死なない奴等の愚行
第59話 博士の不死身のなり方
ジレドラ達が完全に去った後、上空に浮かぶ穴に向かって呼びかける。
「おーい、マヤ!」
「ん? あーケルベロスかー。そっかーあなたは動いてるよねー。今そっち行くねー」
すると宙にあった穴が消えたと思えば、自分の目の前に現れる。
「お待たせー」
穴から間延びした声と共にマヤが現れる。
「ふふー、いつもみんな無心になって動かないからー、私は空間魔法で引きこもってるのよー。あー、博士もー、たぶん引きこもって魔道具の研究をしてるわよー」
できるだけ無心でいた方がいい二人が普段通りなのか……。
いや、おかげで助かったけどな。
「俺とタロスだけかと思った」
「ふふふー、私とー博士はー時間と頭があればいくらでもー過ごせるからねー」
「そうか……ところで、さっきの連中は何だったんだ?」
「ああ、あれ? なんかー永遠の命を持つ者は神様の意志に反する行いだって言ってる宗教団体の人達。いやいや、神様から貰った力だからーって話なんだけどねー」
「よく来るのか?」
「うんー、あのツンツン頭の人は十回以上は来てるねー」
結構来てるな……。
あのショックの受けようだから二度と来ないんじゃないかと思ったが……意外とタフなようだ。
連中の話を聞いていると唐突にマヤが溜息を吐く。
「どうした?」
「んー、あれはねー宗教団体の中でも不死者を排除する為に設けられた執行部らしいんだけど……私達に特化してて、封印魔法しか頭にないみたいー。それが残念だなーって」
「残念?」
「うんー。ジレドラさんはー結構腕の良い魔法の使い手なのよー。封印魔法の魔法陣を一つ置いて維持するだけでも大変なのに、それを何百も。なかなかできる事じゃないよー」
ジレドラに対して高評価なマヤ。同じ魔法の使い手として、彼の魔法の実力が分かるのだろう。あまり魔法に詳しくない俺でも、それだけの魔法陣を設置した事を聞けばジレドラとやらの実力が凄いというのは分かる。恰好はいただけないが……。
「だけどマヤの圧勝だったな」
「まあねー、だけどそれはー、私が不死身だからっていうのもあるよー。真面目に研鑽を続けていればー、魔法は生きている分だけー力がつくものー。ジレドラさんもー宗教団体なんて抜けちゃってー不死身になればいいのにー。そうすれば好きなだけ魔法に時間を費やせるのにねー」
「オッサンが不死身にしてくれるか分からないけどな」
「んー、確かにー。基本たまたま死にかけててー団長が気に入ったら不死身にするーって感じだからー。あ、でも博士は頼んで不死身になったんだよー」
「博士が?」
なんとなく博士が不死身になりたいのは分かる。研究の為に違いない。だけど、そんな個人の願望に応えて不死身にしてしまうのか? いちいち不死身にしていたら、このイモータルの団員はもっと増えていると思うが……。
「いったいどうやって不死身にして貰ったんだ?」
「んーとねー、団長の目の前でー『永遠に魔道具の研究をしたい! だから私を不死身にしてくれ! 頼むっ!』て、言ってから自分の腹と首を切ったのー」
「壮絶なパフォーマンスだな!?」
「うん、いきなり自殺されたもんだから団長も呆気に取られたけど、そこまでするなら不死身にするかーって。なんか、あのまま死なせたらー恨まれそうだしー。それに博士がイモータルに入ったおかげでー、良い魔道具が使えるようになったしねー。結果的に良かったよー」
ハチャメチャなジジイだ。下手をすれば、そのまま死んでしまうかもしれないのに。そんな危険な真似をするとは……。
博士が無茶苦茶なジジイだという事は知っていたが、まさか不死身になったのにそのような経緯があるとは思っていなかった。不死身だからといって無茶な魔道具を使わせるジジイだと思っていたが、不死身になる前からとは……。
「ねー、ところでー、ケルベロスはー暇だよねー」
「…………」
嫌な予感がした。
ふとマヤと初めて会った時の事を思い出す。
あの時は拷問まがいの方法で記憶を取り戻そうとしていた。マヤもマヤで博士と同じく危険人物なのだ。
「いや、俺は無心の状態を維持する修業があるから」
「折角だからー私の部屋にご招待するよー」
「いや! 忙しいぃっ!?」
俺の話を聞かずに問答無用で足下に穴が開く。収納魔法やマヤが使っている空間魔法の黒い穴だ。地面の感触がなくなり、その穴に俺は落ちたのだった。
……ジレドラに封印されていた方が平和だったかもしれない。
