるやつじゃなかったか、王様ゲームって……絶対君主制ゲームに改名しようぜ。
粛々と行われていく王様ゲームというサラからの命令。
命令はどれもハードなものばかりで「三秒で大瓶の酒を飲み干せ」「芸術作品を作れ」「分身しろ」「奥義を見せろ」など……。ハードというか、意味不明だ。そしてもっと意味不明なのがそれをこなす団員達だ。
――三秒で大瓶の酒を飲み干せ。
この指示にある大瓶は……どこの馬鹿がこの酒を造ったんだと文句を言いたくなる大きさの瓶だ。大の大人が膝を抱えるなどすればギリギリ入ると言えば、その馬鹿げた大きさが理解できるだろう。
この量を三秒で飲むというのは不可能だし、そもそもこれほどの量の酒が人間の腹に収まるとは思えない。
だが、常識外に生きる不死身には関係なかった。
サラから指名を受けた女性の団員。呼吸を整え、意を決して瓶の大きな口の端に両手を添えたと思いきや、腕に力を込めて逆立ちをする。そして次の行動が咄嗟に理解できなかった。なんと手を離して、頭から酒の中にダイブしたのだ。直立の状態で酒に沈む……と思いきや、そうはならなかった。
酒が消えていた。
何処に消えたかって? 女性の団員の腹を見れば分かる。女性の腹はパンパンに膨れ上がっていた。瓶の口から体が抜けないほどに……。
落下と共に彼女は酒に口が触れた一瞬で飲み干したのだ。
そして、どんな体の構造をしているのか分からないが、酒はしっかりと彼女の胃袋に収まっている。普通はち切れてると思う。実際身に着けていた上半身の服がはち切れ、上半身の大部分が露出していた。
元は美人だったが今は見た目が大きな球体になっていて色気がなく、これっぽちもいやらしい気持ちは湧き上がらない。それに、やりきったとばかりに清々しい表情を浮かべて意識を失っている彼女に対して、とてもじゃないが、そんな気持ちになれなかった。
さすがにあの量のイッキは堪えたようだ。一般人ならはち切れて死ぬか、急性アルコール中毒で死ぬかの生存ルートのない、絶対死亡確定コースだ。
自らの腹で瓶詰状態になった彼女は一部の団員が、サラが他の団員に命令している間に瓶ごと食堂から撤去されていった。
このように、他の団員達も無茶な命令を次々と遂行していくのである。
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