捨てる人あれば、拾うワン公あり

山口五日

別行動の二人はその頃……

 チェルノの街の近くに広がる森の中。クロとジェノスは二人で襲い来る魔物を討伐しながら、ワンワン達が戻って来るまでの拠点を探していた。


 ジェノスはワンワンが回収した剣を使って、襲い掛かって来たゴブリンの集団を斬り捨てていく。


「ふんっ! これで最後か……よく考えてみれば戦うのは久し振りだな……」
「ジェノスさんは私達に魔法を教えたりするので手一杯だったからね。ゴブリンの死骸はどうする? 安いけど少しはお金になるよね」
「聖域の魔物の死骸が大量にあるんだ。ゴブリンをわざわざ回収する必要はないな。ここに埋めていくか」


 ジェノスはそう言って、背負っていた格納鞄から錆びたスコップを取り出す。これもワンワンが【廃品回収者】で回収したもので、別れる前に必要になりそうなものを出しておいて貰ったのだ。


 クロも地面を掘る為に、雨風に晒し続けたせいか同じように錆びたスコップを出して地面を掘る。二人のステータスは一般人よりも高い為、穴を掘るくらいは容易だ。


「今頃、ワンワンくん達は何をしているのかな?」
「たぶんギルドで登録しているとは思うが……」
「ギルドか……そういえば最初は魔物ギルドに登録してたけど、最近は行ってなかったなぁ」
「魔族との戦いに駆り出されてたんだから仕方ないだろ。会費を払ってないなら登録は抹消されてるかもしれねえけどな。会員としてギルドに多大な貢献をしていれば、永久名誉会員となっているかもしれんが」
「私はなってないと思うなぁ……そこまでギルドに貢献してた訳じゃないし……」


 穴を掘りながら、街でワンワン達が何をしているのかと話をする二人。話題はギルドの話となって、ワンワン達はどのギルドに所属するのかを予想する。


「うーん、無難なところで傭兵ギルドかな? 色んな仕事にありつけるし」
「身分証を手に入れる為に登録すんだ。採取ギルドあたりが無難じゃねえか? あそこに所属すれば植物、好物の知識を得る事ができる」
「えー、でもジェノスさんなら分かるでしょ? わざわざ学ぶ為にギルドに入るのかな?」
「いや……俺も詳しく知らない分野もある。ある程度は分かるかもしれんが、専門の奴に聞いた方が良い。盗賊をやっていた頃は、薬草の調達や魔物の解体なんかは仲間に頼っていたしな」
「そういえば……昔ジェノスさん達が私を助けてくれた時、魔物の解体の仕方や魔物の特徴を教えてくれた人がいたね」


 まだクロが駆け出しで、ジェノスは現役の盗賊だった頃の話だ。「そんな事もあったな……」と懐かしそうにジェノスは目を細める。


 もう何年も前の事になるが、ジェノスは当時の事を鮮明に覚えていた。あの頃の強欲の放浪者グリディ・ノーマッドは、信頼のおける仲間ばかりで、近年ほど大きな盗賊団ではなく纏まりがあった時期だ。


「お前に教えたあいつは元々魔物ギルドの会員で、信頼のおける良い奴だった」
「その口振りだと……ジェノスさんが裏切られた時に助けてくれた仲間の一人だったの?」
「ああ……あいつの事だから無事だと思うが……。今は何をしているやら……できれば俺に最後まで付き合ってくれた奴を纏めて生きてくれてればいいが……」


 ジェノスは口では心配しているようだったが、笑みを浮かべており、微塵も心配している様子はなかった。ジェノスが仲間を信頼しているのが窺えられる。


「久し振りに会ってみたいな……」
「……そうだな。まあ、生きていれば会えんだろ」


 魔族の国に行ってしまえば、おそらく会う事はないだろう。
 だが、二人は不思議な事にもしかすると再会できるかもしれない。なぜかそんな気がしていたのだった。


「あれ? そういえば、あの人の名前ってなんだっけ? 顔は傷だらけでよく覚えてるんだけど……」
「あいつの名前はゲルニドだ。ゲルニド」


 再会の時は近いかもしれない。

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