捨てる人あれば、拾うワン公あり
第36話 万事解決?
クロが戻って来て、ワンワン達は彼女にこれまでの事を説明をする。
その際、まだ伝えていないレイラが神から聞いた情報を共有した。
ちなみにレイラは既に鎧から出て、元通り魂の姿でふわふわと浮いている。【憑依】で鎧の中に居続けるのは窮屈らしく、あまり快適ではないらしい。
「そうか……ワンワンの魔力がオワリビトには有効だったのか」
「そうなのじゃ。だから全身に纏わせたのじゃ」
「あの人、天使だったんだね……」
「ああ。私はちゃんと会ってないけど、ゴツかったぜ」
「確かに……あんまり天使っぽくなかったねぇ」
オワリビトという化物がいなくなり、すっかり気が緩んでいた。既にワンワンの《ミソロジィ・シールド》も解いている状態だ。だが、ある事に気付いて再び全員に緊張が走る。
「わふっ? ねえねえ、なんか臭くない? 燃やしているような……」
「燃やしている……? あっ! マズい火の手が!」
クロが自分が通って来た方を振り返る。まだ、こちらまで火の手は回っていないが、木々の合間から奥の方で炎が揺らいでいるのが見えた。
「悪い……私の《ヘル・フレア》のせいだ……」
最初にナエとクロがオワリビトと遭遇した時に放った《ヘル・フレア》。
オワリビトには全く効かなかったが、放った際に周囲の木々を燃やし、その火が聖域全てを燃やす勢いで広がっていた。その事に責任を感じたナエは申し訳なさそうに顔を歪める。
「ナエは悪くねえ。あんな化物と対峙したんだ」
「そうそう。それに私が指示して《ヘル・フレア》を使ったんだよ。悪いのは私で、ナエちゃんは責任を感じる必要はないよ」
「そうじゃよ。自分を責める必要なんてこれっぽちもないのじゃ」
「よく分かんないけどナエは悪くないよ!」
「みんな……」
優しい言葉をかけられ、ナエの中で多少は気持ちが楽になったようだ。
だが、ナエに責任はないにしてもこのままではいられない。《ヘル・フレア》の黒い炎ではないものの、火の勢いは凄まじく、そう時間を掛けずに到達するだろう。
ここに居続けるのは危険。そこでジェノスが提案をする。
「ここから逃げるぞ」
「逃げるって……何処に逃げるんだぜ?」
「……行先は決めてねえが、聖域からとにかく出るぞ。じゃないと焼けちまう」
「そうだね……このままここに居続けるのは危険だよ」
「うむ。そうじゃな……儂も賛成じゃ。聖域が燃えてしまえば魔物は外に逃げるじゃろう。そうなると、ここに人が流れ込んで来る。そうなれば……」
「目立つな。変に目立ってワンワンの【廃品回収者】がばれる恐れもある」
こうして聖域から出る事を考えていたのだが、ワンワンは浮かない顔をしている事にレイラは気付いた。
「ワンワンどうしたのじゃ? 不安そうな顔をしておるが……」
「わふっ……エンシェントドラゴンのおじいちゃんとの約束……」
それを聞いてワンワン以外が顔を見合わせる。誰もが「どうする?」と目で訴えていた。
ワンワンはエンシェントドラゴンと、自分の身を守れるようになるまで聖域で生活するようにと約束していた。そこでワンワンに聞かれないよう小声で話し合いを始める。
「のう、もうワンワンは自分の身を守れると儂らが保証してもいいんじゃないかの? まだ鍛える必要はあるが、純粋に守りは儂らの中じゃと一番だしのう」
「そうだな……そうしないと、このまま聖域の外に出ちまったら、エンシェントドラゴンの約束を破った。そう思い続けちまうだろうな」
「そうだな。それにあのオワリビトの攻撃が防げたんだ、レイラの言う通りワンワンは充分な力があるぜ」
「私達もワンワンくんを守るしね」
「……それじゃあ、ワンワンに言うぞ」
全員の意見が一致した。そしてジェノスが代表となって、ワンワンに身を守る力が既に備わっていると告げようとした時だ。