「おーい、マヤ!」
「ん? あーケルベロスかー。そっかーあなたは動いてるよねー。今そっち行くねー」
すると宙にあった穴が消えたと思えば、自分の目の前に現れる。
「お待たせー」
穴から間延びした声と共にマヤが現れる。
「ふふー、いつもみんな無心になって動かないからー、私は空間魔法で引きこもってるのよー。あー、博士もー、たぶん引きこもって魔道具の研究をしてるわよー」
できるだけ無心でいた方がいい二人が普段通りなのか……。
いや、おかげで助かったけどな。
「俺とタロスだけかと思った」
「ふふふー、私とー博士はー時間と頭があればいくらでもー過ごせるからねー」
「そうか……ところで、さっきの連中は何だったんだ?」
「ああ、あれ? なんかー永遠の命を持つ者は神様の意志に反する行いだって言ってる宗教団体の人達。いやいや、神様から貰った力だからーって話なんだけどねー」
「よく来るのか?」
「うんー、あのツンツン頭の人は十回以上は来てるねー」
結構来てるな……。
あのショックの受けようだから二度と来ないんじゃないかと思ったが……意外とタフなようだ。
連中の話を聞いていると唐突にマヤが溜息を吐く。
「どうした?」
「んー、あれはねー宗教団体の中でも不死者を排除する為に設けられた執行部らしいんだけど……私達に特化してて、封印魔法しか頭にないみたいー。それが残念だなーって」
「残念?」
「うんー。ジレドラさんはー結構腕の良い魔法の使い手なのよー。封印魔法の魔法陣を一つ置いて維持するだけでも大変なのに、それを何百も。なかなかできる事じゃないよー」
ジレドラに対して高評価なマヤ。同じ魔法の使い手として、彼の魔法の実力が分かるのだろう。あまり魔法に詳しくない俺でも、それだけの魔法陣を設置した事を聞けばジレドラとやらの実力が凄いというのは分かる。恰好はいただけないが……。
「だけどマヤの圧勝だったな」
「まあねー、だけどそれはー、私が不死身だからっていうのもあるよー。真面目に研鑽を続けていればー、魔法は生きている分だけー力がつくものー。ジレドラさんもー宗教団体なんて抜けちゃってー不死身になればいいのにー。そうすれば好きなだけ魔法に時間を費やせるのにねー」
「オッサンが不死身にしてくれるか分からないけどな」
「んー、確かにー。基本たまたま死にかけててー団長が気に入ったら不死身にするーって感じだからー。あ、でも博士は頼んで不死身になったんだよー」
「博士が?」
なんとなく博士が不死身になりたいのは分かる。研究の為に違いない。だけど、そんな個人の願望に応えて不死身にしてしまうのか? いちいち不死身にしていたら、このイモータルの団員はもっと増えていると思うが……。
「いったいどうやって不死身にして貰ったんだ?」
「んーとねー、団長の目の前でー『永遠に魔道具の研究をしたい! だから私を不死身にしてくれ! 頼むっ!』て、言ってから自分の腹と首を切ったのー」
「壮絶なパフォーマンスだな!?」
「うん、いきなり自殺されたもんだから団長も呆気に取られたけど、そこまでするなら不死身にするかーって。なんか、あのまま死なせたらー恨まれそうだしー。それに博士がイモータルに入ったおかげでー、良い魔道具が使えるようになったしねー。結果的に良かったよー」
ハチャメチャなジジイだ。下手をすれば、そのまま死んでしまうかもしれないのに。そんな危険な真似をするとは……。
博士が無茶苦茶なジジイだという事は知っていたが、まさか不死身になったのにそのような経緯があるとは思っていなかった。不死身だからといって無茶な魔道具を使わせるジジイだと思っていたが、不死身になる前からとは……。
「ねー、ところでー、ケルベロスはー暇だよねー」
「…………」
嫌な予感がした。
ふとマヤと初めて会った時の事を思い出す。
あの時は拷問まがいの方法で記憶を取り戻そうとしていた。マヤもマヤで博士と同じく危険人物なのだ。
「いや、俺は無心の状態を維持する修業があるから」
「折角だからー私の部屋にご招待するよー」
「いや! 忙しいぃっ!?」
俺の話を聞かずに問答無用で足下に穴が開く。収納魔法やマヤが使っている空間魔法の黒い穴だ。地面の感触がなくなり、その穴に俺は落ちたのだった。
……ジレドラに封印されていた方が平和だったかもしれない。
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