死なない奴等の愚行
第50話 触手に貫かれて終わり……ではなかった
光の触手に体を貫かれた。滅茶苦茶痛かったが、これで今日の仕事は終わりのはずだ。触手は生き残っている逃げる敵兵を一掃してくれる……そう思った。
「あー、敵さん馬で逃げてるなー。だいぶ離れちまった。これじゃあ触手は届かねえな。よし、追撃させっか」
オッサンの溜息混じりに何か呟くと空に向かって魔法を放った。
未だに腹部に穴が開いているので体は動かすのが辛い。なんとか顔を上げて団長が空に放ったものを見てみると、それは球状の赤い光だった。
攻撃の類のものではない。何かの合図のような……。
「お、オッサン……いったい、何をしようって言うんだ?」
「ん? おお、意識を失ってなかったのか。死にかけるのに慣れて来たな」
「そんな事に慣れたくなかった」
「はははっ、でも今は気を失っていた方が良かったかもなー」
どういう事だ? と思った直後、空から何かが飛んで来て団長の足下に落ちたかと思えば、眩い光を放って爆発した。
「うおっ!?」
オッサンが爆発した!?
いったい何が!? と驚く暇なく目の前で起きた爆発によって、凄まじい熱風が襲い倒れていた俺は吹き飛ばされた。
まだ腹の穴が塞がっていないというのに……と思いながら何度も地面を弾む。痛い、それに熱い。酷い火傷を負っているに違いない。治るだろうけど、自分の肉が焼ける臭いというのは不快だ。鼻をつまみたくなるが、腕が動かない。
いや、鼻をつまむよりもこの場から逃げないといけなかった。
ようやく止まって仰向けの状態で見た空は、雲が空を覆い隠すように数百、数千とも思われる数の魔法で埋め尽くされていた。先程団長の足下で爆発したのも、この内の一つだろう。
これほどの数の魔法を戦場に居るイモータルの団員では放つ事はできない。おそらく博士の魔道具が絡んでいる。
「追撃ってこれかよ!」
なんとか体を動かして逃げようかとしたが駄目だ。穴はだいぶ塞がってきたが、立て続けに熱風で体を焼かれたり、地面に強かに体を打ち付けて、ダメージが蓄積されているのか上手く体に力が入らない。
それでもなんとか腕を動かして魔法から逃げようとする。
「くっそ! こうなりゃ」
ドッキリボールはもうない。ガンは触手に貫かれた時に手放してしまった。鉈の形をした魔道具のスラッシュくんはこの状況では使い道がない。
だけど俺にはパペットくんがまだある!
パペットくんで腕の力を強化して、全力で魔法から逃れようと動かした。
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
腕の力だけで地面に着弾する魔法を避けていく。時に叩きつけるように腕を地面に打ち付けて跳躍をしてアクロバットに魔法を避ける。
あっはっはっは! 駄目もとだったけど意外と避けられるものだ!
このまま魔法が止まるまで逃げ切ってやる!
数分も逃げていると次第に体の自由が利くようになる。
これで足を使えば余裕で逃げられると安堵したのだが、そう甘くはなかった。飛んで来る魔法に混じって銀色の球体が見えたのだ。
「……マジ?」
俺も先程投げた銀色のドッキリボール。
発光する大きな球体が現れ、そこに魔法が撃ち込まれていく。どうやら地面に落ちようとしていた魔法も吸収しているようだ。
……どんどん吸収していくなー。ぼちぼち来るかなーあ、来た。
無数の光の触手が勢いよく飛び出す。そして地上に向けて降り注ぎ、次々と逃げ惑う敵兵を貫いていく。当然、敵味方関係ないので俺の方にも。
ああ、これは……駄目だな、うん。もう逃げ切れる気がしない。
また穴が開くのか……はあ……。
こうして本日二度目、腹部に穴がぽっかり開いた。
そして駄目押しとばかりに、新たに放たれた魔法が降り注いでいく。痛いやら、熱いやら、苦しいやら、痺れるやら、一周回って気持ち良くなったり……と思ったのは気のせいで普通に痛い。
こうして今度こそ、俺の初陣は終わった。
「あー、敵さん馬で逃げてるなー。だいぶ離れちまった。これじゃあ触手は届かねえな。よし、追撃させっか」
オッサンの溜息混じりに何か呟くと空に向かって魔法を放った。
未だに腹部に穴が開いているので体は動かすのが辛い。なんとか顔を上げて団長が空に放ったものを見てみると、それは球状の赤い光だった。
攻撃の類のものではない。何かの合図のような……。
「お、オッサン……いったい、何をしようって言うんだ?」
「ん? おお、意識を失ってなかったのか。死にかけるのに慣れて来たな」
「そんな事に慣れたくなかった」
「はははっ、でも今は気を失っていた方が良かったかもなー」
どういう事だ? と思った直後、空から何かが飛んで来て団長の足下に落ちたかと思えば、眩い光を放って爆発した。
「うおっ!?」
オッサンが爆発した!?