「おうっ! 揃ってるな!」
ライヌが戻って来た。どうやら新手のオワリビトを無事に倒したようだ。
既に神からワンワン達のもとに現れたオワリビトは倒された事はライヌは聞いている。既にここに来た自分の役目を果たした訳だが、もう一つやらなくてはいけない事があった。
「そっちもオワリビトを倒したのか……」
「ああ。とりあえずこれ以上オワリビト現れる気配はないから安心しな……んで、この人形の体を返しに来たんだが……ちょっと待ってくれ。ワンワンに伝言がある」
「僕に?」
「ああ……ドゥーラ……エンシェントドラゴンからな」
「わふっ!? おじいちゃん!?」
思わぬ伝言を託した相手にワンワンだけでなくジェノス達も驚く。
「わふっ! おじいちゃんを知ってるの? えっと……えっと……」
「ああ、そういえば名乗ってなかったな。俺はライヌっていうんだ」
「ライヌ……ライヌはおじいちゃんを知ってるの? 元気なの?」
「ああ。今は俺と同じ天使だ。神様からドゥーラって名前を貰って元気でいつもワンワンの事を見守ってる」
「わうっ……おじいちゃん、僕の事を見ていてくれてるんだ……」
嬉しそうに笑顔を浮かべるワンワン。
聖域に来た時初めて優しくしてくれた存在。生きる術与えてくれた存在。自分がなにをすべきか……家族を作るという目標を与えてくれた存在だった。
「本当は会わせてやりたいんだがな。ちょっと今は難しいんだ。俺もこれ以上この場に留まるのは難しい。だから簡潔にドゥーラの伝言を伝えるぞ。…………ワンワンは既に自分の身を守る力、それ以上の家族を守る力が備わっている。だから家族とともに聖域を出るといい……そう言ってたぞ」
「わうっ……おじいちゃん……ありがとう!」
ドゥーラから聖域から出る許可を得たワンワン。心置きなく外に行けるとすっきりとした顔つきになった。
ジェノスが外に出る事を認めるつもりだったが、その役割を取られてしまった形となってしまった。だが、そこは別に気にしていない。むしろこれで良かったとさえ思える。
約束をした本人から許可を貰うのが一番だ。二人の間に交わした約束を、誰かが勝手に変更したり、破棄するのはできるだけ避けたい。それに何よりワンワンが嬉しそうにしている事が重要だった。
もしかするとジェノスが聖域の外へ出る許可を出していれば、このようなワンワンの顔は見られなかったかもしれない。許可をジェノス達から出されたが、ドゥーラは許してくれるだろうか。そんなふうに口には出さないが、内心で不安を抱え続けていた恐れがあっただろう。
  だからドゥーラから許可を出して貰えたのは、有り難い事であった。
「んんっ……どうやら、そろそろ時間切れのようだ」
ドゥーラの言葉を伝えた直後、ライヌの全身が光に包まれる。その体は透けてきて、【憑依】している人形と重なって見える。
「もう行っちゃうの?」
「ああ、だけどまた会える、きっとな! 俺やドゥーラに神様……それカインもな。あっ、カインっていうのは……」
そこでライヌの言葉は途切れた。完全に人形へと戻ってしまったのだ。
人形が倒れようとしていたので、それをジェノスが咄嗟に手を伸ばして支え、ゆっくり地面に横にする。
ライヌが最後言いかけていたカインについては、よく分からなかったが、天使が去ってジェノス達はこの場でやる事は終えた。
「よし、それじゃあ聖域から出るぞ。準備しろ。とにかく格納鞄に詰め込むんだ」
火の手がここまで回らない内に、聖域から脱出をしなくてはならない。ジェノスがそう指示を出すと各々が小屋に向かって行き、準備を始めた。レイラも効率よく手伝おうと再び黒王虫の鎧に【憑依】して小屋へと向かう。
そして、この場にはワンワンとジェノスだけとなった。
ジェノスも大量の本を持ち運ぶ準備をしようとするのだが、その前にワンワンに声をかける。
