死なない奴等の愚行
第53話 酔いが醒めるほどの発言
博士が離れて行ってくれて再びチビチビと周囲の酒で満たされたグラスを空にしていく。
記憶を失う前の事は分からないが、これほどの量の酒を飲んだ事はないだろう。ゆっくりと飲んでいるおかげか、今のところは気持ち悪くはない。まだ飲めそうだ。
「おい、ケルベロス。楽しんでるか?」
「ん? ああ、ダンか。楽しんでるとは言い難い。とにかく酒を飲むのに忙しい」
ダンは俺の目の前まで来ると、笑いながら腰を下ろす。
「はっはっは、凄いなこりゃ。まあ気に入られてる証拠だ。いくら飲んでも死にはしないんだからどんどん飲んでしまえ」
そう言って、折角空にしたグラスに酒を注いでいくダン。
それを止めようと思ったが、やはりいくらゆっくり飲んでいても酔いが回り始めているようだ。咄嗟に言葉が出て来ないので、黙って酒を注がれていくのを見守った。
空いているグラス全てに酒を注ぐと満足そうに頷いてからダンは口を開く。
「がっはっは! 今回、お前はよくやった! まさか初陣であれだけ戦えるとは思っていなかった。ユイカも褒めてたぞ!」
「……そうか」
ここ暫く訓練で何度も逃げようかと思った訓練をしてくれたダンに対して俺は怒りしかなかったが、単純なものだ。褒められるとそんな感情が綺麗さっぱりなくなってしまう。
今回は嫉妬によるところも大きかったと思うが、訓練があったからこそ動けたと思う。
少しはダンに感謝している。
ダンは俺の周りに置かれているグラスを一つ手に取り飲み始めた。
「本当によくやった! それほど大きな戦いではなかったにしろ、あれだけ動けるならイモータルの団員と名乗っても恥ずかしくない」
「ああ」
ここまで手放しで褒められると照れ臭い。俺はそれを誤魔化すように酒を飲みながら、適当に相槌を打った。
「胸を張ってイモータルの傭兵だと名乗ればいい。お前はイモータル期待のエースだ」
「ああ」
「ただ、これからが忙しくなるぞ」
「ああ」
「力が証明されたからには、どんどん戦場へ出て貰う事になる」
「……ああ」
「それに早速お前に懸賞金もかけられた」
「ああ…………ぁあん?」
ちょっと待て。今、おかしな事を言われた気がする。
「お、いけねえ。これだけ酒があるっていうのに摘まめるものがあった方がいいな。よしっ、酒に合う良い肴があんだ。持って来てやるよ」
「待て!」
一気に酔いが醒めた俺は、立ち上がろうとするダンの両肩を掴んで阻止した。
「ん? どうしたんだ? 食べたいものがあるなら取って来るぞ?」
「いや、ちょっと待ってくれ。食べるものは今はどうでもいい。それよりも聞き捨てならない事を言われたような気がするんだ」
「聞き捨てならない事? ああ、イモータルの期待のエースって話か? がっはっは、謙遜するな! 俺が初めて戦場へ出た時よりも戦えていたぞ! まさに一騎当千の活躍だった。だからこそ、こんなにも早く懸賞金がかけられたんだ」
「そっち! 懸賞金の事が聞き捨てならない事!」
「懸賞金? ……いくらかけられたか知りたいのか?」
「そうじゃ、いや額も気になるけど……。今はどうして俺に懸賞金がかけられたのかが知りたいんだ!」
ようやく会話が成立したように思えたのだが、ダンは「何を言っているんだ、こいつは?」とでも言いたそうにきょとんとしている。
だが、すぐに何か納得して口を開く。
「あ、そうか。そういった事は知らないんだな。よし、簡単に教えてやろう。いいか? 懸賞金というのは表と裏があってだな、表は公に指名手配されているような犯罪者にかけらているものだ。そして裏は各方面から、こいつは邪魔だな、生きていてもらっちゃ困るな、という奴の命にかけられる公になっていないものだ。裏の方は表よりも圧倒的に懸賞金が高くてな、裏に精通している賞金稼ぎが目をギラつかせて時々襲って来る……ああ、安心しろ。お前は裏の方だからな。何か罪に問われている訳じゃないから」
「…………」
……いや、いっそ表の方が良かったと思えてしまう。
