死なない奴等の愚行
第18話 目が覚めると博士がいる
……あー、また気を失っていたのか。タロスに投げられた時からカウントすれば三回目だ。タロスの時とユイカの時は目が覚めて自分の身に何が起きたのか咄嗟に分からなかったけど……慣れかな。こんな事に慣れるのは嫌だけど。
もしかするとフェルが居るかもしれないと思いながら、そっと目を開ける。
「目が覚めたかねぇ! ケルベロスくんっ!」
「…………」
目が覚めるとハイテンションなジジイが居た。薄汚れた白衣を着た、ボサボサな髪の毛でやや清潔感に欠ける。デュラの爺さんと比べると、こちらの方が若そうだが、死に掛けて目覚めた直後に人を不快になるのは断然こちらのハイテンションジジイだ。
それにしてもイモータルの個性豊かな面々と出会ったと思ったが、まだこれほど強烈な団員が居たのか……。団員のバリエーションの豊富さに呆れながら、二度寝をしようと目を閉じる。
「おいいいいいいっ! 君が目覚めるのを待っていただぁ! 寝るなぁ!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
ジジイの顔が近距離に! 鼻と鼻がごっつんこしそうだよ! しかもジジイに瞼を押さえられて目が閉じる事ができないぃ! 激しく不快だ! 心臓に悪い!
俺はジジイの手を払い除けて立ち上がる。
「ジジイ、お前は何なんだ!」
「んんんっ? ああ、そうか名乗ってなかったな。ワタシは博士! 不死身となってからはそう名乗っていて、魔道具開発担当をしているっ!」
博士? それって記憶を取り戻せるかもしれない一人……そして暴走した時には街一つが吹っ飛びかねない危険人物…………よし。
「さよならっ!」
「何処へ行こうというのだね?」
俺は部屋から飛び出そうと扉に向かったが、博士は魔道具と思われる杖が握られていた。その杖には大人の人間ほどの大きさの手が取り付けられており、それががっちり俺の腕を掴むと杖が短くなっていき博士の方へと引き寄せられる。どうやら伸縮自在らしい。
「はっはっは! 私の開発した魔道具、ハンドくんはどうかね? 使用者の意思に従って手は自由に動き、消費する魔力量で伸びる長さが変わって来るのだよ。難点は握力の加減が難しくてねぇ」
「だよね、掴まれた時にゴキッて鳴ったよ。もうブランブランしてる」
ハンドくんに掴まれ骨折していた。この短期間で建物に投げつけられたり、窓を突き破って落ちたりと痛みに慣れていなければ、骨折の痛みで叫んでいる事だ。
「ああ、だからイモータルの団員にのみ使っている」
「いや使うなよ!」
「治るからいいだろう?」
「痛みはあるからな! お前も分かるだろ!?」
「痛みくらい別にいいではないか。死なないのだし。それに、こうして開発して実際に使う事で新たな魔道具のアイディアが浮かぶのだ」
……駄目だ。やっぱりこジジイから逃げないと。このままだと記憶を取り戻すという名目で魔道具の実験に付き合わされる事になりそうだ。
だが、ハンドくんは未だにガッチリと腕を拘束していて、引き剥がそうとするがビクともしない。俺がこの場から逃げるのは無理そうだ。そうなるとサラ、もしくは他のジジイを止めてくれそうな人が来る事を祈るしかない。
誰かっ! 来てくれ!
閉められた扉を見ながら俺は祈った。
そして、その祈りを神様は聞いていてくれたのか、ドアノブが回り、扉がゆっくりと動き出す。
誰か来てくれた! 助かった! この状況を最も打開してくれそうなサラではないかと期待したが、入って来たのは見知らぬ女性だった。俺と同じぐらいの年頃で、紺色のローブを着ている。
「あらー、博士もいらしてたんですねー」
間延びした声を発しながらニコニコと穏やかに微笑む女性。おっとりとした雰囲気を醸し出していて、安心感を覚える。覚えるのだが……。
どうしてだろう、嫌な予感がするのは。
もしかするとフェルが居るかもしれないと思いながら、そっと目を開ける。
「目が覚めたかねぇ! ケルベロスくんっ!」
「…………」
目が覚めるとハイテンションなジジイが居た。薄汚れた白衣を着た、ボサボサな髪の毛でやや清潔感に欠ける。デュラの爺さんと比べると、こちらの方が若そうだが、死に掛けて目覚めた直後に人を不快になるのは断然こちらのハイテンションジジイだ。
それにしてもイモータルの個性豊かな面々と出会ったと思ったが、まだこれほど強烈な団員が居たのか……。団員のバリエーションの豊富さに呆れながら、二度寝をしようと目を閉じる。
「おいいいいいいっ! 君が目覚めるのを待っていただぁ! 寝るなぁ!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
ジジイの顔が近距離に! 鼻と鼻がごっつんこしそうだよ! しかもジジイに瞼を押さえられて目が閉じる事ができないぃ! 激しく不快だ! 心臓に悪い!
俺はジジイの手を払い除けて立ち上がる。
「ジジイ、お前は何なんだ!」
「んんんっ? ああ、そうか名乗ってなかったな。ワタシは博士! 不死身となってからはそう名乗っていて、魔道具開発担当をしているっ!」
博士? それって記憶を取り戻せるかもしれない一人……そして暴走した時には街一つが吹っ飛びかねない危険人物…………よし。
「さよならっ!」
「何処へ行こうというのだね?」
俺は部屋から飛び出そうと扉に向かったが、博士は魔道具と思われる杖が握られていた。その杖には大人の人間ほどの大きさの手が取り付けられており、それががっちり俺の腕を掴むと杖が短くなっていき博士の方へと引き寄せられる。どうやら伸縮自在らしい。
「はっはっは! 私の開発した魔道具、ハンドくんはどうかね? 使用者の意思に従って手は自由に動き、消費する魔力量で伸びる長さが変わって来るのだよ。難点は握力の加減が難しくてねぇ」
「だよね、掴まれた時にゴキッて鳴ったよ。もうブランブランしてる」
ハンドくんに掴まれ骨折していた。この短期間で建物に投げつけられたり、窓を突き破って落ちたりと痛みに慣れていなければ、骨折の痛みで叫んでいる事だ。
「ああ、だからイモータルの団員にのみ使っている」
「いや使うなよ!」
「治るからいいだろう?」
「痛みはあるからな! お前も分かるだろ!?」
「痛みくらい別にいいではないか。死なないのだし。それに、こうして開発して実際に使う事で新たな魔道具のアイディアが浮かぶのだ」
……駄目だ。やっぱりこジジイから逃げないと。このままだと記憶を取り戻すという名目で魔道具の実験に付き合わされる事になりそうだ。
だが、ハンドくんは未だにガッチリと腕を拘束していて、引き剥がそうとするがビクともしない。俺がこの場から逃げるのは無理そうだ。そうなるとサラ、もしくは他のジジイを止めてくれそうな人が来る事を祈るしかない。
誰かっ! 来てくれ!
閉められた扉を見ながら俺は祈った。
そして、その祈りを神様は聞いていてくれたのか、ドアノブが回り、扉がゆっくりと動き出す。
誰か来てくれた! 助かった! この状況を最も打開してくれそうなサラではないかと期待したが、入って来たのは見知らぬ女性だった。俺と同じぐらいの年頃で、紺色のローブを着ている。
「あらー、博士もいらしてたんですねー」
間延びした声を発しながらニコニコと穏やかに微笑む女性。おっとりとした雰囲気を醸し出していて、安心感を覚える。覚えるのだが……。
どうしてだろう、嫌な予感がするのは。
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