「ワンワンは自分専用の鞄に、必要なものは入れてるか?」
「うん! 全部入ってる……入ってるけど……ここには、もう戻って来ないの?」
外の世界を見てみたいと思ってはいたが、みんなで過ごしたこの場所を離れるのが寂しいのだろう。ジェノスは少し考えて、正直にワンワンの言葉に応える事にする。
「そうだな……たぶん小屋も燃えちまうだろうし……。あの火の勢いだと世界樹も燃えちまうかもな」
「わうっ……そうなんだ……。お家は仕方ないけど……世界樹が燃えちゃうのは可愛そう…………あっ!」
「あ、おいっ!」
ワンワンが突然世界樹に向かって走り出した。いったい何をするつもりなのかとジェノスはワンワンの後を追う。
一足先に辿り着いたワンワンは世界樹に両手で触れる。
「《リウビアエクス》!」
《リウビアエクス》は火から身を守る魔法。使用した対象に火は触れる事はできず、避けてしまうというもの。それを巨大な世界樹の隅々まで魔法をかけたのだった。
「わうぅぅぅぅぅっ……」
「おっと!」
世界樹全体にしっかり魔法をかけた結果、ワンワンは魔力を消耗しすぎて目を回してしまった。それをジェノスが地面に倒れる前に受け止める。
「ふうっ……。まったく……魔力はあるが、秘密特訓で散々魔力を使って、オワリビトの攻撃を防いでいたんだ。そのうえ、こんな馬鹿でかいものに魔法をかけりゃ、倒れるに決まってるだろ……」
呆れた様子ジェノス。だが、ワンワンを見る目は優しいものであった。
「ワンワンが精一杯魔法をかけてやったんだ。そう簡単に燃えんじゃねえぞ」
そうジェノスは世界樹に向けて言い、ワンワンを抱えながら自分の小屋へと向かった。
小屋へと向かうジェノスに対し、まるでその言葉に応えるように、世界樹の葉鳴りがひと際大きくなったのは気のせいだろうか……。
それから、必要なものを格納鞄に詰め込み、準備を終えたワンワン達。
燃えていく聖域を脱出をするのだった。
その際、まだ伝えていないレイラが神から聞いた情報を共有した。
ちなみにレイラは既に鎧から出て、元通り魂の姿でふわふわと浮いている。【憑依】で鎧の中に居続けるのは窮屈らしく、あまり快適ではないらしい。
「そうか……ワンワンの魔力がオワリビトには有効だったのか」
「そうなのじゃ。だから全身に纏わせたのじゃ」
「あの人、天使だったんだね……」
「ああ。私はちゃんと会ってないけど、ゴツかったぜ」
「確かに……あんまり天使っぽくなかったねぇ」
オワリビトという化物がいなくなり、すっかり気が緩んでいた。既にワンワンの《ミソロジィ・シールド》も解いている状態だ。だが、ある事に気付いて再び全員に緊張が走る。
「わふっ? ねえねえ、なんか臭くない? 燃やしているような……」
「燃やしている……? あっ! マズい火の手が!」
クロが自分が通って来た方を振り返る。まだ、こちらまで火の手は回っていないが、木々の合間から奥の方で炎が揺らいでいるのが見えた。
「悪い……私の《ヘル・フレア》のせいだ……」
最初にナエとクロがオワリビトと遭遇した時に放った《ヘル・フレア》。
オワリビトには全く効かなかったが、放った際に周囲の木々を燃やし、その火が聖域全てを燃やす勢いで広がっていた。その事に責任を感じたナエは申し訳なさそうに顔を歪める。
「ナエは悪くねえ。あんな化物と対峙したんだ」
「そうそう。それに私が指示して《ヘル・フレア》を使ったんだよ。悪いのは私で、ナエちゃんは責任を感じる必要はないよ」
「そうじゃよ。自分を責める必要なんてこれっぽちもないのじゃ」
「よく分かんないけどナエは悪くないよ!」
「みんな……」
優しい言葉をかけられ、ナエの中で多少は気持ちが楽になったようだ。
だが、ナエに責任はないにしてもこのままではいられない。《ヘル・フレア》の黒い炎ではないものの、火の勢いは凄まじく、そう時間を掛けずに到達するだろう。
