死なない奴等の愚行
第73話 イカダの材料集め
「イカダかー」
「まあ、一人乗れるくらいの大きさであれば大丈夫。私が押すなり引っ張るなりするし、流木とか適当に束ねればいいだけよ」
「それだけでも大変そうなんだが……」
確かにあちこちに流木があるが、束ねるにはできるだけ同じ大きさがいいだろうし、あとは束ねるのに必要な丈夫な縄……は見つからないだろうから、蔦を探さないと。
必要なものを集めるだけでも一苦労だ。
「じゃあ、頑張ってね」
「え、おい、手伝ってくれないのか?」
「これで手伝えと?」
砂浜に自らの尾びれをアピールするように打ち付ける。
あ、そうでした。それだと陸じゃ何もできないですよね、ごめんなさい。
俺が謝ると、特に気にしていない様子で「日が暮れる前には戻るから、それまでイカダ作り頑張ってぇ」と言って海の中へと消えていった。
……一人で頑張るしかない。
ユーリがいなくなって俺は一人でイカダ作りに勤しむ事にした。
まずはやはり材料集めだ。イカダの大部分、というか99%を占める木、流木を集めよう。波打ち際に多くの流木が打ち上っているのだが、大小様々だ。中にはあまりにも巨大で、この一本だけで作った方が早いのではないかと思うほどだ。
だが、一本だけで安定したものを作れる自信はない。やはり平坦で、海面と接する面積が広いものを作りたい。その為にはやはり同じくらいの大きさの木を束ねて作るのがいいだろう。
それから無人島の波打ち際を歩き回った。この無人島は大きくなく、途中岩場で途切れてしまっていて一周回る事はできなかったが、六時間ほどあれば一周できると思われる。そんな事を思いながら波打ち際を歩いてなんとか、イカダが作れるほどの木を何本も集める事ができた。
大変だった……魔道具もないから身体能力を高める事もできないので、見つけては引き摺って最初の場所まで移動させ集めた。もう休みたいが、今度は束ねる蔦でも探さなければならない。
波打ち際に縄でも打ち上ってないかと思ったが、そんな期待は儚く散る。打ち上っていても指ほどの長さの千切れた縄くらいしかなかった。
「舗装された道は…………ある訳ないよな……」
自分の足下を見て溜息を吐く。俺は現在絶賛裸足なのだ。服は流されていないが、靴は漂流している間に脱げてしまっていた。ここまでは砂浜や波打ち際を歩いていたから気にならなかったが、森の中になるとさすがに裸足は心許ない。
石や枝……あるいは鋭い棘をもった植物なんかも自生しているかもしれない。正直裸足で歩きたくなかったが、森に入らなければ束ねる為に使えそうな蔦は見つかりそうにない。
「……よし、行くか」
俺は覚悟を決めて森の中へと踏み込んだ。よく考えればそんなに臆する事はない。不死身なんだから多少足が傷付いても治ってしまうのだから。少しくらいの痛みさえ我慢すれば…………と思っていた。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
森に入って三十分後。俺は全力で走っていた。鋭い石や枝が足に刺さり、あるいは槍の穂先を思わせるほどの鋭く大きな植物の棘が足を貫こうと迫って来ているのだ。
走りながら背後を振り返ると、百はあるであろう木の枝が迫って来ている。どうやら、まだ振り切れないようだ。こうなったのには俺の手に握られている丈夫そうな蔦にある。
ある大木に絡まっていた蔦なのだが、しっかりと大木に絡んでいてなかなか引き剥がす事はできなかった。そこで大木に片足を押し付けて両手で引っ張る事で引き剥がし、その勢いで少し引き千切る事ができた。今、握っているのがそれだ。
残りの蔦を回収しようとしたのだが、大木が暴れ出した。
大木はモンスターだったらしく、蔦を引き剥がした事で起きてしまったらしい。そして俺に向けて枝を伸ばして来た。ご丁寧に枝先を鋭く殺傷能力を持たせて。俺を殺すつもりなのは明確で逃げているという訳だ。
もう足は血だらけだがどうでもいい。逃げ切れなければ、生きながらにしてこいつの養分になってしまうだろう。