いったい何が!? と驚く暇なく目の前で起きた爆発によって、凄まじい熱風が襲い倒れていた俺は吹き飛ばされた。
まだ腹の穴が塞がっていないというのに……と思いながら何度も地面を弾む。痛い、それに熱い。酷い火傷を負っているに違いない。治るだろうけど、自分の肉が焼ける臭いというのは不快だ。鼻をつまみたくなるが、腕が動かない。
いや、鼻をつまむよりもこの場から逃げないといけなかった。
ようやく止まって仰向けの状態で見た空は、雲が空を覆い隠すように数百、数千とも思われる数の魔法で埋め尽くされていた。先程団長の足下で爆発したのも、この内の一つだろう。
これほどの数の魔法を戦場に居るイモータルの団員では放つ事はできない。おそらく博士の魔道具が絡んでいる。
「追撃ってこれかよ!」
なんとか体を動かして逃げようかとしたが駄目だ。穴はだいぶ塞がってきたが、立て続けに熱風で体を焼かれたり、地面に強かに体を打ち付けて、ダメージが蓄積されているのか上手く体に力が入らない。
それでもなんとか腕を動かして魔法から逃げようとする。
「くっそ! こうなりゃ」
ドッキリボールはもうない。ガンは触手に貫かれた時に手放してしまった。鉈の形をした魔道具のスラッシュくんはこの状況では使い道がない。
だけど俺にはパペットくんがまだある!
パペットくんで腕の力を強化して、全力で魔法から逃れようと動かした。
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
腕の力だけで地面に着弾する魔法を避けていく。時に叩きつけるように腕を地面に打ち付けて跳躍をしてアクロバットに魔法を避ける。
あっはっはっは! 駄目もとだったけど意外と避けられるものだ!
このまま魔法が止まるまで逃げ切ってやる!
数分も逃げていると次第に体の自由が利くようになる。
これで足を使えば余裕で逃げられると安堵したのだが、そう甘くはなかった。飛んで来る魔法に混じって銀色の球体が見えたのだ。
「……マジ?」
俺も先程投げた銀色のドッキリボール。
発光する大きな球体が現れ、そこに魔法が撃ち込まれていく。どうやら地面に落ちようとしていた魔法も吸収しているようだ。
……どんどん吸収していくなー。ぼちぼち来るかなーあ、来た。
無数の光の触手が勢いよく飛び出す。そして地上に向けて降り注ぎ、次々と逃げ惑う敵兵を貫いていく。当然、敵味方関係ないので俺の方にも。
ああ、これは……駄目だな、うん。もう逃げ切れる気がしない。
また穴が開くのか……はあ……。
こうして本日二度目、腹部に穴がぽっかり開いた。
そして駄目押しとばかりに、新たに放たれた魔法が降り注いでいく。痛いやら、熱いやら、苦しいやら、痺れるやら、一周回って気持ち良くなったり……と思ったのは気のせいで普通に痛い。
こうして今度こそ、俺の初陣は終わった。
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