ここに居続けるのは危険。そこでジェノスが提案をする。
「ここから逃げるぞ」
「逃げるって……何処に逃げるんだぜ?」
「……行先は決めてねえが、聖域からとにかく出るぞ。じゃないと焼けちまう」
「そうだね……このままここに居続けるのは危険だよ」
「うむ。そうじゃな……儂も賛成じゃ。聖域が燃えてしまえば魔物は外に逃げるじゃろう。そうなると、ここに人が流れ込んで来る。そうなれば……」
「目立つな。変に目立ってワンワンの【廃品回収者】がばれる恐れもある」
こうして聖域から出る事を考えていたのだが、ワンワンは浮かない顔をしている事にレイラは気付いた。
「ワンワンどうしたのじゃ? 不安そうな顔をしておるが……」
「わふっ……エンシェントドラゴンのおじいちゃんとの約束……」
それを聞いてワンワン以外が顔を見合わせる。誰もが「どうする?」と目で訴えていた。
ワンワンはエンシェントドラゴンと、自分の身を守れるようになるまで聖域で生活するようにと約束していた。そこでワンワンに聞かれないよう小声で話し合いを始める。
「のう、もうワンワンは自分の身を守れると儂らが保証してもいいんじゃないかの? まだ鍛える必要はあるが、純粋に守りは儂らの中じゃと一番だしのう」
「そうだな……そうしないと、このまま聖域の外に出ちまったら、エンシェントドラゴンの約束を破った。そう思い続けちまうだろうな」
「そうだな。それにあのオワリビトの攻撃が防げたんだ、レイラの言う通りワンワンは充分な力があるぜ」
「私達もワンワンくんを守るしね」
「……それじゃあ、ワンワンに言うぞ」
全員の意見が一致した。そしてジェノスが代表となって、ワンワンに身を守る力が既に備わっていると告げようとした時だ。
「おうっ! 揃ってるな!」
ライヌが戻って来た。どうやら新手のオワリビトを無事に倒したようだ。
既に神からワンワン達のもとに現れたオワリビトは倒された事はライヌは聞いている。既にここに来た自分の役目を果たした訳だが、もう一つやらなくてはいけない事があった。
「そっちもオワリビトを倒したのか……」
「ああ。とりあえずこれ以上オワリビト現れる気配はないから安心しな……んで、この人形の体を返しに来たんだが……ちょっと待ってくれ。ワンワンに伝言がある」
「僕に?」
「ああ……ドゥーラ……エンシェントドラゴンからな」
「わふっ!? おじいちゃん!?」
思わぬ伝言を託した相手にワンワンだけでなくジェノス達も驚く。
「わふっ! おじいちゃんを知ってるの? えっと……えっと……」
「ああ、そういえば名乗ってなかったな。俺はライヌっていうんだ」
「ライヌ……ライヌはおじいちゃんを知ってるの? 元気なの?」
「ああ。今は俺と同じ天使だ。神様からドゥーラって名前を貰って元気でいつもワンワンの事を見守ってる」
「わうっ……おじいちゃん、僕の事を見ていてくれてるんだ……」
嬉しそうに笑顔を浮かべるワンワン。
聖域に来た時初めて優しくしてくれた存在。生きる術与えてくれた存在。自分がなにをすべきか……家族を作るという目標を与えてくれた存在だった。
「本当は会わせてやりたいんだがな。ちょっと今は難しいんだ。俺もこれ以上この場に留まるのは難しい。だから簡潔にドゥーラの伝言を伝えるぞ。…………ワンワンは既に自分の身を守る力、それ以上の家族を守る力が備わっている。だから家族とともに聖域を出るといい……そう言ってたぞ」
「わうっ……おじいちゃん……ありがとう!」
ドゥーラから聖域から出る許可を得たワンワン。心置きなく外に行けるとすっきりとした顔つきになった。
ジェノスが外に出る事を認めるつもりだったが、その役割を取られてしまった形となってしまった。だが、そこは別に気にしていない。むしろこれで良かったとさえ思える。