記憶を失う前の事は分からないが、これほどの量の酒を飲んだ事はないだろう。ゆっくりと飲んでいるおかげか、今のところは気持ち悪くはない。まだ飲めそうだ。
「おい、ケルベロス。楽しんでるか?」
「ん? ああ、ダンか。楽しんでるとは言い難い。とにかく酒を飲むのに忙しい」
ダンは俺の目の前まで来ると、笑いながら腰を下ろす。
「はっはっは、凄いなこりゃ。まあ気に入られてる証拠だ。いくら飲んでも死にはしないんだからどんどん飲んでしまえ」
そう言って、折角空にしたグラスに酒を注いでいくダン。
それを止めようと思ったが、やはりいくらゆっくり飲んでいても酔いが回り始めているようだ。咄嗟に言葉が出て来ないので、黙って酒を注がれていくのを見守った。
空いているグラス全てに酒を注ぐと満足そうに頷いてからダンは口を開く。
「がっはっは! 今回、お前はよくやった! まさか初陣であれだけ戦えるとは思っていなかった。ユイカも褒めてたぞ!」
「……そうか」
ここ暫く訓練で何度も逃げようかと思った訓練をしてくれたダンに対して俺は怒りしかなかったが、単純なものだ。褒められるとそんな感情が綺麗さっぱりなくなってしまう。
今回は嫉妬によるところも大きかったと思うが、訓練があったからこそ動けたと思う。
少しはダンに感謝している。
ダンは俺の周りに置かれているグラスを一つ手に取り飲み始めた。
「本当によくやった! それほど大きな戦いではなかったにしろ、あれだけ動けるならイモータルの団員と名乗っても恥ずかしくない」
「ああ」
ここまで手放しで褒められると照れ臭い。俺はそれを誤魔化すように酒を飲みながら、適当に相槌を打った。
「胸を張ってイモータルの傭兵だと名乗ればいい。お前はイモータル期待のエースだ」
「ああ」
「ただ、これからが忙しくなるぞ」
「ああ」
「力が証明されたからには、どんどん戦場へ出て貰う事になる」
「……ああ」
「それに早速お前に懸賞金もかけられた」
「ああ…………ぁあん?」
ちょっと待て。今、おかしな事を言われた気がする。
「お、いけねえ。これだけ酒があるっていうのに摘まめるものがあった方がいいな。よしっ、酒に合う良い肴があんだ。持って来てやるよ」
「待て!」
一気に酔いが醒めた俺は、立ち上がろうとするダンの両肩を掴んで阻止した。
「ん? どうしたんだ? 食べたいものがあるなら取って来るぞ?」
「いや、ちょっと待ってくれ。食べるものは今はどうでもいい。それよりも聞き捨てならない事を言われたような気がするんだ」
「聞き捨てならない事? ああ、イモータルの期待のエースって話か? がっはっは、謙遜するな! 俺が初めて戦場へ出た時よりも戦えていたぞ! まさに一騎当千の活躍だった。だからこそ、こんなにも早く懸賞金がかけられたんだ」
「そっち! 懸賞金の事が聞き捨てならない事!」
「懸賞金? ……いくらかけられたか知りたいのか?」
「そうじゃ、いや額も気になるけど……。今はどうして俺に懸賞金がかけられたのかが知りたいんだ!」
ようやく会話が成立したように思えたのだが、ダンは「何を言っているんだ、こいつは?」とでも言いたそうにきょとんとしている。
だが、すぐに何か納得して口を開く。
「あ、そうか。そういった事は知らないんだな。よし、簡単に教えてやろう。いいか? 懸賞金というのは表と裏があってだな、表は公に指名手配されているような犯罪者にかけらているものだ。そして裏は各方面から、こいつは邪魔だな、生きていてもらっちゃ困るな、という奴の命にかけられる公になっていないものだ。裏の方は表よりも圧倒的に懸賞金が高くてな、裏に精通している賞金稼ぎが目をギラつかせて時々襲って来る……ああ、安心しろ。お前は裏の方だからな。何か罪に問われている訳じゃないから」
「…………」
……いや、いっそ表の方が良かったと思えてしまう。
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