「まあ、一人乗れるくらいの大きさであれば大丈夫。私が押すなり引っ張るなりするし、流木とか適当に束ねればいいだけよ」
「それだけでも大変そうなんだが……」
確かにあちこちに流木があるが、束ねるにはできるだけ同じ大きさがいいだろうし、あとは束ねるのに必要な丈夫な縄……は見つからないだろうから、蔦を探さないと。
必要なものを集めるだけでも一苦労だ。
「じゃあ、頑張ってね」
「え、おい、手伝ってくれないのか?」
「これで手伝えと?」
砂浜に自らの尾びれをアピールするように打ち付ける。
あ、そうでした。それだと陸じゃ何もできないですよね、ごめんなさい。
俺が謝ると、特に気にしていない様子で「日が暮れる前には戻るから、それまでイカダ作り頑張ってぇ」と言って海の中へと消えていった。
……一人で頑張るしかない。
ユーリがいなくなって俺は一人でイカダ作りに勤しむ事にした。
まずはやはり材料集めだ。イカダの大部分、というか99%を占める木、流木を集めよう。波打ち際に多くの流木が打ち上っているのだが、大小様々だ。中にはあまりにも巨大で、この一本だけで作った方が早いのではないかと思うほどだ。
だが、一本だけで安定したものを作れる自信はない。やはり平坦で、海面と接する面積が広いものを作りたい。その為にはやはり同じくらいの大きさの木を束ねて作るのがいいだろう。
それから無人島の波打ち際を歩き回った。この無人島は大きくなく、途中岩場で途切れてしまっていて一周回る事はできなかったが、六時間ほどあれば一周できると思われる。そんな事を思いながら波打ち際を歩いてなんとか、イカダが作れるほどの木を何本も集める事ができた。
大変だった……魔道具もないから身体能力を高める事もできないので、見つけては引き摺って最初の場所まで移動させ集めた。もう休みたいが、今度は束ねる蔦でも探さなければならない。
波打ち際に縄でも打ち上ってないかと思ったが、そんな期待は儚く散る。打ち上っていても指ほどの長さの千切れた縄くらいしかなかった。
「舗装された道は…………ある訳ないよな……」
自分の足下を見て溜息を吐く。俺は現在絶賛裸足なのだ。服は流されていないが、靴は漂流している間に脱げてしまっていた。ここまでは砂浜や波打ち際を歩いていたから気にならなかったが、森の中になるとさすがに裸足は心許ない。
石や枝……あるいは鋭い棘をもった植物なんかも自生しているかもしれない。正直裸足で歩きたくなかったが、森に入らなければ束ねる為に使えそうな蔦は見つかりそうにない。
「……よし、行くか」
俺は覚悟を決めて森の中へと踏み込んだ。よく考えればそんなに臆する事はない。不死身なんだから多少足が傷付いても治ってしまうのだから。少しくらいの痛みさえ我慢すれば…………と思っていた。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
森に入って三十分後。俺は全力で走っていた。鋭い石や枝が足に刺さり、あるいは槍の穂先を思わせるほどの鋭く大きな植物の棘が足を貫こうと迫って来ているのだ。
走りながら背後を振り返ると、百はあるであろう木の枝が迫って来ている。どうやら、まだ振り切れないようだ。こうなったのには俺の手に握られている丈夫そうな蔦にある。
ある大木に絡まっていた蔦なのだが、しっかりと大木に絡んでいてなかなか引き剥がす事はできなかった。そこで大木に片足を押し付けて両手で引っ張る事で引き剥がし、その勢いで少し引き千切る事ができた。今、握っているのがそれだ。
残りの蔦を回収しようとしたのだが、大木が暴れ出した。
大木はモンスターだったらしく、蔦を引き剥がした事で起きてしまったらしい。そして俺に向けて枝を伸ばして来た。ご丁寧に枝先を鋭く殺傷能力を持たせて。俺を殺すつもりなのは明確で逃げているという訳だ。
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