約束をした本人から許可を貰うのが一番だ。二人の間に交わした約束を、誰かが勝手に変更したり、破棄するのはできるだけ避けたい。それに何よりワンワンが嬉しそうにしている事が重要だった。
もしかするとジェノスが聖域の外へ出る許可を出していれば、このようなワンワンの顔は見られなかったかもしれない。許可をジェノス達から出されたが、ドゥーラは許してくれるだろうか。そんなふうに口には出さないが、内心で不安を抱え続けていた恐れがあっただろう。
  だからドゥーラから許可を出して貰えたのは、有り難い事であった。
「んんっ……どうやら、そろそろ時間切れのようだ」
ドゥーラの言葉を伝えた直後、ライヌの全身が光に包まれる。その体は透けてきて、【憑依】している人形と重なって見える。
「もう行っちゃうの?」
「ああ、だけどまた会える、きっとな! 俺やドゥーラに神様……それカインもな。あっ、カインっていうのは……」
そこでライヌの言葉は途切れた。完全に人形へと戻ってしまったのだ。
人形が倒れようとしていたので、それをジェノスが咄嗟に手を伸ばして支え、ゆっくり地面に横にする。
ライヌが最後言いかけていたカインについては、よく分からなかったが、天使が去ってジェノス達はこの場でやる事は終えた。
「よし、それじゃあ聖域から出るぞ。準備しろ。とにかく格納鞄に詰め込むんだ」
火の手がここまで回らない内に、聖域から脱出をしなくてはならない。ジェノスがそう指示を出すと各々が小屋に向かって行き、準備を始めた。レイラも効率よく手伝おうと再び黒王虫の鎧に【憑依】して小屋へと向かう。
そして、この場にはワンワンとジェノスだけとなった。
ジェノスも大量の本を持ち運ぶ準備をしようとするのだが、その前にワンワンに声をかける。
「ワンワンは自分専用の鞄に、必要なものは入れてるか?」
「うん! 全部入ってる……入ってるけど……ここには、もう戻って来ないの?」
外の世界を見てみたいと思ってはいたが、みんなで過ごしたこの場所を離れるのが寂しいのだろう。ジェノスは少し考えて、正直にワンワンの言葉に応える事にする。
「そうだな……たぶん小屋も燃えちまうだろうし……。あの火の勢いだと世界樹も燃えちまうかもな」
「わうっ……そうなんだ……。お家は仕方ないけど……世界樹が燃えちゃうのは可愛そう…………あっ!」
「あ、おいっ!」
ワンワンが突然世界樹に向かって走り出した。いったい何をするつもりなのかとジェノスはワンワンの後を追う。
一足先に辿り着いたワンワンは世界樹に両手で触れる。
「《リウビアエクス》!」
《リウビアエクス》は火から身を守る魔法。使用した対象に火は触れる事はできず、避けてしまうというもの。それを巨大な世界樹の隅々まで魔法をかけたのだった。
「わうぅぅぅぅぅっ……」
「おっと!」
世界樹全体にしっかり魔法をかけた結果、ワンワンは魔力を消耗しすぎて目を回してしまった。それをジェノスが地面に倒れる前に受け止める。
「ふうっ……。まったく……魔力はあるが、秘密特訓で散々魔力を使って、オワリビトの攻撃を防いでいたんだ。そのうえ、こんな馬鹿でかいものに魔法をかけりゃ、倒れるに決まってるだろ……」
呆れた様子ジェノス。だが、ワンワンを見る目は優しいものであった。
「ワンワンが精一杯魔法をかけてやったんだ。そう簡単に燃えんじゃねえぞ」
そうジェノスは世界樹に向けて言い、ワンワンを抱えながら自分の小屋へと向かった。
小屋へと向かうジェノスに対し、まるでその言葉に応えるように、世界樹の葉鳴りがひと際大きくなったのは気のせいだろうか……。
それから、必要なものを格納鞄に詰め込み、準備を終えたワンワン達。
燃えていく聖域を脱出をするのだった。
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