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異世界へ行く準備をする世界~他人を気にせずのびのびと過ごします~

山口五日

第17話 色んな魔物がいるのを知りました

「おにぎり、美味しかったです!」

 コンビニを後にしてからというもの、「おにぎり♪ おにぎり♪」と口ずさみながら歩くラピス。どうやらおにぎりを相当気に入ってしまったようだ。

「気に入ったのはいいが、周囲の警戒をしてくれよ」

「分かってますよ! ちゃんとマスターのマジックドールとして役目はしっかり果たしま……マスターこちらに」

 突然言葉を切ってラピスは俺の腕を引いた。そして車の陰に隠れる。

 俺はどうして隠れるのか、などと疑問は挟まない。いくらラピスに感情が芽生えて変わっても、彼女はしっかりと自分の仕事をするからだ。

 彼女が何かに警戒しているのを感じ取り、車の陰からそっと確認してみる。

 百メートルほど離れた場所に普段相手にしているゴブリンとは違う、魔物が三体いた。背丈はゴブリンと同じぐらいだが、ゴブリンにはなかったフサフサの体毛に、頭の上には耳が生えている。

 遠目からだと二足歩行する大型犬のような魔物だった。

「あれはコボルトですね。Fランクの魔物で、ゴブリンと比べて動きが速いです。ですが、武器は使わず、連携を取る事もないので、爪と牙に注意すればゴブリンより相手しやすいと思いますよ」

 少し動きが速い程度で武器を使わず、連携して襲って来る事がないのなら、確かにゴブリンよりかは余裕かもしれない。

 ゴブリンは弓矢や投石で離れたところからも攻撃をしてくる。おかげで常にあらゆる攻撃に警戒をしなくてはならない。武器を使わないなら、目の前のコボルトに集中すればいいので、精神的には楽そうだ。

「……とりあえずいつものようにやるか」

 俺は問題ないかと言葉にはせず、視線だけ向けてラピスに尋ねると笑顔で頷く。

 俺もそれに対して分かったと頷くと、拳を握って身を隠している車のボンネットを強く叩いた。

 余計な物音がほとんどないこの世界にとって、その音は異音だ。何事かとコボルトたちはこちらへと近付いて来る。

 俺とラピスはコボルトの足音、荒い息遣いを感じ取る事で、徐々に近付いて来るのを見なくても分かった。

 そして、こちらとの距離が残り数メートルというところで、俺は【道化師】による速度特化を使って車の陰から飛び出す。

「ギャウッ!」

 なるほど……確かにゴブリンより反応が速い。【道化師】の速度特化による不意打ちに、ゴブリンであれば身構える事すらできないが、コボルトはしっかり俺の出現に反応していた。

 だが、武器を持たないコボルトに俺の剣を防ぐ事はできない。

 俺は一体を斬り捨てる。さすがに回避ができるほどコボルトは速くはなかった。いつも相手するゴブリンよりは動きが確かに速いが、あくまでゴブリンと比べて速い程度。残りの二体も容易に倒す事ができた。

「ふうっ……終わった」

「お疲れ様ですマスター! コボルトはFランクの中で一番速い魔物なので、他のFランクの魔物の動きにもついていけるでしょう!」

「そうなのか? そうなると他のFランクの魔物も倒せそうだな」

 魔物を相手にするうえで一番の問題は相手の動きの速さだと、この数日で俺は思った。

 動きが速い相手では攻撃を与える事も、攻撃を避ける事もできない。それに敵わないと思っても逃げる事ができない。

 だからこそ速さという点で劣っていないのであれば、他のFランクの魔物とも充分戦えると思った。

「今のマスターであれば、確かにFランクの魔物であれば、少なくとも負ける事はないほどの実力がついたと思います。ですが、魔物には厄介なものもいて……おっ、ちょうどいいところに! マスターあれを見てください!」

「ん? あれは……草、か?」

 少し離れたところに一体の魔物がいた。ゴブリンでもコボルトでもない。また新しい魔物だ。

 その魔物はスイカのような茶色い球体に目と口があり、小さな二本足が生え、頭部には緑色の草が茂っている。

「あれはトコトコクサという魔物です! Fランクの中でも最弱といっても過言ではない魔物何ですが倒す時には注意しないといけない事があるんです!」

「注意しないといけない事?」

「私が倒してみますので、見ていてください!」

 そう言ってラピスは弓を構えると、矢をつがえずに弦を引く。すると魔力によって作られた矢が現れる。

 トコトコクサに狙いを定めて矢を放つ。

 真っすぐ吸い込まれるようにしてトコトコクサに矢は向かって行き、人でいう眉間のあたりに刺さる。

 倒したか? そう思った瞬間、紫色の煙がトコトコクサの体から噴出する。その煙は暫くその場に留まり、三十秒ほどが経ったところで消える。その場には既にトコトコクサはおらず、魔石だけが残っていた。

「今のは?」

「トコトコクサの毒煙です! 吸う量にもよりますが、身体が麻痺してしまいます! 絶命した瞬間に必ず噴出させるので、離れたところから攻撃しないといけませんよ。こんな感じで少し面倒な魔物がいるので気を付けてください!」

 なるほど、弱くても厄介な能力がある魔物もいるのか。初見の魔物と遭遇したら必ずラピスに確認しよう。

「よし、また何か危険な魔物がいたら教えてくれ。他の場所にも行ってみよう」

「はいっ!」

 俺とラピスは新たな魔物を求めて再び歩き出した。

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